前東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長の森喜朗さんの女性蔑視発言により、男女差別に厳しい目が向けられるようになっています。
 ですが現実は、まだまだ男性優位社会の名残りが拭えていません。
  その1つに挙げられるのが行政書士です。

 日本行政書士会連合会が発行する日本行政によると、令和2年5月末現在、行政書士の個人事務所の登録数は、男性が40,062名に対し、女性は6,569人です。女性の人数は、男性の約8分の1です。

 この差は一体なぜ起こるのでしょう。年収がネックになって、女性の行政書士の進出を遮っているのでしょうか。
 そこで、本記事では、女性の行政書士の年収にスポットを当てていきたいと思います。

 

行政書士の仕事の特徴

 行政書士は自由業です。場所を問わず様々な働き方が出来る仕事です。一方で、年収が安定しない仕事です。
しかし、行政書士は高い年収を稼ぐチャンスも与えられた資格でもあります。

 

行政書士になるには

 行政書士になるには、行政書士試験に合格後、日本行政書士会連合会の行政書士名簿に登録手続きをする必要があります。
 日本行政書士会連合会は、地域ごとに支会があり、たとえば東京で働く行政書士は、東京都行政書士会に登録手続きしなければなりません。
 その際の登録料は、支会によって異なりますが、おおよそ25~30万円です。さらに月会費が7,000円かかります。

 そのため、出費分を回収出来るだけの収入を上げることが肝心なのです。

 

行政書士の平均年収

 行政書士の平均年収は、「開業5年の先輩行政書士からアドバイス」というサイトによると、行政書士の平均年収は『611万円』(『http://www.falken2.jp/nensyu.html』)です。
 国家試験に合格して、登録料や月会費を支払った上で、この平均年収は割に合わないと感じる方は多いのではないでしょうか。

 しかし、この平均年収にはカラクリが隠れているのです。

 

専業の行政書士が少ない

 それを裏付けるデータが、「月間 日本行政」に記載されている、全国行政書士登録者4,477人を対象に行った年間売上の統計調査です。    

 それによると、行政書士の年間売上は以下のような分布になっています。

【行政書士の年間売上】
・1億円以上0.1%
・1億円未満0.7%
・5,000万円未満0.8%
・4,000万円未満0.8%
・3,000万円未満1.8%
・2,000万円未満5.9%
・1,000万円未満11.0%
・500万円未満75.9%
・未回答4.1%

 年間売上が500万円未満の場合、経費や借入金を差し引くと、年収は300万円未満と予想されます。
 「500万円未満」の方は75.9%です。つまり約4人中3人の行政書士が、年収300万円未満というのが現実なのです。

 一方、ごく一部の行政書士は一億円以上の年間売上があり、年収は5,000万円を超えると予想されます。
 なぜ行政書士は年収に大きな差があるのでしょうか。

 実は、行政書士の中で、行政書士を専業にしている人は、『1~2割』(『https://www.gyosei-goukakukaigyou.com/nensyu.html#contents1』)程度なのです。
 それ以外の行政書士は、税理士や社会保険労務士等の他士業と兼業しています。

 つまり、行政書士としての売り上げが少ない方のデータも含まれているのが、年収に大きな差がある理由でもあるのです。
 また、普段は会社に勤務して、副業感覚で行政書士として活動している例があります。

 

女性の行政書士の年収

 女性の行政書士も例外ではありません。子どもが小さいうちは仕事量をセーブし、年収『100万円以下』(『https://gyousei-syosi.net/shoshi30.html』)の方も少なくありません。 一方、仕事量をセーブせず、本業で行政書士として働き、顧客から依頼が増えて『500万円~1,000万円』(『https://gyousei-syosi.net/shoshi30.html』)の年収を得ている女性も存在します。

 

女性の行政書士の現状と今後

 行政書士の業務は、書類作成等のデスクワークがメインになるため、仕事の性質上、男女間の差はありません。
 行政書士試験の難易度は、他の国家試験と比較して難易度は低いので、家事や育児に追われる主婦でも合格出来るチャンスがあります。

 今後は、政府の方針が影響し、女性の行政書士の進出が盛んになると考えられます。実際、既に事務スタッフを含めて全て女性という行政書士事務所があります。女性特有の繊細さを生かして、活躍している行政書士事務所も頭角を現してきています。

 また、行政書士は、離婚や不倫問題等、夫婦間の争いに関する女性顧客からの案件もあります。顧客にとっては同姓である女性の行政書士の方が、安心感があり話しやすいです。男性行政書士との違いを生かして活躍している女性行政書士は多いのです。