転職を検討している職種の年収が気になる方は多いのではないでしょうか。その中でも特に、資格を取得しないと就くことが出来ない職種の年収は、気になるでしょう。
社労士(社会保険労務士)もその1つに当たります。しかし、社労士は資格を取得しないとなれないわりに年収が低い、とまことしやかに言われています。
果たして、本当に社労士の年収は低いのでしょうか。本記事では、その実態に迫っていきます。
社労士の仕事内容
社労士(社会保険労務士)とは、企業を構成する経営資源である「人・物・金」のうち、「人」に関する部分を担当するスペシャリストを指します。
主に、以下のことを仕事にしています。
・労働関連や社会保障に基づいた書類の作成
・企業からの労務関係・社会保険に関する相談
・給与計算、労働頬検量の加入手続き等
社労士の平均年収
2016年に厚生労働省が行った賃金構造基本統計調査によると、社労士の平均年収は、『527万円』(『http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html』)というデータが出ています。
一般労働者の平均年収が364.8万円(厚生労働者が発表している一般労働者の平均月収『30.4万円』[『http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2016/dl/01.pdf』]×12ヶ月して算出した数値)であることから、賞与等を足したとしても一般の平均年収より高いと言えるでしょう。
働き方別の年収
では、なぜ社労士の年収は低いと言われているのでしょうか。それは、働き方によって社労士の年収は低くなるケースがあるためです。社労士の働き方は、大きく「社労士事務所勤務」「一般企業勤務」「独立開業」の3つに分けられます。それぞれの年収をみていきましょう。
社労士事務所勤務
社労士事務所に勤務する社労士は、士業JOBによると『400~650万円』(『https://shigyou-job.jp/2017/11/05/172/』)の方が多いようです。年収に振り幅があるのは、事務所の規模等によって、年収に差があることが考えられるためです。
一般企業勤務
企業で勤務する場合、社労士として採用されることは少なく、あくまで一般の従業員として採用されることが多いです。そのため、既出の364.8万円(賞与を含まない場合)が平均年収と言えるでしょう。
但し、社労士資格を持っていると別途「資格手当」が支給される場合もあります。そのため、一般労働者の平均年収より若干多くなることが考えられます。
独立開業する場合
独立して事務所を開業する社労士は、初めの1~2年は顧客との関係を一から作っていかなければならないため、年収は100~200万円と少ないです。これが「社労士の年収は低い」と言われる所以かもしれません。
しかし、顧客が増えるれば年収はアップします。いずれは年収1,000万円を超える社労士も珍しくありません。最も年収に幅があるのが、独立開業の社労士なのです。
その他の働き方の年収
社労士は、上記で挙げた働き方の他に、社労士法人・年金事務所での勤務や社労士予備校の講師もあります。
あらゆる職業の平均年収データを公表している「平均年収.JP」では、それらの働き方の推定年収を以下のように算出しています。
社労士講師…650万円~
社労士法人勤務…450万円~
年金事務所勤務…400万円~
開業社労士…650万円~
引用元:http://heikinnenshu.jp/shi/sharou.html#chapter7
社労士法人や年金事務所で働く社労士の推定年収は、一般企業や社労士事務所で勤務する年収と大きな違いがないことがうかがえます。
また、社労士講師は開業社労士と同じ推定年収であるため、比較的、高収入が期待出来るでしょう。
性別・年齢・地域別の平均年収
さらに、「平均年収.JP」では、性別・年齢・地域別の年収の違いを公表しています。併せて見ていきましょう。
◆男女別
性別 | 平均年収 |
男性 | 777.2万円 |
女性 | 556.1万円 |
引用元:http://heikinnenshu.jp/shi/sharou.html#chapter5
女性より男性の方が、年収が高い傾向にあることがうかがえます。
◆年齢別
年齢 | 年収 |
20~24歳 | 381.9万円 |
25~29歳 | 425.7~475.7万円 |
30~34歳 | 422.6~522.6万円 |
35~39歳 | 492.3~596.3万円 |
40~44歳 | 549.0~670.0万円 |
45~49歳 | 628.4~750.4万円 |
50~54歳 | 694.0~804.0万円 |
55~59歳 | 687.3~797.3万円 |
60~65歳 | 442.7~797.3万円 |
引用元:http://heikinnenshu.jp/shi/sharou.html#chapter5
20代が比較的低く、50代が一番高い傾向になることを読み取ることが出来ます。
◆地域別
都道府県 | 平均年収 |
北海道 | 603.0万円 |
青森 | 536.0万円 |
岩手 | 603.0万円 |
宮城 | 670.0万円 |
秋田 | 536.0万円 |
山形 | 603.0万円 |
福島 | 603.0万円 |
茨城 | 670.0万円 |
栃木 | 670.0万円 |
群馬 | 670.0万円 |
埼玉 | 603.0万円 |
千葉 | 670.0万円 |
東京 | 938.0万円 |
神奈川 | 737.0万円 |
新潟 | 603.0万円 |
富山 | 603.0万円 |
石川 | 670.0万円 |
福井 | 670.0万円 |
山梨 | 603.0万円 |
長野 | 670.0万円 |
岐阜 | 603.0万円 |
静岡 | 670.0万円 |
愛知 | 737.0万円 |
三重 | 670.0万円 |
滋賀 | 670.0万円 |
京都 | 670.0万円 |
京都 | 670.0万円 |
大阪 | 804.0万円 |
兵庫 | 670.0万円 |
奈良 | 670.0万円 |
和歌山 | 603.0万円 |
鳥取 | 603.0万円 |
島根 | 603.0万円 |
岡山 | 670.0万円 |
広島 | 670.0万円 |
山口 | 670.0万円 |
徳島 | 670.0万円 |
香川 | 603.0万円 |
愛媛 | 603.0万円 |
高知 | 603.0万円 |
福岡 | 670.0万円 |
佐賀 | 536.0万円 |
長崎 | 603.0万円 |
熊本 | 603.0万円 |
大分 | 603.0万円 |
宮崎 | 536.0万円 |
鹿児島 | 603.0万円 |
沖縄 | 536.0万円 |
引用元:http://heikinnenshu.jp/shi/sharou.html#chapter5
500~600万円台が多い中で、700万円を超えるのは東京都、神奈川県、愛知県、大阪府に限られます。したがって、地方より都市部の方が、年収が高い傾向にあると言えるでしょう。
社労士の現実
社労士は、税理士や公認会計士等の難関国家資格と比較して、年収が低いのが現実です。
税理士と公認会計士それぞれの年収データはありませんが、両者を合算した平均年収が賃金構造基本統計調査にて発表されています。2015年の調査によると『平均717万円』(『http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html』)となっています。
社労士のみの平均年収より190万円も高い結果が出ています。
この結果からも分かるように、社労士は、社労士業務のみで独立開業することは難しいとも言えます。そのため、行政書士等の他の資格を取得してダブルライセンス(複数の資格を持つこと)で生計を立てている社労士は少なくありません。
社労士と行政書士のダブルライセンス
行政書士は、社会保険労務士と同様、各種申請手続に携われる仕事です。社労士が労働保険や社会保険の手続に関わる書類作成を扱うのに対して、行政書士は、官公署(各省庁・都道府県庁・市区役所・町村役場・警察署等)に提出する書類の作成や提出代理、契約書の作成、離婚や相続に関する書類の作成等を扱います。
それぞれ業務が異なるため、行政書士とのダブルライセンスによって、幅広い業務を担当することが出来ます。
社労士と司法書士のダブルライセンス
司法書士の資格を取得して、ダブルライセンスで働く社労士もいます。
司法書士は行政書士と同様、書類作成がメインです。司法書士は、会社を設立する際の商業登記や不動産登記等の代行業務をメインに行っています。
そのため、司法書士の資格を取得し、ダブルライセンスで業務の幅を広げることによって、年収アップが期待出来ます。
社労士と中小企業診断士のダブルライセンス
中小企業診断士は、中小企業の経営コンサルティングをすることが主な業務です。企業が成長するための戦略をアドバイスし、経営計画や経営環境の変化に伴って支援をします。
ダブルライセンスにすることによって年収アップだけでなく、中小企業診断士の経験を社労士のコンサルティング業務に活かすことが期待出来ます。
社労士と特定社労士のダブルライセンス
特定社会保険労務士とは、社労士の業務に加え、紛争解決手続代理業務を行うことが出来る資格をいいます。
紛争解決手続代理業務とは、例えば、従業員と企業の間で労働に関する問題が発生した際、両者の間に入って、あっせんや調停、仲裁等、裁判等を代理で行うことを指します。
特定社会保険労務士になるには、社労士資格を取得したうえで、「紛争解決手続代理業務試験」に合格する必要があります。
社労士の年収の実態を知ることが可能なサイト
また、様々な方法で社労士の年収をリサーチすることも出来ます。インターネットで以下のように検索をかけると見ることが出来ます。
「社労士 年収 ブログ」
「社労士 年収 知恵袋」
「社労士 年収 2ch」
実際に、社労士として働いた経験がある方等からの生の声を聞くことが出来るでしょう。
転職を考えている方
本記事の通り、社労士試験の向けた勉強をしながら総務や人事の仕事を勤めたい人もいるでしょう。求人方法は以下の方法等で探すことが出来ます。
企業のサイトをチェック
企業によっては、サイトで求人募集をしているところもあります。
SEEK
当サイトSEEKでも求人があります。スカウト等の便利機能もあるので、あなたに合った求人を探す手助けになってくれるでしょう。
まとめ
社労士の資格を取得するのは難しいですが、業務範囲が狭いことから、他の難関資格より年収が比較的低いとも言えます。
しかし、他の資格を取得する等して、業務範囲を広げることで年収アップも期待出来ます。また、社労士資格を持った従業員として、その知識やスキルを総務・人事部等のバックオフィス業務でいかんなく発揮し、収入のプラスアルファとして資格手当をもらっている労働者も存在します。
社労士資格を持っている方も、これから資格取得しようとしている方も本記事を参考にあなたに合った年収アップを目指してみてはいかがでしょうか。