転職活動の際の自己PRは、応募先の企業に自分をアピールする絶好の機会です。 対して、採用担当者は自己PRから、自社に貢献出来る人材かどうかを見ています。そのため、「明るい」「優しい」等、抽象的な強みではアピールが弱いのです。

 では、どのような自己PRがよいのでしょうか。

 企業は転職者に対し、即戦力を求めている傾向があります。そのため、転職活動の自己PRは、応募する企業の職種に関連した内容をアピールする必要があるのです。

 本記事では転職活動における履歴書の自己PRの書き方について解説していきたいと思います。

 

自己PRの作成ステップ

 「○○をやっていきたい」と自分の気持ちを伝えているだけでは採用担当者へのアピールにはなりません。前職までの経験・実績を応募企業が求める人物像に関連付けてアピールする必要はあります。

 そのためには、自己PR文を書く前に、情報の整理を行いましょう。そうすることで、良質な自己PR文にすることが出来るのです。
 情報の整理は以下のステップで行います。

【ステップ①】過去の経験を仕事内容に落とし込む

 はじめに、過去の経験を仕事内容に落とし込んでください。
 例えば、以下のように落とし込みます。

経験 仕事内容
営業職 新規顧客の獲得、既存顧客への継続提案
企画・マーケティング職 新規プロジェクトの立ち上げ、プロモーション施策の立案
技術・開発職 製品の製造・工程管理、品質管理、新製品開発

【ステップ②】実績を付け加える

 次いで、過去に行ってきた仕事内容に実績を付け加えていきます。その際、企業の利益に直結する実績を付け加えるのがベターです。  例えば、営業職なら「1年間で新規顧客を20件獲得」「売上予算の150%を達成」等が挙げられます。

 企業の実績に直結する実績がない場合は、「合計40人が関わるプロジェクトの進行管理」「製造効率を110%上昇」等、数値を記載して、採用担当者に分かりやすく伝わるようにしましょう。

実績がない方の強みの探し方

 実績がない方は、自分の強みを「仕事でどのように活かせるか」「企業にどういうかたちで貢献出来るか」等に関連付けてみてください。 そのために経験を「強み」「磨いたこと」に落とし込みます。

 すると、以下の落とし込むことが出来ます。

経験 強み・磨いたこと
アルバイトで接客業経験 会話力を磨いた
家庭教師 指導力を磨いた
サークル

協調性

学業 継続することの大切さ

【ステップ③】アピールする経験・実績を厳選する

 続いて、応募企業が求める能力を想定して、自己PRでアピールする経験と実績を厳選します。

 自己PRは、「応募企業で求めている能力」と「自分の経験・実績」が合致していることが何よりも肝心です。「応募企業で求めている能力」から外れた経験や実績を述べてもアピールにならないためです。

 企業が求める能力を把握する方法は、求人情報の熟読が挙げられます。求人情報には「入社後に達成を期待されているミッション」が記載されているケースが多いです。それをヒントに、企業が求める能力を導き出しましょう。

 例えば、ベンチャー企業や大手企業では、以下のような能力が求められるケースが多いです。

●ベンチャー企業…積極性、目標達成意識の高さ、ひとりで幅広い分野を担当できるスキル
●大手企業…他部署と連携したプロジェクト進行能力、外注企業のコントロールスキル

 アピールする経験・実績を厳選する際は、2~3点に絞ってください。アピールポイントが多いと冗長になり、ひとつひとつの印象が薄くなります。ひいては、自己PR全体が弱い印象になる可能性があるので、アピールポイントは2~3点に絞るのがベターなのです。

【ステップ④】厳選した経験・実績を能力・スキルに換言する

 次に、厳選した経験・実績を能力・スキルに換言します。能力・スキルに換言する作業は、自己PRの内容の核の部分になるので、とても大切です。

 例えば、「新規開拓の営業を3年間担当し、毎年、売り上げ130%増を達成した」という経験・実績からは、「新規開拓の営業力がある」「積極性がある」「フットワークが軽い」「目標達成能力に優れている」等の能力・スキルを導き出すことが出来ます。

 また、「経理の業務フローの改善を提案し、計上ミスを30%削減した」という経験・実績からは、「提案力・実行力が高い」「改善施策を立案できる」「他部署との連携作業が得意」「正確性・効率性を重視する」という能力・スキルを導き出せるでしょう。

【ステップ⑤】100~200文字の短い文章にまとめる

 最後に100~200文字文章にまとめていきます。それ以上の文字数だと冗長となり、何をアピールしたいのか採用担当者に伝わりにくくなるためです。自己PRは簡潔にまとめるのが鉄則なのです。

 文章を作成する際は、まず、③で厳選した経験・実績を文章に起こします。
例えば、「前職では3年間、新規開拓の営業に従事してきました。業務にあたっては毎月20件の新規顧客への訪問を自身の目標として設定。結果として毎年、売り上げ130%増を達成しました」といったよう書き出しましょう。

 続いて、厳選した経験・実績から導き出した能力・スキルを文章に起こしていきます。
例えば、「これまで培ってきた、新規顧客に対するフットワークの軽さや実行性を、貴社の営業チームで発揮することで、貴社の利益に貢献したいと考えております」といったように記載すれば完成です。

職種別の自己PR例文

 では、以上を踏まえるとどのような自己PRになるのでしょうか。ここからは、職種別の自己PR例文を紹介します。

【例文①】営業職に応募する場合の自己PR例文

・目標達成意欲

6年間、不動産営業に従事。その中で、常に売り上げ目標を達成することを意識してきました。達成に向けたプロセスを日々の訪問数・架電数に落とし込み取り組んだ結果、月間目標を15ヶ月連続達成。全社約200人の営業の中で年間MVPを受賞しました。

・ヒアリング力

購入目的だけでなく、ライフスタイルや趣味、将来設計など細かなヒアリングを徹底しています。お客様の人生全体を見据えた上で購入時期等含めご提案し、タイミングを見ながらフォローを継続。その結果、受注率70%以上を実現。このスキルを活かし、新規開拓営業として御社の売り上げ拡大に貢献していきたいと考えております。

引用元:https://doda.jp/guide/rireki/jikopr/

 最初に箇条書きで結論を示し、その下に根拠を書くという分かりやすい構成にしています。根拠が記載されているので、採用担当者は、自社に貢献する人材かどうかの判断を行いやすいです。「受注率70以上」等、実績を示す数字を文中に差し込むことで具体性が高くんるので、伝わりやすいです。

【例文②】事務職に応募する場合の自己PR例文

・効率を追求する姿勢

50人規模の会社で経費精算を担当。私が担当になるまでExcelで管理を行っており、ミスの多発につながっていました。そこで、経費精算システムの導入を提案して実現。この結果、週10時間かかっていた精算業務を6時間にまで減らすことができました。

・正確性

ミスが許されないという強い責任感を持ち、作業のすべてにチェックリストを利用。ダブルチェックを徹底した結果、前職に従事した2年間、数字のミスをしたことはありません。この正確性は貴社の経理業務でも活きると考えています。

引用元:https://doda.jp/guide/rireki/jikopr/

 経理に求められる能力の代表例に挙げられる、「効率を追求する姿勢」「正確性」に触れているのがグッドです。
 持っている能力・スキルの根拠になるエピソードも簡潔に記載されているので、人物像をイメージしやすくよい印象を抱かれるでしょう。

【例文③】技術職に応募する場合の自己PR例文

・進行管理能力

現在の職場では4年にわたり、30人規模のエンジニアチームをまとめてきました。プロジェクトの円滑な進行には、問題の早期発見が重要と考え、週1回メンバーと面談の時間を設け状況を把握。メンバーへのサポートを継続した結果、納期が遅れたことは一度もありません。クライアントからも信頼を得、リピーター率は8割を超えています。

・スピード

速さを意識し、効率化に努めています。プロジェクトの初期段階で必要な条件を細かく整理し、作業中に迷いやトラブルが生じないよう徹底しています。その結果、1カ月を予定していた開発プロジェクトを2週間で仕上げたこともあります。

引用元:https://doda.jp/guide/rireki/jikopr/

 エンジニアという立場でどのように工夫をしてきたのかが論理的にまとめられているので心象がよいです。「4年」「30人」「2週間」等、具体的な数字にも触れており、説得力があります。

 

履歴書の自己PR分を記載する際のポイント

 ここでは、自己PR文を履歴書に記載する際の具体的なポイントをお伝えします。

 以上の例文を見ると分かる通り、履歴書に自己PRを記載する際は、レイアウトを意識することがポイントです。採用担当者は、何通もの応募書類に目を通します。要点が不明瞭だったり、小さな文字で長い文章だったりすると読まないおそれがあります。それを防止するためにも採用担当者に見やすいレイアウトにすることが肝心なのです。

【ポイント①】箇条書きを利用して要点を明確にする

 自己PRは履歴書の中では長い文章になるので、ポイントはいかに見やすくするかです。
 見やすくするためにオススメなのが、箇条書きです。前出の「ステップ④」の能力・スキルを見出しとして箇条書きにし、本文に「ステップ③」の経験・実績や入社後の展望を記載していきます。  そのような流れにすることで、アピールしたいことが明確に採用担当者に伝わりやすくなるのです。

【ポイント②】記入欄の7~8割を文字で埋める

 自己PRのような長い文章は、一定の空白スペースがあった方が読みやすいです。ですので、記入欄の7~8割程度になるように文字の数・大きさを調整しましょう。

【ポイント③】1テーマにつき3行以内に抑える

 1つの箇条書きに対し、本文は3行以内におさめましょう。これも見やすさを重視するためです。

【ポイント④】誤字脱字に注意

 誤字脱字がないよう、書き終えたら必ずチェックをしましょう。採用担当者は、ビジネスマナーや基本的な国語能力があるかどうかを、自己PRからチェックをしている場合があるためです。

 

履歴書と面接の自己PRは変える?

 履歴書と面接では自己PRの内容を変えた方がよいのでしょうか。

 基本は、履歴書の自己PR文を話して構いません。2分以内で話しましょう。となると、100~200文字で簡潔に説明した履歴書の自己PRだと1分程度で話し終えてしまいます。そこで、経験・実績の根拠になるエピソードの部分を具体的に膨らませて内容を盛りましょう。

 また、面接では採用担当者から「自己PRをお願いします」とは必ずしも言われません。「自己紹介をしてください」「強みを教えてください」「実績を教えてください」等、様々な言い方をします。しかし、質問の意図は自己PRと同様なので、言い方に合わせた自己PRにアレンジして話をするように心がけてください。

 

履歴書と職務経歴書の自己PRは変える?

職務経歴書にも自己PRを書く場合は、履歴書では経験メイン、職務経歴書には職歴メインの自己PRを書くようにしましょう 職務経歴書の自己PRの方が詳しくなるように書くのがベターです。

 

ケース別の対処法

 履歴書の様式は様々です。そのため、こんな履歴書によっては、自己PRはどのように書けばよいのか分からないケースがあるでしょう。  ケース別に話をしていきたいと思います。

【ケース①】自己PR欄がない履歴書の場合

 履歴書に自己PR欄がない場合はどうすればよいのでしょうか。その場合は、志望動機あるいは備考欄に自己PRをかきましょう。

 また、別紙に書くのも有効です。その場合は、履歴書に「自己PRは別紙参照」と記載し、採用担当者に自己PRは別紙に記載してあることが分かるようにしましょう。

【ケース②】自己PR欄が小さい場合

 自己PR欄が小さい場合は、アピールの数を絞りましょう。字数が多くなって文字が小さくなるのを防ぐためです。文字が小さいと、採用担当者の読む気が失せるおそれがあるためです。
 内容が少なくなる分、面接でしっかりアピールをして補いましょう。

【ケース③】志望動機に絡めて自己PRを書く場合

 会社から独自の履歴書が用意される場合、自己PR欄はあるが、志望動機欄がないケースがあります。
 その場合は、自己PRに触れた上で志望動機に話をつなげていくとよいでしょう。
 例えば、自身が持っているスキルに触れた上で、「私は○○ができます。貴社は○○に力を入れていると聞きました。まさに私の○○のスキルを活かして貴社に貢献できると確信を持っています。」等と書くとよいでしょう。