夏になると多くの大学生や専門学生が、インターンシップを利用して職場体験をしています。それは、弁護士業界も例外ではありません。
弁護士を目指している方や、法律に興味がある方が法律事務所で「サマクラ(サマークラーク)」というインターンのような制度を利用しています。
しかし、サマークラークについては「実際になにをやるの」「応募の仕方が分からない」「給料ってでるの?」等、疑問が多いです。
そこで、本記事ではサマークラークの業務内容やメリット、応募の仕方等についてお伝えします。
サマークラークとは
サマークラークとは、法律事務所が法務に興味を持っている方に向けて例年8~9月頃に実施されるインターンのことをいいます。事務所によってはサマークラークではなく、サマーインターンあるいはサマーアソシエイトと呼んでいます。
サマークラークの具体的な対象者は、首都圏の法律事務所では、主に法科大学院生の最終学年在学者(2年制なら2年生、3年制なら3年生)です。それ以外の地域の法律事務所では、司法試験受験者が対象になるケースが多いです。
以前は、大手法律事務所を中心にサマークラークが実施されていました。しかし、現在では外資兼法律事務所や中小の法律事務所もサマークラークを取り入れています。
サマークラークの業務内容
事務所のよって異なりますが、サマークラークでは主に以下のような業務内容が行われます。
【業務①】法令・判例の調査
まず挙げられるのが、法令・判例の調査です。
判例等をリサーチし、事務所で務めている弁護士の補助として従事します。
ロースクールでは、法律に関しての勉強は出来ても、実際の実務を体験することは出来ません。サマークラークでの法令・判例の調査は貴重な体験になります。
【業務②】書類作成補助
弁護士の指導の下、業務に必要な書類作成の補助を行います。具体的には、契約書のチェックや実務文書の起案等を行います。
弁護士になると、膨大な量の書類作成を行わなければなりません。ロースクール生のうちから、書類作成を経験しておくと、弁護士になった自分をイメージしやすくなります。 就活でも説得力のある自己PRにつなげることが期待出来るでしょう。
以上の①②は、参加者全員に平等に与えられる場合と、指導担当者の裁量でその都度、変更される場合の2通りあります。 就職に関わる可能性があるので、いずれの場合も一生懸命に取り組んで能力と意欲をアピールするとよいでしょう。
サマークラークの勤務時間
サマークラークの勤務時間は10~18時(休憩1時間)の実働7時間が多いです。なかには、午後から夕方までと短時間勤務のサマークラークもあります。
サマークラークの給与
サマークラークの給与は、日当1万円で設定している事務所が多いです。交通費や宿泊費は別途支給されます。
サマークラークの期間
期間は、多くの事務所が1週間で実施しています。但し、2週間と長い期間を設けていたり、2~3日と短期で実施していたりする事務所もあります。
サマークラークの1日例
では、サマークラークのイメージをより鮮明に出来るように、1日の例を4つの時間帯に分けて紹介します。
【1日①】午前中
午前中は、配属された執務室で、法令・判例の調査、書類作成補助等の弁護士業務に従事します。それだけでなく、クライアントからの法律相談、裁判・委員会への出席等、法務以外の体験もします。
【1日②】ランチ
ランチタイムでは、サマークラークを担当する弁護士から、仕事以外の日常生活等についての話が聞けます。
【1日③】午後
午後は、午前中と同様のケースもありますが、事務所の弁護士のセミナーに参加する場合もあります。
セミナーの内容は弁護士によって異なります。それは、弁護士によって得意分野が異なるためです。
【1日④】夕方
1日の終わりには、参加者それぞれが、関心の高い分野を担当する弁護士を訪問します。そこで、聞きたいことを直接質問出来ます。理解を深める絶好の機会です。
サマークラークに参加するメリット
サマークラークに参加するとどのようなメリットがあるのでしょうか。以下のメリットが挙げられます。
【メリット①】弁護士になった自分をイメージ出来る
実際に弁護士業務に従事することで、弁護士になった自分をイメージ出来るようになるというメリットがあります。
それは、いくら勉強しても身につけられるものではありません。
【メリット②】就活が有利になる
弁護士になった自分をイメージ出来ると、就職までに何を勉強すればよいのか、どのような情報を入手するべきか等、自ずと就職に向けてするべき方向性が定まってきます。それにより、就活の質も高くなるでしょう。
また、サマークラークに参加しないと内定をもらうことが難しい事務所があります。とりわけ、五大事務所(西村あさひ法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、長島・大島・常松法律事務所、TMI総合法律事務所、森・濱田松本法律事務所)は、その傾向が強いと言われています。
サマークラークに参加すると、そのような事務所からの内定をもらいやすくなるメリットが挙げられます。
【メリット③】就職後のミスマッチ防止
法律事務所と一口に言っても、所風や方向性は様々です。そのため、自身に合うかどうかは、就活において重要な選定基準になります。 サマークラークに参加をすると、どのような事務所なのかを見極められます。それにより、就職後のミスマッチを防ぐことが出来るのです。
【メリット④】横の繋がりが出来る
サマークラークには、法科大学院だけでなく、他の大学院からも参加者がいます。弁護士は、横の繋がりも大切です。
他の大学院との交流も深められる機会があるのも、サマークラークのメリットなのです。
応募から採用までの流れと注意点
一般的に、サマークラークは、応募から採用まで以下のような流れになります。 ①サマークラークに参加したい法律事務所のホームページから応募する ②書類選考 ③面接 ひとつずつ見ていきましょう。
【流れ①】サマークラークに参加したい法律事務所のホームページから応募する
まずは、サマークラークに参加したい法律事務所のホームページから応募をします。そのため、サマークラークを実施する法律事務所を把握するための情報収集は欠かせません。
その情報収集の方法は、「インターネットで探す」「大学やロースクールで探す」の2通り挙げられます。 インターネットで探す場合は、グーグル等の検索エンジンで「サマークラーク」と検索をかけると、サマークラークを実施している法律事務所が表示されます。参加地に希望がある方は、「サマークラーク 東京」「サマークラーク 大阪」といったように、サマークラーク+地名で検索をかけましょう。
また、就職サイトでサマークラーク参加者を募っているケースもあります。 大学やロースクールで探す方は、学校の掲示板を見たり、事務室に問い合わせたりすることで、サマークラークを募集している法律事務所をチェック出来ます。 募集は3月頃からスタートさせる事務所が多いです。
応募する際の注意点
募集開始後、出来る限り早めに応募をしましょう。というのも、事務所は、応募者全員の書類に目を通すとは限らないためです。とりわけ、人気の事務所はその傾向が強いでしょう。 そのような事務所は、応募が早かった順に選んでいく可能性があります。ですので、サマークラークに参加するためには、早めに応募をするのがベターです。
【流れ②】書類選考
一般的に、サマークラーク参加者の募集では、書類選考が行われます。書類選考は春頃から開始され、5月頃で終了するケース多いです。 事務所によって異なりますが、応募の際は以下の書類の提出を求められるケースが多いです。
・顔写真付きの履歴書
・エントリーシート
・在学証明書
・GPA証明書
・ロースクールの成績証明書
・予備試験の成績書
・短答式の成績書
・TOEICの成績書
・その他アピール出来る書類
書類の提出方法は、PDFによるオンライン上での応募を採っている事務所が多いです。 書類選考で通過した方には面接連絡、不採用の方にはお祈りメールが送られたり、サイレントお祈り(返事が来ないが事実上の不採用)の対応をとられたりします。
書類選考の際の注意点
弁護士は、書類作成業務がメインになります。そのため、書類作成の正確性が問われます。書類選考では、応募書類が正確に書けているかどうかを見られます。
弁護士としての資質を疑われないように、書類作成をする際、以下の点を注意してください。
■誤字脱字のチェック
書類作成の誤字脱字は、重大な問題に繋がるおそれがあります。書類に作成を終えたら必ず誤字脱字のチェックを行いましょう。特に、採用担当者の名前は絶対に間違わないでください。
■履歴書・エントリーシートの顔写真の貼り付けを忘れない
文章のミスがなくても、履歴書・エントリーシートの顔写真を忘れてしまっては本末転倒です。顔写真の張り付けを忘れていないか必ずチェックしてください。
■指定以外の方法で応募しない
応募方法はオンラインと郵送の2通りあります。どちらで応募するのか必ず指定があります。
弁護士はクライアントの話をよく聞かなければなりません。にも関わらず、応募の指定方法を間違えると、人の話を聞けない人と思われる、弁護士に向いていないと見なされる可能性があります。そうならないよう、必ず指定の方法で応募をしてください。
■必要書類のチェック
書類選考では複数の書類提出を求められます。抜け漏れがないよう、必ず指定された書類を提出してください。
また、募集期間中に提出する書類に変更が生じるケースがあります。ですので、書類を提出するまえに、もう一度提出書類の確認を行いましょう。
■成績が全てではない
書類作成以前の注意点になりますが、応募に際して成績書の提出を求められることがあります。ですので、確かに成績は重視されます。しかし、成績が全てではありません。他の要素で通過する可能性が十分に考えられるので、成績の良し悪しは気にせず応募しましょう。
【流れ③】面接
面接では、採用側が応募者の本音を探ろうと、様々な質問をしてきます。但し、就活面接のような堅苦しさはありません。
面接の形式は、個人面接の場合は、参加者1人に対して採用弁護士が2人であるケースが多いです。参加者1人に対し採用弁護士が5人のケースもあります。 集団面接の場合は、参加者と採用弁護士の割合が、3対2、4対2、5対2が多いです。稀に10対10もあります。
面接では次のようなことを聞かれます。
■自己PR
■志望動機
■興味のある分野
■長所と短所
■事務所を選ぶ際のポイント
■目指している弁護士像
■弁護士になりたいと思ったきっかけ
■あなたが大事にしている事務所選びのポイント
■司法試験の手応え
■御所でどのような活躍をしたいか
■英語はどのくらい話せるか
■自分を物に例えると何か
■グループ内の自分の役割・立ち位置
面接の際の注意点
学生の立場なので当然、業務に関して分かりませんが、質問タイムの際に積極的に質問をしないと、サマークラークに対しての意識が低いと捉えられるおそれがあります。
面接に行く方は質問が出来るように、事務所のホームぺージをチェックする等の準備は欠かさないようにするのがベターです。 面接では事前に提出していた履歴書等をベースに質問されます。質問を通して、コミュニケーション能力や人柄も見られているともいわれています。 また、面接時は必ずスーツで参加してください。私服では参加出来ないので注意しましょう。
サマークラークを募集している法律事務所
サマークラークを募集している法律事務所は、本サイトのこちらの記事「サマクラとは?実施している法律事務所も紹介」でまとめています。併せてご覧ください。