税理士の資格は、税理士試験に5科目に合格すると取得出来ます。
 実は、税理士になるためのメインルートは、「税理士試験で5科目合格する」から「全てまたは一部は免除制度を利用する」に取って代わろうとしているのです。

 

科目免除制度の利用状況

 税理士になるためのメインルートが「全てまたは一部は免除制度を利用する」になるという、客観的データがあります。
 それは、近年の税理士登録者の属性です。2017年4月から2018年3月に税理士登録した2,727のうち、『国家試験合格者の割合が約28%、試験免除者の割合が約50%』(『https://zeirishi.mynavi-agent.jp/helpful_mt/2018/11/382.html#Cont1』)です。
 近年、税理士になる半数は、免除制度を利用しているのが現状なのです。

 

科目の区分・種類

 科目免除の説明に入るまえに科目の区分・種類についてお伝えします。科目は、下記表を見てお分かりの通り、会計科目と税法科目の2つの区分、必修科目・選択必修科目・選択科目の3つの種類があります。

科目の区分

科目の種類

科目名

会計科目

必須科目

簿記論

財務諸法論

税法科目

選択必須科目(いずれか1科目を選択)

所得税

法人税

選択科目(いずれか2科目を選択)

相続税

消費税

酒税法

国税徴収法

住民税

事業税

固定資産税

 

科目免除の条件

 では免除制度とは、どのようなものなのでしょうか。以下が科目免除の早見表です。

免除区分

該当者

免除される科目

資格による試験免除

弁護士

全科目

公認会計士(一部研修が必要)

学位取得のよる科目免除

平成20023月までに大学院に進学した者で、商学の学位(修士または博士)を取得した者

会計科目

平成20023月までに大学院に進学した者で、法学または経済学で、財政学の学位(修士または博士)を取得した者

税法科目

平成20024月以降に大学院に進学した者で、会計系の修士論文を執筆し学位を取得した者

会計科目

平成20024月以降に大学院に進学した者で、税法系の修士論文を執筆し学位を取得した者

税法科目

国税従事による科目免除

10年または15年以上、税務署に勤務した国税従事者

税法科目

23年または28年以上、税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者

会計科目

 では、免除区分ごとに補足説明をさせていただきます。

【免除区分①】資格による試験免除

 弁護士は、税理士試験を受けずに日本税理士会連合会に登録することが出来ます。

・日本税理士会連合会

 税理士法に基づいて設立された法人のことを指します。税理士資格を保有する者が税理士業務を行うためには日本税理士連合会に登録をしなければなりません。

 また、公認会計士も税理士試験を受けずに日本税理士会連合会に登録することが出来ます。但し、法改正により平成29年4月1日以降に公認会計士試験に合格した者は、税法に関する研修を修了しなければ税理士会連合会に登録出来ません。

【免除区分②】学位取得のよる科目免除

 学位取得による科目免除は、税理士法の改正により「平成14年3月までに大学院に進学した者」と、「平成14月4月以降に大学院に進学した者」とで取り扱いが変わります。

平成14年3月までに大学院に進学した者

 平成14年3月までに大学院に進学した者は、修士号と博士号どちらにも関わらず、商学の学位であれば必須科目の簿記論と財務諸表論の2科目の受験が免除されます。
 また、法学と経済学のうち財政学の学位を取得すると選択必須科目と選択科目に当たる税法科目の3科目が免除されます。
 そのため、商学系と法学系の両大学院の修士号を取得している場合、税理士試験を受けずに税理士になることが可能です。

平成14年4月以降に大学院に進学した者

 対して、平成14年4月以降に大学院に進学した者については、修士号と博士号では、科目免除のための要件が異なります。

・修士号とは
 大学院の前期博士課程(一般的には2年間)修了し、修士論文の審査に合格した者に与えられる学位のことをいいます。

・博士号とは
 大学院の後期博士課程(一般的には3年間)修了し、博士論文の審査に合格した者に与えられる学位のことを呼びます。

■修士号の場合

 大学院で「税法」もしくは「会計学」に属する科目等の研究をし、修士論文を執筆し修士号を取得することで、免除を受ける権利を得られます。
 科目免除をする際は以下の流れに沿ってやると免除することが出来ます。
 4つの例を挙げてご説明させていただきます。

【例1】
会計学の修士号を取得し必須科目の簿記論に合格
⇒科目免除制度に申請
⇒申請が通れば必須科目の財務諸表論が免除

【例2】
会計学の修士号を取得し必須科目の財務諸表論に合格
⇒科目免除制度に申請
⇒申請が通れば必須科目の簿記論が免除

【例3】

税法の修士号を取得し選択必須科目の法人税に合格
⇒科目免除制度に申請
⇒申請が通れば選択科目の2科目が免除

【例4】

税法の修士号を取得し選択科目の相続税に合格
⇒科目免除制度に申請
⇒申請が通れば選択必須科目の1科目と選択科目の1科目が免除

■博士号の場合
 会計学に属する科目等の博士号を持つ者は、必須科目である簿記論と財務諸表論の2科目が免除になります。対して、税法に関する研究により博士号を取得した者は選択必須科目と選択科目の3科目が免除になります。

■ダブルマスター
 以上のような科目免除制度から、ダブルマスター(会計学に属する科目等の博士号と、税法に属する科目等の博士号の両方を取得した者)は事実上、税理士試験を受けることなく税理士資格を取得することが出来ます。

【免除区分③】国税従事による科目免除

 国税従事によっても科目が免除されます。税務署に勤務した年数と経験した職域によって、免除される科目が変わります。

10年または15年以上税務署に勤務した者

 10年または15年以上税務署に勤務した国税従事者は、以下のように経験した職域によって免除の対象になる税法科目が異なります。

該当者

免除科目

①所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税もしくは酒税の賦課、またはこれらの国税に関する法律の立案に関する事務に従事した期間が通算10年以上の者

所得税・法人税・相続税・贈与税・消費税・酒税

②国税に関する事務のうち上記の事務以外の事務に従事した期間が通算15年以上の者

所得税・法人税・相続税・贈与税・消費税・酒税

③都道府県民税、市町村民税、事業税・固定資産税の賦課、またはこれらの地方税に関する法律の立案に関する事務に従事した期間が通算10年以上の者

事業税・固定資産税

④地方税に関する事務のうち、上記に規定する事務以外の事務に従事した期間が15年以上の者

事業税・固定資産税

⑤ ③に規定する事務に従事した期間が通算して15年以上の者

税法科目(選択必須科目と選択科目)

⑥ ④に規定する事務に従事した期間が通算して20年以上の者

税法科目(選択必須科目と選択科目)

23年または28年以上税務署に勤務した者

 23年または28年以上税務署に勤務し、指定研修を修了した国税従事者は会計に属する科目が免除されます。

該当者

免除科目

前項①~③までに規定する事務に従事した期間が通算して23年以上になる者

会計科目(必須科目)

前項④に規定する事務に従事した期間が通算して28年以上になる者

会計科目(必須科目)

上記の上記に規定する期間を通算した年数の23分の28(約82.14)に相当する年数と、上記に規定する期間を通算した年数と合計した年数が28年以上になる者

会計科目(必須科目)