試験を受けるかどうかを決める際、合格率は判断材料にする人は少なくないのではないでしょうか。とりわけ、士業の資格試験を受ける方は、合格率が気になるのではないでしょうか。
 本記事では、行政書士試験の合格率について深堀りをしていきたいと思います。

 

年度別の合格率

 行政書士試験の過去の合格率を年度別に見ていきましょう。

年度

受験者数

合格者数

合格率

2019年(令和元年)

39,821

4,571

11.5

2018年(平成30年)

39,105

4,968

12.7

2017年(平成29年)

40,449

6,360

15.7

2016年(平成28年)

41,053

4,084

9.95

2015年(平成27年)

44,366

5,820

13.12

2014年(平成26年)

48,869

4,043

8.27

2013年(平成25年)

55,436

5,597

10.10

2012年(平成24年)

59,948

5,508

9.19

2011年(平成23年)

66,297

5,337

8.05

2010年(平成22年)

70,586

4,662

6.6

2009年(平成21年)

67,348

6,095

9.1

2008年(平成20年)

63,907

4,133

6.47%

2007年(平成19年)

65,157

5,631

8.64%

2006年(平成18年)

70,713

3,385

4.79%

2005年(平成17年)

74,762

1,961

2.62%

2004年(平成16年)

78,683

4,196

5.33%

2003年(平成15年)

81,242

2,345

2.89%

2002年(平成14年)

67,040

12,894

19.23%

2001年(平成13年)

61,065

6,691

10.96%

2000年(平成12年)

44,446

3,558

8.01%

1999年(平成11年)

34,742

1,489

4.29%

1998年(平成10年)

33,408

1,956

5.85%

1997年(平成9年)

33,957

2,902

8.55%

1996年(平成8年)

36,655

2,240

6.11%

1995年(平成7年)

39,438

3,681

9.33%

1994年(平成6年)

39,781

1,806

4.54%

1993年(平成5年)

35,581

3,434

9.65%

1992年(平成4年)

30,446

2,861

9.40%

1991年(平成3年)

26,228

3,092

11.79%

1990年(平成2年)

22,406

2,480

11.07%

1989年(平成元年)

21,167

2,672

12.62%

引用元:https://xn--8prp7ir4movbm4b782hycdjp5b.com/goukakuritu/

 行政書士試験は、昭和の終わり頃までは各都道府県で実施されていたため、国家試験ではなかったと言われています。そのため、試験の日程や出題内容は各都道府県で異なっていました。

 また、現在よりも難易度は低く、合格率は数十%という時代だったため、行政書士試験は誰でも合格できる、というイメージを持っている方が多かったそうです。

 しかしその後、行政書士試験は国家資格になり、全国統一で実施されるようになります。
 平成以降の行政書士試験は、5%前後の低い合格率の年度がありますが、直近9年は10%前後で推移しています。合格率だけを見ると、合格率3%程度の司法書士試験に次ぐ難関試験になっています。
 また、行政法の出題ミスにより全員に配点したことや試験制度が改正されたこと等が影響して、合格率が極端に低い年度があります。

 受験者数に目を向けてむると、増えている時期があります。これは行政書士事務所を舞台にした「カバチタレ!」の連載がスタートしたりドラマ化されたり等が影響していると考えられます。平成11年から週刊モーニングで連載が開始さ平成13年度にはドラマ版「カバチタレ!」が放送され、平成15年度をピークにして飛躍的に受験者が伸びたのです。

 

過去10年の合格率の推移

 過去10年の行政書士試験の合格率の推移を見てみると、上がったり下がったりを繰り返しています。行政書士試験は、合格基準点によって合否を決定する絶対評価制にも関わらず、なぜ毎年、合格率が変動するのでしょうか。
 それは、年度によって難易度が異なるためと考えられます。

 そのことから、受験生の間では、合格率が高い年のことを「当たり年」と呼んでいます。  直近10年は、年々受験者数が右肩下がりになっている一方で、合格率は右肩上がりになっています。これは何を表しているのでしょうか。試験対策が不十分でとりあえず受験する受験生が減り、しっかり準備を進めている受験生の割合が増えていると予想されています。  昔のイメージが一掃され、しっかり準備しないと受からないというイメージが定着している証拠とも言えるかもしれません。

 

合格率が低い理由

 現在の行政書士試験は、なぜ合格率が低いのでしょうか。以下3つの理由が考えらえます

【理由①】出題内容が難しい

 近年の行政書士試験は、単なる条文の丸暗記だけでは解答出来ない、思考力を問われる内容が増えています。出題内容が難しくなっているのです。

【理由②】合格基準が高く保たれている

 行政書士の資格は、独立・開業を目指す人に特に人気があります。そのため例年、試験の受験者数は、数万人にのぼります。
 他方で、行政書士は、法律を扱う業務の性質上、社会的責任が大きい職業です。ですので、一定の能力水準を担保出来るよう、闇雲に合格者の人数を増やすことは出来ません。
 そのような背景もあり、合格基準が高く保たれ、合格率が低くなっているのです。

【理由③】受験資格がない

 弁護士になるために受ける司法試験は、法科大学院の課程を修了している等の人でないと受験資格がありません。

 しかし、行政書士試験には受験資格がなく、誰でもチャレンジすることが出来ます。
 その間口の広さは、実力を確認するために受験する「お試し受験」や、とりあえず受ける「記念受験」と言われる人等を増加させています。 つまり、受験者の母数に対して合格目的で受験をする人の割合が下がり、合格率が低くなっていると考えられます。

 

合格者の年代

 受験資格がないことも関係して、行政書士試験の合格者の年代は幅広いです。ここで平成30年度の合格者の割合の内訳は下記の通りです。

 

 合格者の約8割が20代から40代です。働き盛りの社会人が、キャリアップや独立開業を目指して受験されていることがうかがい知れます。  なお、平成30年度の合格者の男女割合は、男性74%、女性27%です。

 

合格するために必要な勉強時間

 行政書士試験に合格するために必要な勉強時間は何時間なのでしょうか。
 独学の場合は、1年間で800~1,000時間程度が目安です。つまり、1日2~3時間の勉強時間を確保する必要があるのです。
 学校への通学や通信講座を利用する場合は、効率よく学習が出来るため、500時間程度が目安です。

 

宅建士試験と司法書士試験

 行政書士試験の難易度は、事あるごとに宅建士試験と司法書士試験と比較される傾向があります。
 そこで、行政書士試験、宅建士試験、司法書士試験を合格率から比較していきましょう。  令和元年の合格率は、それぞれ以下の通りです。

試験名

合格率

行政書士試験

11.5

宅建士試験

17.0

司法書士試験

4.4

 宅建士試験の合格率は、行政書士試験より高いです。そのため、宅建士試験より行政書士試験の方が難易度が高いと考えられます。
 一方、司法書士試験の合格率は、行政書士試験より低いです。そのため、行政書士試験より司法書士試験の方が難易度が高いと考えられます。