官公署(各省庁・都道府県・市区役所・町村役場・警察署等)に提出する書類の作成や提出代理、契約書の作成、離婚や相続に関する書類の作成等を生業にしている行政書士。ネット上では、「行政書士の仕事だけでは食えない」という意見を耳にしますが、実際はどうなのでしょうか。
そこで今回は、行政書士の年収の現実に迫っていきます。
行政書士の平均年収
「開業5年の先輩行政書士からアドバイス」というサイトによると、行政書士の平均年収は『611万円』(『http://www.falken2.jp/nensyu.html』)です。
行政書士同様、書類作成業務をメインにしている司法書士の年収は『630万円』(『http://heikinnenshu.jp/shi/shihou.html』)のため、比較するとやや低めです。
行政書士の平均年収が当てにならない
「行政書士の仕事だけでは食えない」と言われていますが、平均年収が611万円と聞くと、“食えない数字”とは言えません。
ではなぜ、「行政書士の仕事だけでは食えない」と言われているのでしょうか。
実は、ごく一部の年収の高い行政書士が、平均年収を大きく引き上げているのです。そのため、現実は、“食えない数字”の行政書士が多いのです。
それを裏付けるデータが、「月間 日本行政」に記載されている、全国行政書士登録者4,477人を対象に行った年間売上の統計調査です。 それによると、行政書士の年間売上は以下のような分布になっています。
【行政書士の年間売上】
・1億円以上0.1%
・1億円未満0.7%
・5,000万円未満0.8%
・4,000万円未満0.8%
・3,000万円未満1.8%
・2,000万円未満5.9%
・1,000万円未満11.0%
・500万円未満75.9%
・未回答4.1%
「1億円未満」から「500万円未満」まで幅広いです。
年間売上が500万円未満の場合、経費や借入金を差し引くと、年収は300万円未満と予想されます。
「500万円未満」の方は75.9%です。つまり約4人中3人の行政書士が、年収300万円未満というのが現実なのです。
一方、ごく一部の行政書士は一億円以上の年間売上があり、年収は5,000万円を超えると予想されます。
また、年間売上分布から言えることは、年収の中央値(データを大きさの順に並べた際、全体の中央に位置する値)は100万円台から200万円台ということです。
つまり、年収が100万円台~200万円台の行政書士が最も多いのです。
ともなれば、行政書士の仕事のみで生計を立てることが厳しいのは、想像に難しくないでしょう。
これが、「行政書士の仕事だけでは食えない」と言われる由縁なのでしょう。
年収に大きな差がある理由
そもそも、なぜ行政書士は年収に大きな差があるのでしょうか。 行政書士として独立開業するためには、行政書士登録を行う必要があります。とはいえ、行政書士登録を行った独立開業者の中で、行政書士を専業にしている人は、『1~2割』(『https://www.gyosei-goukakukaigyou.com/nensyu.html#contents1』)程度です。
それ以外の独立開業者は、税理士や社会保険労務士等の他士業と兼業しています。 つまり、行政書士としての売り上げが少ない方のデータも含まれているのが、年収に大きな差がある理由でもあるのです。
行政書士登録者が他士業と兼業する理由
行政書士登録者は他士業と兼業する理由は、主に「人数が多い」「明確な独占業務がない」が挙げられます。ひとつずつ見ていきましょう。
【理由①】人数が多い
司法書士等の他資格の取得者と比べ、行政書士の人数は圧倒的に多いです。下記のデータを見ると、その多さは一目瞭然です。
【全国の登録者数】 ・行政書士…4,3000人 ・司法書士…20,000人 ・弁護士…33,000人
引用元:http://xn--8prp7ir4movbm4b782hycdjp5b.net/%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E3%81%82%E3%82%8C%E3%81%93%E3%82%8C/%E7%99%BB%E9%8C%B2%E8%80%85%E6%95%B0/626/
人数が多いことから、競争が激しく専業でやりくりをしていくことが厳しいため、兼業で働いている方が多いのが理由に挙げられます。
【理由②】明確な独占業務がない
行政書士には明確な独占業務(特定の資格や免許を保有している方だけが行える業務)がありません。
というのも、行政書士には大きく分けると以下3つの独占業務があります ・官公署(各省庁・都道府県庁・市役所・町村役場・警察署等)に提出する書類の作成 ・会社を設立時の必要書類等、権利義務に関する書類の作成 ・資格証明等の事実証明に関する書類の作成 扱う分野は広いですが、これらは、弁護士等の他の資格を保有していると扱える業務です。
そのため、独占業務ではあるものの、実質独占している業務は少ないと言えるでしょう。競合は同業者だけではないことが、行政書士のみで生計を立てる難しさを物語っています。
行政書士事務所で雇用されている行政書士の年収
行政書士は独立開業している人だけではありません。行政書士事務所で雇われている行政書士も存在します。
そんな雇われ行政書士の平均年収は、『300万円前後』(『https://www.gyosei-goukakukaigyou.com/nensyu.html#contents1』)です。雇われ行政書士の年収は、雇用された事務所の待遇や、個人の能力によって左右されます。
近年、法人化として規模を大きくする行政書士事務所が増えています。今後、雇われ行政書士を選択する人は増えていくでしょう。
年収を上げるために必要な能力
行政書士として年収を上げるためには、どのような能力が必要なのでしょうか。それはマーケティング力です。
行政書士業務は、仕事の単価が高い反面、単発の依頼が多いです。そのため、年収を上げるためには、絶えず仕事を得る必要があります。
マーケティング能力を身に着けると、市場の需要を把握出来るので、仕事を得やすくなります。
まとめ
行政書士の仕事は競合が多い等の事情から、専業で行っていくことは難しいということが分かりました。しかしながら、その一方で、兼業で生計を立てている行政書士が多いのも事実です。 ”バカとハサミは使いよう”ということわざがあるように、「行政書士では食えない」と嘆くのではなく、働き方の1つに行政書士の仕事を取り入れる、という考え方も必要と言えるかもしれません。