弁護士の中には、どういった弁護士事務所に転職するのがよいのか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 弁護士事務所は、それぞれ強みにしていることが異なります。企業法務をメインに扱う事務所があれば、一般民事を得意とする事務所もあります。

 ここでは、一般民事に強い弁護士事務所に転職をすると、何の仕事に従事し、どういったやりがいを感じ、どのような将来を目指していけるのか、についてご紹介します。「転職したらイメージと違った」と後悔することのないよう、知っていただきたい情報です。

 

一般民事とは

 一般民事のついて知るためには、まず“民事事件”について触れる必要があります。
 民事事件とは、私人(個人や法人)と私人の間で起きたトラブルのことを言います。代表的なものに以下が挙げられるでしょう。

①離婚

 離婚には「離婚時に慰謝料を請求したい」「財産分与請求したい(婚姻中に夫婦で協力してつくりあげた財産をどう分けるか)」等があります。
 また、子の親権や教育費等の問題も挙げられます。

②交通事故

 交通事故が起こると「保険会社の条件提示に納得いかない」等のトラブルが生じます。交通事故によって発生したそれらの相談案件を弁護士が対処します。

③労働関連

 企業に勤務する労働者からの未払い残業代や不当解雇等、労働に関連する民事事件もあります。パワハラやセクハラなど、働くうえでの悩み相談も含まれるのです。

④借金

 借金の返済が出来なくて困っている方の相談や、高金利で取引していた期間が長い方からの過払い金に関するトラブルも民事事件の代表例です。借金トラブルの中には、友達や知り合いに貸したお金を返してもらえない等、個人間の問題も含まれます。

 

一般民事弁護士の仕事内容は

 幅広い案件を担当する一般民事弁護士は、次のような仕事をこなします。

法律相談

 一般民事弁護士は、トラブルを抱えている人の話を聞き、法的な面から解決に導くアドバイスをします。弁護士が代理人となって法的手続きをとることを相談者が希望する場合は、案件を受任します。
 なお、自治体や弁護士会等が行っている無料法律相談を担当することも、一般民事弁護士の仕事です。

裁判関連

 裁判に向けた法的手続も一般民事弁護士の役目です。裁判所に提出する書類を作成したり、依頼者と打合せをして書面に載せる主張や反論の内容を決めたり等を行います。
 裁判には弁護士が出廷しますが、所要時間は10分程度で終わることが多いです。

 裁判外での交渉

 解決方法は裁判だけではありません。相手方と直接交渉で紛争を解決していくことも弁護士としての務めです。例えば、内容証明郵便で通知書等を送ったうえで相手方と話し合いの機会をもつ等が挙げられます。

・内容証明郵便

「誰が、誰宛てに、いつ、どんな内容の書類を出したいのか」ということを郵便局が公的に証明する郵便です。

1.書類を出したこと

2.書類を出した日付

3.書類の内容

を郵便局が証明してくれます。

 

【内容証明郵便の例】

AさんはBさんに10万円貸しました。この時、「1年以内に返すように」という約束をしました。しかし1年経ってもBさんから返済はありませんでした。

 

そこで、Aさんは弁護士に相談し、返済を催促する内容証明郵便をBさんに送りました。

 

一般民事弁護士の魅力とやりがい

 さて、一般民事の仕事にはどのようなやりがいや魅力があるのでしょうか。一般民事に強い弁護士事務所への転職を考えている方にとって、このテーマは把握しておきたい内容でしょう。

 主に、「依頼者に喜んでもらえる」「様々な案件を経験出来る」「高度な専門知識を活かした社会貢献」「独立しやすい」が挙げられます。個別にみていきましょう。

依頼者に喜んでもらえる

 一般民事弁護士に依頼する方は、企業ではなく個人のお客様がほとんどです。

 紛争の渦中にいて不安な思いをしている方も少なくないため、弁護士の介入により問題が解決すると非常に喜んでもらえます。

 また、依頼者に直接感謝されるため、日々の大きなやりがいにつながります。

様々な案件を経験出来る

 一般民事の内容は千差万別で、全く同じ事件はありません。そのため、様々な案件を経験することが出来て、非常に勉強になります。

社会貢献が出来る

 弁護士業務は、法的な専門知識だけでなく、時には交通事故や医療訴訟など、依頼内容に沿った知識も必要になります。

 身につけたこれらの知識は、困っている人の役に立ち、ひいては社会貢献につながるのです。

 独立しやすい

 一般民事弁護士は独立しやすいのが特徴です。というのも、幅広い案件を処理していく中で、様々なことを自身でこなしていく知識やキャリアが身につくためです。

 

人と関わることが好きな方におすすめの「一般民事弁護士」

 では、一般民事弁護士に向いているのは、どのような人なのでしょうか。

 民事事件には、金銭トラブルや人間関係のもつれ等、人の感情が大きく影響する案件が多くあります。ときには、人間のドロドロした部分にまで介入しなくてはなりません。

 そのような事態にもサジを投げず、相談者の気持ちに寄り添って業務を行うことが、一般民事弁護士には求められています。
 そのため、人と関わることが好きな人が一般民事弁護士には向いていると言えるでしょう。

 

一般民事弁護士が目指せる将来

 一般民事弁護士としての経験を積むと、その後のキャリアとして次のような将来を目指せることが期待出来ます。

パートナーへの昇格

 事務所で経験を積むことにより、パートナーへ昇格出来るケースがあります。パートナーになると任せられる業務の幅が増え、収入も増えることが期待出来ます。

・パートナーとは

 法律事務所の経営や管理に関わっている弁護士のことを指します。一般企業に例えると、役員に当たります。

独立して自分の事務所を開業

 パートナーになると、経営についてのノウハウを学ぶことが出来ます。その経験は、独立して事務所の開業を目指している方にとっての手助けになってくれるでしょう。

他の事務所に転職

 経験を積むと、他の法律事務所へ転職することも可能です。好条件の事務所や自身の得意分野を活かせる事務所へ転職することのより、より充実した環境で働くことが出来るようになります。

企業に転職

 幅広い案件に関わってきたことによって、企業に転職することも期待出来ます。企業内弁護士(インハウスロイヤー)として企業法務に従事することが可能になるでしょう。

 

まとめ

 一般民事弁護士は、個人の方を相手にすることが多い仕事です。依頼者と直接関わるため、人と関わることが好きな方にとっては、一般民事弁護士はおすすめと言えるでしょう。

 “人と関わる”ことにやりがいを感じる弁護士の方はぜひ本記事を参考に、一般民事に強い法律事務所への転職を検討してみてはいかがでしょうか。