弁護士が転職を検討する際、職務経歴書は自分の経歴やスキルをアピールするうえで欠かせない存在です。これまでどのような事務所や企業で、どんな案件に携わってきたのかを明確にまとめることで、自身の価値を的確に伝えられます。

しかし、単に職歴を羅列するだけでは、採用担当者や事務所のパートナーに強く印象付けることは難しいものです。経験の背景や得意分野、成果につながった事例などを、読み手が理解しやすい形で示す必要があります。

この記事では、転職活動を成功に導くための職務経歴書作成のポイントや、準備段階で整理しておきたい情報についてプロの視点から詳しく解説します。

 

職務経歴書作成前にすること

転職活動を本格的に始める前に、スムーズに書類準備を進められる下準備をしておきましょう。

弁護士として日々多忙に業務をこなすなかで、自分が実際にどのようなスキルを身につけてきたのか、一度整理しておくことが大切です。特に転職先が法律事務所か企業かによって、求められる能力や志望動機の方向性にも違いが生まれます。

まずは、これまで取り組んできた案件の種類やクライアントとの関わり方、得意とする分野といった要素をリストアップしましょう。顧客ニーズを満たすうえで発揮したスキルや業務実績を振り返ることで、職務経歴書の記載内容を充実させる準備が進みます。

また、転職理由や今後のキャリアビジョンを明確にしておくことも重要です。単に“違う職場を探す”というスタンスではなく、キャリアアップや専門性の活用など自分の長期的なゴールがあれば、それを活かせる書類作りが可能になります。

 

【作業①】スキルの棚卸し

これまでに扱った案件や専門分野を改めて洗い出し、自分が得意としている分野を確認しましょう。例えば企業法務や知財、国際案件など、専門性をアピールできそうな領域があれば一覧にまとめることが大切です。

スキルを言語化するときは、事務所の規模や取り扱った案件の金額規模、交渉力・語学力など、具体的な数字や指標を挙げて説得力を高めましょう。新しい業務を通じて身に付けた経験も積極的に整理することで、第3者にも強みを分かりやすく伝えられます。

こうした棚卸しは職務経歴書だけでなく、面接でも役立ちます。自分の“強み”を明確にしておけば、どんな質問が来てもスムーズに対応しやすくなり、転職活動全般が効率的に進むでしょう。

【作業②】キャリアプランの明確化

キャリアプランの明確化とは、将来どのような弁護士像を描き、それに向けて何を強化すべきかを洗い出す作業です。転職理由を“今の環境が合わないから”で終わらせず、次のステップでどんな活躍をしたいのかを自問してみましょう。

例えば、企業内弁護士として事業に深く関わりたいのか、それとも専門分野を極めて法律事務所でのクライアント対応に集中したいのか、志向性は人によって異なります。方向性が明確になると、職務経歴書でどの実績を強調すべきかが見えてきます。

また、キャリアプランをしっかり立てておくことで、採用側にも“入社後のビジョン”を明確に伝えられます。漠然とした志望ではなく、将来的な成長のシナリオを含めて示すことで説得力を高めましょう。

【作業③】企業と法律事務所どちらに転職するかを決定する

弁護士の転職先としては、従来の法律事務所のほか、企業法務部門や各種コンサルティングファームなど、多様な選択肢があります。どちらを選ぶかによって、職務経歴書のアピールポイントや書き方にも変化が生じます。

法律事務所を志望する場合は、訴訟対応や法律相談、専門領域における実績を詳細に示すことが効果的です。一方、企業の法務担当としてキャリアを歩みたい場合は、事業への貢献度やリスクマネジメント、経営目線のアプローチが求められます。

自分に合った方向を決めるためには、転職エージェントや先輩弁護士などの意見を参考にすると良いでしょう。早い段階で迷いを解消し、応募先に合わせた効果的な職務経歴書を作成してください。

 

ポイントを押さえて職務経歴書を作成する

採用担当者に魅力を伝えるためには、読みやすさや具体性を意識した職務経歴書が欠かせません。

職務経歴書では、最初に要約部分を設けて自分の強みや経歴を端的にまとめると好印象です。読み手が全体像を掴みやすくなり、興味を持って詳細に目を通してくれやすくなります。

次に、職務経歴は新しい順に時系列で整理し、携わった案件や業務の内容、成果や役割を具体的に示すことが大切です。法律事務所の場合は、手掛けた案件の種類や特徴、企業の場合は事業規模や業務改善への寄与など、アピールポイントを明確にしましょう。

また、弁護士として欠かせない資格や習得スキル(語学力や数値で定量化できる実績など)があれば、漏れなく記入してください。読み手が“この弁護士はどんな場面で力を発揮できるのか”をイメージしやすいよう、具体的な事例を挙げるのも効果的です。

最後に、自己PR部分では“入社後にどのような貢献が可能か”を意識してまとめると説得力が高まります。過去の経験だけでなく、今後の成長性や会社・事務所への相乗効果をしっかりアピールしてください。

 

まとめ

事前準備と書類作成のポイントを押さえることで、弁護士のキャリアをより充実したものにするチャンスが広がります。

まずは職務経歴書作成の前段階として、自身のスキルやキャリアプランを整理することが重要です。そのうえで、企業か法律事務所かを明確に選択すれば、アピールすべきポイントを絞り込めます。

次に、要約表現や具体的な実績の記載など、採用担当者にとって読みやすく魅力が伝わる書き方を心がけましょう。新しい職場では、これまでの経験がどう活かせるかを示すことで、書類選考の通過率にも良い影響が期待できます。

最後に、専門のエージェントや周囲の指導を活用しながら、緻密な戦略をもって転職活動を進めることをおすすめします。職務経歴書をうまく作成し、弁護士として新たなキャリアを切り開いていきましょう。