今回は弁護士のなるために受験する予備試験について深掘りしていきます。
予備試験とは
予備試験とは、「法科大学院修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的要素を有するかどうかを判定する(司法試験法第5条)」試験のことをいいます。
司法試験を受検するためには、法科大学院を修了しなければなりません。ですが、予備試験に合格することで、法科大学院を修了せずに司法試験の受験資格を得られます。
予備試験の内容
それでは、予備試験の内容を見てみましょう。
受験資格
受験資格は設けられていません。学歴関係なく誰もが予備試験を受検することが可能です。中卒の方でも高校生でも受験出来ます。
日程・科目
予備試験は、「短答式」「論文式」「口述」の3つの試験に分かれています。短答式試験に合格すると論文式試験へ、論文式試験に合格すると口述式試験へ、といったように段階式になっています。
予備試験は年に1回、以下の日程・科目で実施されます。
短答式試験 | 論文式試験 | 口述式試験 | |
実施時期 | 5月中旬頃 | 7月頃 | 10月頃 |
科目 |
●法律基本科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法) ●一般教養科目(人文科学、社会科学、自然科学、英語) |
●法律基本科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法) ●法律実務基礎科目(民事訴訟実務、刑事訴訟実務及び法曹倫理) ●一般教養科目(人文科学、社会科学、自然科学) |
●法律実務基礎科目(民事、刑事) |
それぞれの試験の特徴は以下の通りです。
短答式試験
短答式試験は、マークシート方式(選択式)の試験です。
幅広く基礎的な知識・理論を正確に身につけているかどうかを問われます。重要なポイントや判例をしっかり押さえておくことが大切です。
論文式試験
論文式試験は、論述で解答する試験です。A4用紙4枚分に渡って論述しなければならないため、圧倒的に解答する量が多いです。
基礎事項を深く理解し、それを正確に回答に反映させられるかどうかが合否にカギを握っています。
論文式の問題に慣れていることが大切です。
口述式試験
口述式試験は試験管2名の前で、口頭で問題を出題されます。それを口頭で解答しなければなりません。
合格率
予備試験の合格率は、以下の通り例年3~4%で推移しています。極めて合格率が低い試験であることが分かるでしょう。
【予備試験の合格率】
年度 | 合格率 |
平成30年 | 3.9% |
平成29年 | 4.1% |
平成28年 | 3.8% |
平成27年 | 3.8% |
難易度
予備試験の難易度をそれぞれの試験ごとに見ていきましょう。
短答式試験の難易度
短答式試験は、合格率が毎年20%前後です。合格率通り難易度も高いです。とりわけ難しいのが一般教養科目です。人分科学や自然科学、社会科学について問われます。大学受験における、国語や数学、日本史、倫理等の知識が求められるため、試験範囲が非常に幅広いのです。
論文式試験の難易度
論文式試験の難易度は近年、下降傾向にあります。というのも、論文式試験の合格率は下記のように年々増加しています。
年度 | 合格率 |
平成23年度 | 9.5% |
平成24年度 | 14% |
平成25年度 | 19.8% |
平成29年度 | 21.4% |
しかしこれ以上、合格率は上昇しないと考えられています。論文式試験は法律基本科目も一般教養科目も高度な表現能力が求められるためです。
これ以上合格率が上がらないと考えられることや、高度な表現能力が求められることから、難易度は高いことに変わりはないと言えるでしょう。
口述式試験の難易度
口述試験は、毎年約5%の受験生しか不合格になりません。ですので、合格率を見る限りでは、短答式試験と論文式試験ほど難易度は高くないと言えるでしょう。
ただし口述式試験は、短答式試験と論文式試験を突破しないと臨めません。合格率が高くても脇を引き締めて臨んだ方がよいでしょう。
どんな人が受験している?
さて、受験資格が設けられていない予備試験はどのような人たちが受験しているのでしょうか。
現在、予備試験の実受験者数は11,000人で推移しています。その内訳は下記のようになっています。
大学在学中 | 約2,900人 |
法科大学院在学中 | 約1,700人 |
大学卒業 | 約3,700人 |
法科大学院卒業 | 約800人 |
その他(社会人等) | 約1,200人 |
学生の受験者数は4,600人程度(大学在学中+法科大学院在学中の合計)に対し、社会人の受験者数は5,700人程度です。学生より社会人が多く受験している試験と言えるでしょう。
働きながら受験をする社会人が多いことが見て取れます。
予備試験を受検するメリット
ここからは、予備試験を受検するメリットについてお伝えいたします。
【メリット①】法科大学院ルートよりも2年早く実務に就ける
上記画像の通り、弁護士になるには法科大学院ルートと予備試験ルートがあります。
法科大学院は最短2年間の通学が必要になります。一方、予備試験は合格さえすれば司法試験を受検出来ます。そのため、2年は早く実務に就けるのです。
【メリット②】費用が安く済む
法科大学院ルートでは、法科大学院の入学金や学費等で年間100万円以上の出費が予想されます。一方、予備試験ルートでかかる費用は予備試験の受験料、28,000円のみです。
結果、予備試験ルートは法科大学院ルートより約500万円も費用が安く済むのです。
【メリット③】司法試験に強い
予備試験に合格すると司法試験も合格しやすい傾向にあります。それは、予備試験の短答式試験と司法試験の短答式試験の問題が7割も共通しているためです。
2018年の出身別の司法試験合格率ランキングを見てみると、下記のように予備試験ルートを通った受験者が最も合格率が高いのです。
順位 | 出身 | 合格率 |
1 | 予備試験合格者 | 77.6% |
2 | 一橋大学法科大学院 | 59.5% |
3 | 京都大学法科大学院 | 59.3% |
4 | 東京大学法科大学院 | 48.0% |
5 | 神戸大学法化大学院 | 39.5% |
6 | 慶応義塾大学法科大学院 | 39.2% |
【メリット④】就職活動に強い
予備試験の合格者は就職に強いと考えられています。
予備試験の最終合格発表後の時期には、各法律事務所が予備試験合格者を対象に就職説明会を実施しています。まだ司法試験を受験していないに人に対して実施する姿勢に、予備試験合格者への評価の高さがうかがええます。
また、予備試験出身者は就職活動をする時点で、予備試験と司法試験の2つの関門を通過していることになります。それが、採用者にとって安心感に繋がるのです。そういった点が、予備試験合格者が就職活動に強いと考えられている理由なのかもしれません。
勉強法
予備試験はどのような勉強をすればよいのでしょうか。「これから勉強をスタートする方」「過去に勉強経験がある方」に分けて見ていきましょう。
これから勉強をスタートする方
これから予備試験の勉強をスタートする方は、何から手をつけてよいか迷うことでしょう。
まずは、テキスト等を利用して基礎と応用を何度も繰り返しながら勉強をしていきましょう。
過去に勉強経験がある方
過去に予備試験の学習経験がある方は、毎年更新される出題形式と判例をチェックしましょう。チェックした後は、再度基礎から勉強をしていきましょう。