個人または法人から依頼があった、法律に関する書類作成や手続の代行業務を行う司法書士。この司法書士になるためには、元裁判官事務官・検察事務官を除いて、難関と言われる司法書士試験に合格しなければなりません。

 では、司法書士試験はどの程度の難易度なのでしょうか。「偏差値」や「合格率」も交えてご説明させていただきます。

 

司法書士試験の難易度

 法曹界(弁護士・裁判官・検察官等、法律に精通している職業)の資格の中で最も難関と言われているのが弁護士になるために受ける司法試験です。次いで、難関と言われているのが、司法書士試験です。

 合格者数を増やすという国の方針で法科大学院が設けられた司法試験に対し、司法書士は合格者数を減らす方針が続いています。そのため、近年の司法書士試験の合格率は3%で推移しています。

 2014年の「口述模擬試験アンケート」によると、司法書士試験の合格者の受験回数は

1回 9.8%
2回 16.1%
3回 21.7%
4回 14.6%
5回 14.6%
6回 23.2%

引用元:http://www.bio-deli.com/nanido.php

という調査データが出ています。

 半数以上の方は4回以上受けて、試験に合格していることが読み取れます。1回で合格した方は1割弱なので、短期間で合格した方は少ないことも想定出来るでしょう。

 これらのことからも、司法書士試験に合格することは難しいと言えます。

 また、司法書士試験は受験資格が不問であることも受験回数が増えている要因にあります。というのも、受験者の中には合格に必要な勉強をしない状態で、試しに受けてみる “記念受験”から始まり、数回の受験を重ね合格する方が少なくないことが考えらてれます。

 

司法書士試験が難しい理由

 また、複数受験しないと合格できないのには司法書士試験特有の難しさも理由に挙げられます。特に以下2つの理由が考えられるでしょう。

①登記法

 司法書士試験の受験科目は、憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、司法書士法、供託法、不動産登記法、商業登記法の11科目です。

 この11科目の中で、不動産登記と商業登記法が特に難しいのです。
 この2科目の登記法では、登記手続に関する問題が出されます。とはいえ、受験する方の大多数が、登記手続について未経験のため勉強をするのが大変です。

 例えると、電車や駅を見たことがない方が、切符の買い方や乗り換えについて勉強する、といったイメージでしょう。
 そのため、勉強をしても知識が定着しづらいのです。

②時間的に厳しい

 司法書士試験は、択一式と記述式の2つの方式で出題されます。そして、特に難しいのが記述式です。
 試験当日は、以下のスケジュールで行われます。

  時間 内容
午前の部 9:30~11:30 ・択一 35問
午後の部 13:00~16:00

・択一 35問

・記述 2問

  記述式問題は、午後の部で択一式とともに出題されます。ここで難点なのが、全て解くのが時間的に厳しいという点です。
 というのも記述式では、例えば以下のような流れの問題が出題されます。

顧客が司法書士事務所に相談に訪れた

顧客から事実関係や書類の存否について時系列に沿った説明を受ける

それに基づいてどのような登記申請書を書くべきなのか解答欄に記入せよ

 このような問題を解くためには、多大な時間がかかります。にも関わらず、択一式も含め180分以内に解かなければならないため、司法書士試験は時間的に難しいのです。

 

司法書士試験に必要な勉強時間

 では、司法書士試験に合格するためには、どの程度の勉強時間を割くのがよいのでしょうか。
 実際に、司法書士試験に合格したAさんに聞いたところ、以下のような回答が返ってきました。

 司法書士試験に合格するためには一般的に3,000時間必要であると言われています。とはいえ、大学で法学部等に通っていた等で法律の知識がある方や理解が早い方は、3,000時間未満で合格出来る方もいるでしょう。

 

 要は、ご自身のとって必要な勉強時間を確保して進めていけば、時間はそれほど気にしなくていいのかなと思います。3,000時間は1つの指標としておくのがよいでしょう。

 では、仮に3,000時間と設定した場合、どの程度の勉強期間になるのでしょうか。専業受験生と兼業受験生に分けて考えていきます。

専業受験生の場合

 専業受験生の場合、1日8時間の勉強時間を確保したとします。1年間休みなく毎日勉強すると、2920時間になるため、約1年で3,000時間の勉強を確保出来るでしょう。

 ただ、全く休みなしで勉強することは現実的な考え方ではないとも言えます。そこで、週に6日勉強すると仮定しましょう。その場合は、1年3ヶ月で3,000時間の勉強時間をこなすことが可能です。

兼業受験生の場合

 中には仕事をしながら、勉強をする兼業受験生もいるでしょう。兼業受験生の場合、仕事がある日は3時間、休日には11時間の勉強をするとします。すると、3,000時間を超えるには1年8ヶ月かかります。
 兼業の場合、長期スパンで考えて勉強計画を考えることが必要と言えるでしょう。

司法書士試験の日程と勉強時間

 ちなみに、司法書士試験の日程は、例年以下の日程で行われます。

したがって、筆記試験が行われる7月の第1日曜日に合わせて勉強計画を考えるとよいでしょう。

 

司法書士試験の勉強方法

 また、3,000時間もの勉強時間を要するのには、広範囲の法律の知識が要求されることも理由にあります。独学で受験する方もいますが、専門学校に通ったり、通信講座を受講したりして、効率的に学習するのも一手と言えるでしょう。

 こちらの「資格学校分析.com」にオススメの専門学校や通信講座が掲載されています。受験勉強体験談等も載っているため、おおいに参考になるでしょう。

 

司法書士試験に強い大学

 さて、司法書士試験に合格するためには、勉強時間だけでなく出身大学も関係していると考えられています。
 というのも、弁護士資格を取得するための司法試験の合格者を見ると、偏差値が高い大学の法学部に通っている人が多い傾向にあるためです。

 したがって、司法試験と同様、法律に関する問題が出題される司法書士試験も、法学部の偏差値が高い大学に合格者が多いと考えられています。
 そこで、法学部に偏差値が高い大学を見てみましょう。大学に通うという方は1つの参考にしてみてください。

大学名・学部 偏差値
慶応義塾大学・法学部(以下、同学部) 70
一橋大学 67.5
早稲田大 67.5
京都大学 67.5
上智大学 65
中央大学 65
大阪大学 65
法政大学 62.5
明治大学 62.5
立教大学 62.5
名古屋大学 62.5
神戸大学 62.5
東北大学 60
青山学院大学 60
同志社大学 60
大阪市立大学 60
九州大学 60

 

引用元:https://www.studyplus.jp/713#%E5%8F%B8%E6%B3%95%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E3%81%A8%E3%81%AF

 

難易度ランキング

 ここからは、他の資格と比較してみて、いかに司法書士試験が難しいのかを見ていきましょう。

偏差値から見る難易度ランキング

 有名掲示板サイト「2ちゃんねる」では、「資格難易度・偏差値ランキング」というものが存在しました。
 資格に偏差値はなく根拠は皆無かもしれませんが、少なからず頷ける面もあるため、本記事でも以下に紹介させていただきます。

70:裁判官 

68:検察官 

67:弁護士(予備試験) 

66:弁護士(ロー卒) 

65:公認会計士(全科目一括合格) 医師(国公立卒)

  国家1種 

64:弁理士(免除なし)

  アクチュアリー 公認会計士(科目分割合格)

  司法書士 税理士(5科目受験免除なし)

  技術士(総合監理) 

63:医師(私立卒)

  TOEIC990 電験1種(受験取得 認定除外) 

62:弁理士(選択免除) 1級建築士

  技術士(上位部門)不動産鑑定士 

61:1総通 税理士(3科目受験2科目免除)

  通訳案内士 

60:社会保険労務士 土地家屋調査士

  技術士(下位部門)

  中小企業診断士  税理士(2科目受験3科目免除)

     ITストラテジスト 

59:国家2種 システム監査技術者 獣医師 行政書士

  国税専門官 1陸技

  環境計量士 TOEIC900 英検1級 

58:歯科医師 米国公認会計士

  電験2種(受験取得 認定除外)

  その他高度情報処理6種類 

57:証券アナリスト 政令指定都市市役所上級

  日商簿記1級 労働安全・衛生コンサルタント

  気象予報士 薬剤師(国公立卒) 

56:測量士(受験取得)マンション管理士 1級

  FP技能士(学科+金財面接実技) 

55:電験3種(受験取得 認定除外)

  応用情報 英検準1級 TOEIC800

  電気通信主任技術者 エネルギー管理士 

54:技術士補 2級建築士 通関士 年金アド2級

  その他市役所上級 火薬類製造保安責任者甲種 

53:2総通 1種冷凍 公害防止管理者 特級ボイラー

  税理士(Wマスター5科目全部免除) 

  1級FP技能士(CFP+協会筆記実技) 

52:CFP 管理栄養士 TOEIC700 社会福祉士

  一般計量士宅建 管理業務主任者 

  海事代理士 基本情報 

51:工事担任者AIDD総合種 薬剤師(私立卒)

  1陸特 ケアマネージャー 

50:TOEIC600 日商簿記2級 危険物甲種 販売士1級 

48:2級FP技能士 AFP 1級ボイラー 2種冷凍 1種電工

  測量士補(試験取得) 

  1アマ無線 1海特 浄化槽設備士 

46:精神保健福祉士 保健師 助産師 看護師

  理学療法士  作業療法士 貸金業務取扱主任者 

44:介護福祉士 2種電工 3種冷凍 保育士

       年金アド3級  浄化槽管理士

       電験3種(無試験認定) 毒物劇物 2アマ無線 

43:ITパス 日商簿記3級 第1種衛生管理者

  エックス線 英検2級 

40:登録販売者 2級ボイラー 第2種衛生管理者

  2陸特 2海特 危険物乙種 

  測量士(無試験認定) 3級FP技能士 潜水士 

39:普通自動車 販売士2級 危険物丙種 

38:原付

引用元:http://career-information.com/1182

 繰り返しますが、資格に偏差値はありません。そのため、上記の偏差値ランキングは指標程度に捉えるようにしてください。

合格率から見る難易度ランキング

  次は、試験合格率から見た難易度ランキングを見ていきましょう。

  試験名 合格率
1 司法書士

平成25年度:3.5%

平成24年度:3.5%

2 司法試験予備試験

平成25年度:3.8%

平成24年度:3.1%

3 社会保険労務士

• 平成25年度:5.4%

• 平成24年度:7.0%

4 土地家屋調査士

• 平成25年度:8.7%

• 平成24年度:8.4%

5 公認会計士

• 平成25年度:8.9%

• 平成24年度:7.5%

6 行政書士

• 平成25年度:10.1%

• 平成24年度:9.2%

7 弁理士

• 平成25年度:10.5%

• 平成24年度:10.7%

 引用元:http://www.lec-jp.com/license_guide/ranking/

 試験合格率から見る限りでは、司法書士試験の合格率が他の試験より取得が難しい、と言うことが出来るでしょう。

終わりに

 合格者の多くが複数回受験をすると聞くと、「司法書士になるのは大変なことなんだな」と思うかもしれません。
 しかし、試験に合格すると多くの道が開けることも司法書士の魅力と言えます。

 近年では、大手の司法書士法人が試験合格者を対象に人材募集をしているため、早くからチャンスを掴むことが可能です。また、十分に社会経験がある方の中には、資格取得後、早々に独立を果たす動きもみられます。

 本記事では、司法書士試験が難しいことを中心にお伝えしましたが、そのような可能性を秘めている司法書士を目標に試験勉強してみるのも、一見の価値があると言えるのではないでしょうか。