近年、ドラマやニュースで話題になっているパラリーガル。
 パラリーガルは、別称「法律事務員」と呼ばれています。その名の通り法律に関する事務をすることは想像の難しくないでしょう。
 しかし、具体的にどのような仕事をしているのかご存知ではない方は多いのではないでしょうか。

 そこで今回は、法律事務所で働く「法律事務員(以下、事務員と呼ぶ)」の仕事内容に迫っていきたいと思います。

 

法律事務所の仕事

 はじめに、法律事務所ではどのような仕事が行われているのかについてお伝えします。
 法律事務所では、誰かに訴えられた方や、誰かを訴えたいという方等のために、法律に詳しい弁護士が事件を解決に導くためのサポートを行っています。

 訴えられた方が法律事務所に相談をしに来た場合、その方は被告の立場になります。訴えられた内容が適切であるかどうかを法律に照らし合わせながら調査をします。その結果を受けて、被告のニーズに合った方法で事件を解決に導きます。

 対して、訴える側の人が法律事務所に相談をしに来所した場合、その方は原告になります。「どのような被害を受けていたのか」や「相手に対する要望は何か」等を原告から聴取し、可能な限り要望に沿った訴えを裁判所に示していきます。

 

事務員の仕事内容

 そんな法律事務所内で、事務員の仕事は「法務」と「秘書」の2つに大きく分けられます。それぞれご説明させていただきます。

法務

 法務とは、法律に関連する事務のことを指します。ただ、事務員は弁護士の資格を持っていないため、弁護士に代わって相手方と交渉する等、高度な専門性を必要とする業務は行いません。基本的には弁護士の補佐役として、指示された業務を遂行していきます。
 事務員は、主に次のような法務を行います。

■書類作成
■依頼者との電話連絡や相談受付
■文献や判例のリサーチ・分析
■登記や破産処理等の手続

 以上の他にメインの業務になるのが、必要書類の取り寄せ(裁判所に提出する申立書やその他必要書類の準備)です。これは事件ごとに取り寄せる書類が異なります。

 破産事件を受ける場合、破産の申立に必要な書類の準備を依頼者にお願いしたり、破産に至るまでの経緯等を陳述書(当事者や関係者の言い分を記す書類)にまとめたりしなければなりません。

 民事事件(個人同士のトラブル等)の場合は、裁判所に提出する書証(事実を立証する書類)を作成します。

 刑事事件(犯罪行為をした者に対し刑罰を科すかどうかを判断する手続)の場合は、裁判で用いられる記録をコビーするために検察庁に行きます。

秘書

 秘書業務は、以下のように業務が幅広いです。

【秘書①】スケジュール管理

 主な秘書業務に挙げられるのが、弁護士のスケジュール管理です。弁護士には次のような予定がスケジュールに組まれます。

・裁判
・相談
・依頼者と打合せ
・所外での会議
・会務(弁護士が所属する弁護士会や、全国の弁護士で構成される日本弁護士連合会で行われる活動)
・セミナー講師

 弁護士の仕事は多岐に渡るため、ダブルブッキング等のミスを防ぐためにも、事務員がスケジュール管理を行います。

【秘書②】電話対応

 電話や来客の相手は、相談者、裁判する相手、警察、検察、弁護士会等、様々です。裁判所からの期日連絡やその他の官公庁からの電話も多く、重大な内容が多いため専門用語を知っておかなければ、正確に弁護士に伝達することが出来ません。

【秘書③】来客対応

 法律事務所への来客者への対応も事務員の仕事です。受付を済ませ応接室に通し、お茶出し等を行います。

【秘書④】裁判資料のコピー

 法律事務所では、裁判資料のコピーは日常的かつ重要な業務です。

【秘書⑥】ファイリング

 法律事務所での業務の中でもとりわけ重要な業務です。書類の管理方法は弁護士ごとに異なりますが、必要書類をすぐ取り出せるように、収納能力が問われます。事務所の独自の収納方法を早く習熟することが求められます。

 秘書①~⑥の他に、FAXの送受信や郵便物の対応、掃除等を秘書業務に含まれます。

 

法律事務所によって仕事の範囲は異なる

 以上のように事務員の仕事内容は幅広いです。
 ただ、大規模な法律事務所では法務を担う「パラリーガル」と、秘書業務を担当する「秘書」に分けられるケースもあります。
 一方、小規模な法律事務所では1人もしくは数人の事務員が幅広く業務を担当するケースは少なくありません。

 また、法務は弁護士が全て行い、秘書業務のみを法律事務員が担当するという方針の法律事務所もあります。

 

法律事務所の規模によって必要とされるスキルが異なる

 事務員は、法律事務所の規模によって必要とされるスキルが異なります。

大・中規模の法律事務所

 大・中規模の法律事務所では、弁護士も事務員も複数名います。チームとして動く必要があるため、事務員同士で連携していけるコミュニケーション力が求められるのです。

小規模の法律事務所

 小規模の法律事務所であれば、弁護士と二人三脚になる場合は少なくありません。そのため、業務範囲がとても広く臨機応変に対応出来る柔軟な姿勢が必要とされます。

 

ある事務員の1日

 では、ある法律事務所で働くAさんの1日に密着してみましょう。基本的に1日のタイムスケジュールは以下のような流れです。

8:50   出勤
9:00~  メールチェック・弁護士のスケジュール確認
9:30~  弁護士から依頼があった案件の対応
12:00~ 昼食
13:00~ 裁判所へ外出
15:30~ 相談者の対応(会議室へ案内してお茶出し)
17:30~ 受任している事件の進捗確認、明日のスケジュールを確認
18:00  帰宅

 

やりがい

 さて、弁護士のサポートをする事務員はどのようなことにやりがいを感じるのでしょうか。

【やりがい①】相談者から感謝される

 弁護士の補佐役に徹するため表舞台に立つ機会がありませんが、案件の処理が終わると相談者から感謝されることが往々にしてあります。感謝されることにより「自分が行ってきた仕事が相談者の役に立ったんだ」という実感につながり、やりがいに満ちます。

【やりがい②】一丸となって業務処理をする姿勢

 法律事務所では、弁護士と事務員が一丸となって業務に取り組みます。同じ方向に向かって業務を遂行する一体感からは、充実した気持ちが得られます。

 

どんな人が向いている?

 それでは、どんな人は事務員に向いているのでしょうか。以下6つのいずれかに当てはまる方は事務員に向いていると言えるでしょう。

【向いている①】ミスが少なく丁寧な人

 法律事務所で扱われる書類は、裁判所への提出書類や契約書等、重要なものが多いためケアレスミスが許されません。そのため、丁寧に業務を遂行出来る人が向いています。

【向いている②】サポートをするのが好きな人

 事務員はアシスタント役でもあるので、弁護士が望んでいることを先回りして準備出来る気遣いも持ち合わせていなければなりません。ですので、サポートをするのが好きな人は向いているでしょう。

【向いている③】守秘義務を守れる人

 法律事務所では個人情報を扱うことが多いため守秘義務が守る必要があります。機密情報を漏らさないのは言うまでもありませんが、とりわけ法律事務所では守秘義務を守れる事務員が求められます。

【向いている④】コミュニケーション能力がある人

 法律事務所に相談をしに来る方は、お怒りの方や悲しみでいっぱいの方など様々です。
 そのため、人の気持ちを汲めるコミュニケーション能力がある方が向いていると言えるでしょう。

【向いている⑤】向上心がある方

 法律の知識がない未経験の方でも、働きながら法律の知識を身につけていけばスキルアップを図れます。また経験者でも、事務員は業務の幅が広いため覚えることが多いです。ですので、向上心がある方が向いていると言えるでしょう。

【向いている⑥】キャリアアップや試験合格を目指している方

 事務員は専門性が高い職業です。事務員での経験は、将来、弁護士や司法書士、行政書士を目指している方にとっては貴重な経験になります。
 そのため、それらの士業を目指している方にはキャリアアップに繋がります。

 

このような経験や経歴なら事務員に活かせる

 法律事務所の事務員になるには、特別な資格や法律の知識は必要ありません。
 たとえ、法学部を卒業していなくても働ける可能性はあります。ですので、他業種からの転職組も珍しくありません。
 ただ、事務員に活かせる以下のような経験やスキルを持っている方は採用されやすい傾向にあります。

【経験①】一般事務の仕事

 事務員はパソコンの使用は避けられません。最低限、ワードとエクセルが使えるパソコンスキルは必要になります。
 ですので、一般事務で身につけたパソコンスキルは事務員に活かせるでしょう。

【経験②】電話対応

 法律事務所では、クライアントからの電話が頻繁にかかってきます。そのため、カスタマセンターでの経験や、テレアポ経験者、その他電話対応が多い経歴の方は事務員の仕事にスムーズに取り組めるでしょう。

【経験③】秘書

 既述の通り、事務員の仕事内容は大きく分けると「法務」と「秘書」です。そのため、秘書経験者はダイレクトに活かせます。

【経験④】財務・経理に関する業務

 小規模な法律事務所では、経理を任せられるケースがあります。そんな場合に、経理・財務の経験を存分に活かせるでしょう。

【経験⑤】英語力

 大規模な法律事務所の場合、クライアントは大企業や海外企業が多いです。ですので、外国人弁護士や海外のクライアントからの電話に対応出来る英語力が必要になります。英会話が出来る方は事務員の仕事に活かせる可能性があるでしょう。

【経験⑥】運転免許

 また、外回りで車を使用するケースがあります。車の免許を持っている方も優遇される可能性があります。

 

事務員になる方法

 では、事務員になるにはどのような方法があるのでしょうか。主に次の3つが考えられます。

【方法①】ハローワーク

 未経験者はハローワークがオススメです。特に小規模な法律事務所の場合は、ハローワークを通じて採用活動をしているケースが多いです。

 そして、ハローワークの場合、よほどのことが無い限り書類審査で落とされることはありません。ですので、ほぼ面接まで進めます。そこで自分に熱意さえ伝われば採用になる可能性が高まります。

【方法②】ホームページに直接応募

 大規模な法律事務所であれば、1年を通してホームぺージで採用情報を掲載しています。法律の知識がないとしても英語力に自信のある方や秘書の経験をお持ちの方は、積極的にトライしてみてもよいかもしれません。

 

まとめ

 本記事を通して、法律事務員の仕事内容をお分かりいただけたでしょうか。事務員は一般事務員とは異なり法律の知識等、専門性の高いスキルが求められます。それよえ、事務員で積んだ経験は、弁護士や行政書士等になるための礎になります。

 事務員にはどんなやりがいがあり、どんな経験が事務員に活かせるか等も本記事では併せて触れさせていただきました。
 本記事をお読みになって事務員に興味を持った方は、これを機会にぜひ事務員を目指してみてはいかがでしょうか。