夏になると多くの大学生や専門学生が、インターンシップを利用して職場体験をしています。それは、弁護士業界も例外ではありません。
 弁護士を目指している方や、法律に興味がある方が法律事務所で「サマクラ(サマークラーク)」というインターン制度を利用しています。

 一方で、ウィンタークラークがあります。本記事では、ウィンタークラークの内容やメリット、参加までの流れについてお伝えします。

 

ウィンタークラークとは

 ウィンタークラークとは、法律事務所が法務に興味を持っている方に対象にしたインターンのことを指します。司法試験予備試験の合格発表後の11~2月に実施されます。別称、ウィンターアソシエイト、ウィンターインターン、ウィンタープログラムと呼ばれています。

 主に司法試験予備試験合格者が参加出来るインターンです。

 2011年に司法試験予備試験制度がスタートして以降、ウィンタークラークは、大手法律事務所を中心に実施されるようになりました。しかし、現在では外資系法律事務所や中小の法律事務所もウィンタークラークを実施しています。

 

ウィンタークラークの内容

 こここでサマクラの内容を様々な観点から深掘りしていきます。

【内容①】業務

 ウィンタークラークでは、訴訟や準備書面等の起案、契約書のチェック、法令・判例のリサーチ等の課題が与えられます。
 その課題は、参加者全員に平等に与えられる場合と、指導担当者の裁量でその都度、変更される場合の2通りあります。

 また、弁護士が得意とする法領域や先端分野の講義を聴けるケースも少なくありません。

【内容②】給与

 ウィンタークラークは、基本的に給与は支払われません。但し、交通費や宿泊費は、支払われるケースが多いです。

【内容③】期間

 期間は、2,3日です。1、2週間実施されるサマークラークと比べて、ウィンタークラークは短期間です。

【内容④】勤務時間

 勤務時間は10~18時が多いです。

 

ウィンタークラークに参加するメリット

 ウィンタークラークに参加すると、次のようなメリットがあります。

【メリット①】就職に有利になる

 就職を成功させるためには、印象に残ることが大切です。ウィンタークラークに参加をすると、採用担当の弁護士に顔を覚られるため、就職に有利になります。

 通常、顔を覚えてもらうためには、書類選考通過後の面接で自分を最大限アピールしなければなりません。面接の時間は1時間程度です。限られて時間で自己アピールをすることは簡単ではありません。

 その点、2~3日参加するウィンタークラークは、面接に比べ顔を覚えられやすいです。採用担当の弁護士に自身を印象づけるいい機会なのです。

 一方、法律事務所は、採用の一環でウィーンタ―クラークを実施している側面があります。ウィンタークラークに参加した人のブログを見ると、それが分かります。

 ウィンタークラークは各事務所内容に違いがありますが、模擬内部会議があるような事務所では、そこでの振る舞いは結構見られているように感じました。そこは頑張りどころだと思います。

 その後司法試験後には個別訪問があり、そこで内定が出るかどうかが分かります(基本的には6月解禁なのですが、そのルールを破っている事務所があるのは事実だと思います)。

引用元:https://kokoro191919.hatenablog.com/entry/2019/07/28/153641

 上記を見ると、法律事務所が優秀な人材を早い段階で確保する目的として、ウィンタークラークを実施していることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 特に、大規模法律事務所への就職・転職を目指すにあたってはウィンタークラークへの参加は重要になります。

 四大法律事務所(アンダーソン・毛利・友常法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、西村あさひ法律事務所、森・濱田松本法律事務所)は、その傾向が強くウィンタークラーク参加者に内定を出すことが多いと考えられています。

【メリット②】法律事務所の雰囲気を肌で感じられる

 ウィンタークラークに参加すると、法律事務所の雰囲気を肌で感じることが出来ます。
 ウィンタークラークは、以下のようなスケジュールで行われます。

1日目 午前10時~

・事務所説明
・所内見学
・昼食会
・執務室での弁護士業務体験
・英会話(希望者のみ)
・アソシエイトとの座談会
・懇親会

2日目 午前10時30分~

・執務室での弁護士業務体験
・昼食会
・パートナーとの座談会
・執務室での弁護士業務体験
・懇親会

引用元:https://careers.amt-law.com/recruitment/lawyer/winter/

 上記は、4大法律事務所のうちの1つ、アンダーソン・毛利・友常法律事務所のウィンタークラークです。

 弁護士業務の体験だけでなく、座談会や懇親会等のイベントも用意されています。法律事務所ごとで風土は大きく異なります。実際に従事している弁護士と一緒に過ごすことで、法律事務所の雰囲気を直接感じることが出来ます。

 そのため、「入所してみたらイメージと違った」といったようなミスマッチを防ぐことが出来ます。

【メリット③】司法試験勉強のモチベーションが上がる

 法律事務を体験することで、弁護士になった自分をイメージしやすくなります。すると弁護士として活躍する自分をイメージしやすくなり、司法試験へのモチベーションも上がるでしょう。

 

ウィンタークラークに参加するまでの流れ

 ここからは、ウィンタークラークの参加方法についてお伝えします。

【流れ①】応募

 ウィンタークラークは、各法律事務所のホームページで募集しています。

インターネットで「ウィンタークラーク」と検索すると、ウィンタークラークを実施する法律事務所の募集ページが表示されます。参加地に希望がある方は、「ウィンタークラーク 東京」「ウィンタークラーク 大阪」といったように、ウィンタークラーク+地名で検索をかけましょう。

 ウィンタークラークに参加したい法律事務所が見つけたら、ホームページにアクセスして応募フォームに必要事項を入力し送信してください。

 また、ホームページで募集していないが、希望者がいればウィンタークラークを行う法律事務所もあります。ですので、希望する法律事務所がホームページ上でウィンタークラークの募集をしていない場合は、直接問い合わせをしてみましょう。

【流れ②】書類選考

 応募をすると、書類の提出を求められます。送付された書類を基に、法律事務所で書類選考が行われます。
 事務所によって異なりますが、応募の際は以下の書類の提出を求められるケースが多いです。

・顔写真
・司法試験予備試験の成績通知書(短答式・論文式・口述)
・成績証明書
・GPA証明書
・TOEICの成績表
・その他アピール出来る書類

 以上の応募書類は、書面ではなくPDF等のデータで提出を求められるケースが多いです。
 書類選考で通過した方には面接連絡、不採用の方にはお祈りメールが送られたり、サイレントお祈り(返事が来ないが事実上の不採用)の対応をとられたりします。

【流れ③】面接選考

 書類選考の次は、面接選考が行われます。面接の形式は、参加者1人に対して採用弁護士が2人であるケースが多いです。
 面接では、採用を見越して、応募者が法律事務所の雰囲気にマッチしているかどうかを見られます。質問される内容は、以下です。

・予備試験の成績や勉強法
・就職先を決める時期
・希望する法律事務所の雰囲気
・裁判官や検察官への興味の有無

【流れ④】採用

 採用かどうかは、メール等で後日伝えられるケースが多いです。面接後に直接採用を言い渡されるケースもあります。

 

ウィンタークラークに応募する際の注意点

 ウィンタークラークに応募する際は以下の点に注意してください。

【注意点①】早めに応募する

 募集開始後、早めに募集要項を確認し速やかに応募をしましょう。というのも、法律事務所は、応募者全員の書類に目を通すとは限らないためです。とりわけ、人気のある法律事務所はその傾向が強いでしょう。

 そのような法律事務所は、応募が早かった順に選んでいく可能性があります。ですので、ウィンタークラークに参加するためには、早めに応募をするのがベターです。

【注意点②】複数の法律事務所に応募する

 「この法律事務所のウィンタークラークにしか参加したくない」等のこだわりがないのであれば、複数の法律事務所に応募をしましょう。
 ウィンタークラークには定員があるため、採用されない可能性も考えられます。結果を待ってから、他の法律事務所に応募をすると既に定員に達しているかもしれません。

 それを避けるためにも、同時に複数のウィンタークラークに応募することをオススメします。

 

サマークラーク・スプリングクラークとの違い

 法律事務所の職場体験プログラムには、ウィンタークラークの他にサマークラークとスプリングクラークがあります。
 ウィンタークラークとサマークラーク・スプリングクラークには、時期と対象者が異なります。

  時期 主な対象者
ウィンタークラーク 11~2月頃 司法試験予備試験合格者
サマークラーク 8~9月頃 ロースクールの最終学年の在籍者・司法試験の受験者
スプリングクラーク 3月頃 ロースクールの最終学年の進級予定者

 ウィンタークラークとサマークラークに比べ、スプリングクラークを実施している法律事務所は少ないです。ウィンタークラークとサマークラークを重視している法律事務所が多いと言えるのではないでしょうか。

 

ウィンタークラークに参加出来なかった場合の対処法

 前出の通り、ウィンタークラークに参加すると就職に有利になります。しかし、全希望者がウィンタークラークに参加出来るとは限りません。

 ウィンタークラークに参加出来なかったが、法律事務所への就職を希望する方は、転職エージェントの利用をオススメします。

 就職エージェントとは、弁護士業界に詳しい担当者が、就職希望者のスキルや資質を見極め、活躍出来る法律事務所の求人を紹介するサービスのことを指します。

 日常的に就職希望者と法律事務所の橋渡し役を担っているエージェントを経由するため、就職エージェントを利用すると内定率が上がるのでオススメです。