法曹になるための最後関門は、司法試験ではなく司法修習生考試です。
司法修習生考試は、いわゆる試験とは異なり特有なため、試験内容や実施方法が分からないという方は少なくありません。
本記事では、司法修習生考試の試験科目や合格率等の概要について紹介していきたいと思います。
司法修習生考試とは
司法修習生考試とは、司法試験に合格後、司法修習所で法律実務を学んだ司法修習生が受ける試験のことをいいます。司法修習生考試は、司法試験に次いで受ける2つ目の試験であることから、別称「二回試験」と呼ばれています。
弁護士や裁判官、検事官、検察官といった法曹を目指す人の最終関門である司法修習生考試は、ハードスケジュールの中実施されるうえに、問題も難解のため、難易度は非常に高いです。
司法修習生考試の概要
司法修習生考試験の概要は、以下の通りです。
①実施時期
例年11月下旬に、5日間にわたり実施されます。
②試験科目
「民事裁判」「刑事裁判」「検察」「民事弁護」「刑事弁護」の5科目試験です。
③出題範囲
出題範囲は公表されていません。但し、司法試験の同じように、法律上の問題点を論じる内容から出題されることが分かっています。
事実認定上の問題、判決書の作成等、司法修習で学んだことを活かす問題が出されるでしょう。
④試験時間
試験は、1日1科目、5日間連続の日程で実施されます。1科目につき、7時間半の解答時間が設けられています。試験時間は5日間トータルで37時間半の長丁場です。
そのため、厳しいスケジュールの中で試験を受けなければなりません。体調管理も試験対策のひとつです。
⑤受験資格
司法修習生考試は、司法試験に合格後、司法修習生として、導入修習と分野別実務修習を経て、埼玉県和光市にある司法研修所で実施される集合修習を履修することで受験することが可能です。
集合修習では、民事裁判、刑事裁判、検察、刑事弁護、民事弁護、それぞれの起案・解説や、裁判演習等、本格的な実務研修が行われます。
⑥合格基準
司法修習生考試は、優・良・可・不可の4段階評価で採点が行なわれ、全科目が可以上で合格です。
不可が1科目以上あると、不合格判定になります。
⑦合格率
70~72期(2016~2018年度)の司法修習生考試の応試者(受験者)・不合格者・合格者数・合格率は以下の通りです。
応試者 | 不合格者 | 合格者 | 合格率 | |
70期(2016年度) | 1,527人 | 15人 | 1,512人 | 99% |
71期(2017年度) | 1,517人 | 15人 | 1,502人 | 99% |
72期(2018年度) | 1,479人 | 7人 | 1,472人 | 99.5% |
参考元:https://yamanaka-bengoshi.jp/2019/07/26/nikaishiken-hugoukaku-kazu-ritsu/
例年、99%以上の応試者が司法修習考試に合格しています。とはいえ、決して試験内容は簡単ではありません。「これに落ちれば法曹採用が1年延長される」という危機感から、万全の準備をして試験に臨んでいる結果とも言えるでしょう。
⑧合格発表の時期
司法修習生考試は、合格率が高いため、合格者発表ではなく、不合格者発表が行われます。
不合格者発表は、例年12月中旬に行われます。裁判所のホームページの「司法研修所」からリンクが貼られた「司法修習生考試の結果について」で、不合格者の受験番号が掲載されます。
不合格者と再試
司法修習生考試が不合格になった人が再試を受けるためには、改めて1年に及ぶ司法修習を履修しなければならないのでしょうか。
69期(2015年度)以降、不合格者は、司法修習は罷免されたうえで、次年の11月頃実施される司法修習生考試を受験できます。但し、再試は全科目を受けなければなりません。そして、全科目を可以上の評価を取られれば合格になります。
なお、以前は、1科目のみ不可判定を受けた応試者は、不合格ではなく合格留保者という扱いでした。合格留保者は、数ヶ月後に実施される追試で、不可科目のみを受験し可以上の判定を受ければ、司法修習生考試の合格認定をもらえました。
司法修習生考試の参考書・問題集
試験には、必ずと言っていいほど参考書や問題集等の対策本が用意されています。しかし、司法修習生考試には対策本が存在しません。 というのも、司法修習生考試の受験資格にもなる司法修習自体が、試験対策になるためです。司法修習生考試の参考書や問題集を販売しても、ニーズがないのかもしれません。