転職活動の際の面接では、序盤に以下のような質問をされることが往々にしてあります。

「自己紹介をお願いします」
「前職の退職理由は何ですか」
「これまでの職歴について教えてください」
「当社を志望した理由を教えてください」
「長所・短所を教えてください」

 これらの中で、いの一番に質問されるのが「自己紹介をお願いします」でしょう。実は、この自己紹介は採用結果に大きく関わる可能性があります。

 というのも自己紹介は、応募者の第一印象を大きく左右します。とりわけ、時間が限られた面接において、第一印象が応募者の評価になると言っても過言ではないでしょう。

 そこで、本記事では転職活動の面接を成功に導くための「自己紹介ノウハウ」をお伝えいたします。

 

面接官が自己紹介を聞く意図

 まず初めに、面接官が応募者に自己紹介を求める意図を理解しましょう。
 面接官は、応募者が「どんな人なのか」を探るために自己紹介を求めます。具体的に応募者の職務経歴やプレゼン能力、人柄等を見ています。

 

自己紹介と自己PRの違い

 自己紹介と似たような質問に「自己PRをお願いします」があります。ここで注意しなければならないのは、自己紹介と自己PRは違う、ということです。

この2つの大きな相違点は「話す内容」です。

自己紹介とは

 自己紹介とは、自身について簡潔に話すことをいいます。1つのことを深掘りして話すのではなく、「どんな人物なのか」を分かりやすく要点をまとめて伝えていきます。

自己PRとは

 対して、自己PRとは、1つのことをグッと掘り下げて話していくことを指します。自身の長所や、アピールしたい経験の詳細を伝える等が自己PRに当たるでしょう。

 ですので、本に例えると自己紹介はあらすじ、自己PRはメインシーンと言えるでしょう。このような違いがあるため、自己紹介と自己PRを混同しないように気を付けてください。

 

 自己紹介のコツ

 自己PRとの違いを理解したところで、次に自己紹介のコツについてお話させていただきます。

①“さわり”の部分のみを話す

 中途採用の面接では、経験やスキル等を中心に聞かれます。これは、企業が中途採用者に即戦力を求めているためです。
 前出の通り、自己紹介は本のあらすじのようなものなので、全てを伝える必要はありません。

 経験やスキル等の “さわり”の部分のみを話して、面接官に興味を持ってもらうことがコツと言えるでしょう。例えば、実績について述べる場合は、「対前年比130%の実績を残しました」といったように数字を交えるとよいです。

②企業が求める職歴や長所を話す

 応募企業が求める人材に合った職歴や長所を話すことも大切です。そのため、ホームページ等で応募企業をリサーチして、どのような人材を求めているか把握しておきましょう。

③1分以内におさめる

 自己紹介は1分以内におさめるのがベストです。文字数にすると300文字前後です。
 1分以内に自己紹介をすることによって、以下の2つのメリットが生まれます。

【1】面接官から多く質問される

 中途面接の多くは30分程度で設定されています。入退室やアイスブレイク(緊張感を解いて場の雰囲気を和ませる行為)の時間等を除くと実質、面接官との会話は20~25分程度です。

 時間が限られた中で、例えば3分以上も時間を費やすと、面接官から質問される時間が減ってしまいます。
 そのため、1分以内におさめることで、面接官から多くの質問をされる時間を確保出来るというメリットがあります。延いては、面接官に自身をよく知ってもらう機会に繋がるのです。

【2】「短く論理的にまとめるスキル」をアピール出来る

 面接官は、応募者の自己紹介から「言いたいことを簡潔にまとめて話せているか」という点を見ています。そのため、1分以内に話すことで「短く論理的にまとめるスキル」をアピール出来るでしょう。

 

自己紹介の例文

 それでは、具体的に自己紹介の例文を見ていきます。
「どんな人物か」を手短に伝えるためには、以下のような構成にするのがベターです。

①挨拶

②職務経歴

③自己PR

④志望動機

⑤締めの言葉

 この流れに沿った自己紹介の例文が以下です。

①シーク太郎と申します。本日はお時間をいただき、誠にありがとうございます。
②株式会社〇〇に新卒入社して×年、法人向け営業職として大手企業を対象に営業に取り組んできました。
 開拓した企業は通算△△社程度、年間約□□万円の売上に貢献しました。
 実績のある顧客の取引拡大に向けたソリューション型営業を中心に、新規顧客開拓の営業も経験しております。
③現在は職場のリーダーとして、7名の部下育成も行っております。
 昨年度は営業部のMVPに選出され、会社総会で表彰さる機会をいただきました。
④以前より、グローバルな環境で頑張りたいと考えておりましたところ、貴社の海外営業求人を拝見し、「自分もこんな環境で挑戦してみたい」と転職を決意しました。
⑤本日は、どうぞ宜しくお願いいたします。

 上記の例文は、営業職の人をモデルにしていますが、どの職業でも自己紹介の構成を考えるうえで大いに参考になります。
 では、1つずつ分解して解説させていただきます。

①挨拶

シーク太郎と申します。本日はお時間をいただき、誠にありがとうございます。

 初めはフルネームで挨拶をしましょう。在籍中の社名や学歴を言う必要はありません。
 面接時間をいただいたお礼を伝えると、面接官からの印象をアップさせる効果があります。

②職務経歴

株式会社〇〇に新卒入社して×年、法人向け営業職として大手企業を対象に営業に取り組んできました。
開拓した企業は通算△△社程度、年間約□□万円の売上に貢献しました。
実績のある顧客の取引拡大に向けたソリューション型営業を中心に、新規顧客開拓の営業も経験しております。

 挨拶の後は、職務経歴を簡単に紹介します。「どのような職務についていたか」や「その職務ではどんな領域を担当していたか」等の具体例を交えて伝えましょう。

③自己PR

現在は職場のリーダーとして、7名の部下育成も行っております。昨年度は営業部のMVPに選出され、
会社総会で表彰さる機会をいただきました。

  自己紹介内の自己PRは深掘りして話すのではなく、“さわり”の部分を伝えるだけでOKです。面接官に興味を持ってもらえるように自己PRをしましょう。

④志望動機

以前より、グローバルな環境で頑張りたいと考えておりましたところ、貴社の海外営業求人を拝見し、
「自分もこんな環境で挑戦してみたい」と転職を決意しました。

  自己PRに続いて志望動機を伝えていきます。ここでも、本記事であれば「グローバルな環境で働きたい」といった志望動機の“さわり”の部分を伝えましょう。
 「私は御社に入社したいと思っています」という前向きな姿勢も含めながら話すのがベターでしょう。

⑤締めの言葉

本日は、どうぞ宜しくお願いいたします。

  最後に、締めの言葉を述べましょう。自己紹介をしっかり締めることで、面接官に力強く前向きな印象を与えることが期待出来ます。

 

様々なケースの自己紹介

 基本的には前項の流れにならった自己紹介がよいのですが、ケースによって変化をつける必要もあります。
 特に以下のようなケースは、自己紹介の仕方を変えましょう。

【ケース①】転職回数が多い

 転職が多い方は、直近の職歴を中心に話しましょう。というのも面接官は、現職と応募した職種のマッチングを評価しようとする傾向があるためです。

【ケース②】趣味が仕事に活かせる

 時折、趣味が仕事に活かせる場合もあります。その場合は、自身の大きな武器になるため、趣味をアピールしましょう。
 例えば、趣味がファッションでアパレル企業の面接を受ける場合は、以下のように「③自己PR」をするとよいでしょう。

私は趣味がファッションです。常にファッション誌には目を通して新しいトレンドを研究しています。
また、洋裁専門学校時代の制作経験を活かし洋服を自分で作って楽しんでいます。

【ケース③】未経験職種への転職

 未経験の職種に応募をする場合は、「②職務経歴」よりも「③自己PR」に力を入れるのがポイントです。

 「なぜ、未経験の職種に応募したのか」が面接官に伝わるように、「②職務経歴」を含めた「③自己PR」を以下のように伝えましょう。
 今までに得たスキルや経験が応募先企業で活かせることを示せれば、納得度の高い自己紹介になるでしょう。

前職の営業職では、社外・社内問わず、仕事相手と信頼関係を築き上げることに注力していました。
お客様から感謝の言葉をいただくことも多く、
上司からも「職場の雰囲気を明るくする」と評価をいただいております。また、仕事は迅速さと正確さをモットーに、細かい業務に進んで取り組んできました。

今後は、前職で培ったコミュニケーション能力や業務処理能力を、
社内貢献度の高い事務職といった形で活かしていきたいと考えております。

 【ケース④】フリーターから正社員を目指す

 フリーターから正社員を目指す場合は、「今までと違う働き方をしたい」という意気込みを伝えましょう。

 また、「②職務経歴」と「③自己PR」で、これまでのアルバイト経験で得た知識やスキル等を以下のように回答するとベターです。

私は、アルバイトとして1年間コンビニエンスストアで働き、現在は外食チェーン店で調理・接客業務に携わっています。
新人アルバイトのトレーニングやシフト管理も担当しています。
接客業務を行う傍らで、人生最大の買い物に関われる住宅販売の仕事に就きたいと考えるようになり、
独学ですが宅建の勉強を始めました。

営業職は未経験ですが、接客業で身に付けたコミュニケーション能力を活かして
住宅販売のプロを目指したいと考えています。

【ケース⑤】第二新卒の場合

 第二新卒に当たる方は、「②職務経歴」の冒頭で「〇〇大学××学部を卒業後、A株式会社に入社し―――」といったように、大学卒業についても触れましょう。

 ちなみに、第二新卒とは、大学卒業後に短期間でも社会に出た経験がある人をいいます。一般的には、3年以内の社会人経験がある人が第二新卒に該当します。

 

職種別の自己紹介

 また、応募職種によっても自己紹介の仕方を変えた方がよい場合があります。

【職種別①】事務

 事務職は、ワードやエクセル等のパソコンソフトを使用する企業が多いです。そのため、「③自己PR」では、パソコンソフトを使用出来ることをアピールしましょう。また、事務職に活かせる資格を保有している方は、それも交えた自己PRにしましょう。

→事務職関連の資格についてはこちらで詳しく説明をしています。

【職種②】経理

 経理は「会社のお金」や「決算数字等の社外秘」等、会社にとって重要なものを扱うため、ミスが許されません。
 そのため、「④自己PR」で正確に仕事を出来るスキルをアピールしましょう。

【職種③】SE

 SE(システムエンジニア)の中途採用では、スキルが重要視されています。そのため、「③自己PR」で「プログラム言語はC言語、JAVA、SQLの経験がありJAVAを利用したWEBアプリケーションを最も得意としています」といったように、具体的にどのようなスキルを持っているかを伝えるようにしましょう。

【職種④】看護士

 看護士の中途採用については、経験が重要視される場合が多いです。

 よって、「②職務経歴」で「〇〇病院の循環器科病棟で6年間勤務し、主に新人教育に関わる役割を頂いておりました」といったように、看護士として経験してきた内容を必ず述べましょう。

【職種⑤】保育士

 保育園は、それぞれ力を入れている内容が異なります。そのため、応募する保育園のカラーに合う「④志望理由」を述べることが肝心です。

 例えば、音楽や踊りの力を入れている保育園であれば、「私は幼少期からダンスをしていて、踊ることや振り付けを考えることが得意なため、音楽や踊りに力を入れていらっしゃる貴園で、私の特技を活かしたいと思っております。」と述べると、説得力が増すでしょう。

 

動画で「自己紹介のやり方」を学べる

 自己紹介のやり方は動画で学ぶことも出来ます。インターネットで「転職 面接 自己紹介 動画」と検索をかけると、様々な動画が出てきます。
 面接本番前に、スマホ等で最終チェックする意味で動画を活用するのも一手と言えるでしょう。

 

終わりに

 冒頭で聞かれることが多い自己紹介は、応募者の印象を決定付ける大きな要素になっています。“初めよければ終わりよし”という言葉もある通り、面接の冒頭からよいスタートを切れば、よい結果も期待出来るでしょう。

 ぜひ、本記事の「自己紹介ノウハウ」を参考に、面接に臨んでみてください。

 また、転職活動をスムーズに進めるためには、退職時の手続きも重要です。退職後に必要な「離職票」の発行や手続きについて詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

離職票とは?発行・受け取りの手続きをまとめて解説カケコム(事業対象:法律 事務所:東京都港区六本木5-9-20)

 さらに、面接は自己紹介だけでなくマナーも合否に影響します。面接マナーについてはこちらの記事「面接の合否はマナーで9割決まる」で詳しく解説をしています。併せてご覧ください。