総務・人事の仕事というものは業務範囲が幅広く、様々な能力が必要とされます。企業によって仕事の幅は異なりますが、例えば「経営企画」「コンプライアンス」「リスク管理」「法務・登記・契約管理」「労務」「庶務」等があります。

 また時代の流れに伴って、総務・人事の仕事も変容します。

最近でいえば、コンプライアンスの重要性が高まっていることから、より一層の「社員の労働環境に対する管理の徹底」が企業に求められるようになりました。また、2016年にはマイナンバーといった新制度の導入により管理方法の変化も生じています。

新制度が導入されると、新しい知識が必要となります。それに伴い、新たな資格も登場するのです。よって、認知度が低いタイミングで関連資格を取ることで社内の専門家になれることが出来ます。専門家になることで、あなたしか出来ない仕事を持つことも可能になります。

 ここでは、そんな総務・人事の知識が身に付く手助けとなる資格をまとめてみました。

 

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資格保有は有利に働く

 総務・人事の業務をこなすうえで、絶対に必要な資格というものはありません。というのも、実務を積んでいく中で、必要な知識とスキルは身に付くためです。

 但し、仕事範囲が広い総務・人事の性質上、資格を取得していることで、特定の業務のスペシャリストになることが出来ます。また、それが強みとなり活躍の場も広がるのです。

 また、転職においても資格を保有していることは有利に働きます。

 

資格保有者限定の求人もある

 企業によっては、資格保有者のみを選考対象にすることもあります。そのため、資格を保有していないために、諦めざるを得ないケースも発生しないとは限りません。逆に、資格を持っていることで応募出来る企業は増えチャンスは広がります。

 

総務におすすめの資格

 では、まず総務におすすめの資格から見ていきましょう。

 

総務資格➀ビジネスキャリア検定

 総務担当者は会社全体をマネジメントする立場でもあります。そのため、従業員から様々な相談を受ける機会があるのです。

 そのような場面に、しっかりと対応出来る力が身に付く資格がビジネスキャリア検定です。総務・人事の業務が多岐に渡ることから、ビジネスキャリア検定は、下記の8分野に分かれています。

 

人事・人材開発・労務管理

経理・財務管理

営業・マーケティング

生産管理

企業法務・総務

ロジスティクス

経営情報システム

経営戦略

 

 特定の分野をピンポイントで学ぶことが出来るため、身に付けたい分野を受けるとよいでしょう。全ての分野がBASIC級、3級、2級、1級に別れており、部長クラスを目指す方は1級を狙うことをおすすめします。

受験料

1級:10,000円

2級 6,990円

3級 5,660円

BASIC級 3,000円

試験頻度 年2回
合格率(2016年度前期)※中央職業能力開発協会が公表している級のみ                 分野名  試験区分名   
人事・人材開発・労務管理    人事・人材開発・労務管理  1級:12% 
人事・人材開発 

2級:34%

3級:59% 

労務管理 

2級:37%

3級:40% 

経理・財務管理   経理 

2級:25% 

3

⇒簿記・財務諸法表:41%

⇒原価計算:38%

 財務管理

2級:22%

 3級:48%

営業・マーケティング    営業・マーケティング  1級:13% 
営業 

2級:34%

3級:50% 

 マーケティング

2級:60

3級:61% 

生産管理   生産管理プランニング 

 2

⇒製品企画・設計管理:44%

⇒生産システム・生産計画

加工型・組立型:31%

プロセス型:27%

3級:62%

 

生産管理オペレーション 

2

⇒作業・工程・設備管理:31%

 ⇒購買・物流・在庫管理:32%

3級:58%

企業法務・法務    企業法務

 2級

⇒組織法務:38%

⇒取引法務:54%

3級:42%

 総務

2級:42%

 3級:59%

ロジスティクス   ロジスティクス管理

2級:37%

 3級:58%

ロジスティクス・オペレーション

2級:45%

3級:58%

経営情報システム 経営情報システム

1級:13%

2級

⇒情報化企画:42%

⇒情報化活用:40%

3級:47%

経営戦略 経営戦略

2級:49%

3級:62%

 主な勉強法

・中央職業能力開発協会が出しているテキスト

   ・中央職業能力開発協会の公式HPの掲載されている過去問

 →ビジネスキャリア検定の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

 総務資格②衛生管理者

 「衛生管理者」は、労働安全衛生法において定められている国家資格です。

 常時50人以上の労働者が働いている事業所(一部に業種を除く)では、必ず1人以上の第一種もしくは第二種の「衛生管理者」の資格保有者を在籍させる義務があります。第一種は全ての事業所で有効ですが、第二種は職種によって無効になることがあります。

 この「衛生管理者」資格では、照明や空調等が最適な設定になっているかどうかを確認する手段や、社員の健康管理を効果的に行う方法等の知識が身に付きます。

 「衛生管理者」は総務未経験者より、さらに、キャリアアップを目指す人向けの資格となっています。実際に、総務部に配属された後、会社からの要請で資格を取得する人も少なくありません。

受験料 第一種・第二種:6,800円
試験頻度 毎月2~3回
合格率

第一種衛生管理者:45.5%

第二種衛生管理者:55.5%

主な勉強法

・参考書や過去問題集を中心に自主勉強

・SATの通信講座

 →「衛生管理者」資格の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

総務資格③マイナンバー実務検定

 2016年1月から運用が開始されたマイナンバー制度。これにより、総務には組織体制の整備やマイナンバーの管理をするための安全管理措置を意識した取り組みが求められるようになっています。

・安全管理措置とは

 事業者(会社)が個人番号及び特定個人情報の漏洩や滅失等の防止するために設置された措置のことです。マイナンバーは、この安全管理措置が義務付けられています。

 新しく取り入れられた制度であるため、マイナンバーについての理解が不十分な方も少なくありません。それだけに、マイナンバーについての知識を持った人材の価値は高くなっています。

 知識を身に付けるのはもちろん、自身の価値を高めたいという方にとってもマイナンバー実務検定はおすすめです。3級から1級まであり、企業での活用を考えるのであれば2級以上の取得がよいでしょう。

受験料

1級:10,000円

2級:8,000円

2級:8,000円

試験頻度 2級:8,000円
合格率(2016年12月)

1級:公表なし

2級:39.7%

3級:41.2%

主な勉強法 テキストや過去問題集を使った独学

→マイナンバー実務検定の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

総務資格④中小企業診断士

 「中小企業診断士」は、経営コンサルタントとして認められた唯一の国家資格です。経営コンサルタントは、業界や職種に関わらず、“企業が売り上げを伸ばし、コストを削減し、利益を上げる”ための適切な提案をするのが仕事です。

 そのため「中小企業診断士」資格では、経営やマーケティング等について学ぶことが出来ます。

 受験者のうちの5割強は民間企業勤務者です。というのも、キャリアが長くなると総務担当者も経営に携わる場面も出てきます。そんな時に、質の高いコンサルティングを発揮するために、「中小企業診断士」資格は一役を買っており企業からの評価も高いのです。

受験料

1次:13,000円

2次:17,200円

試験頻度 年1回
合格率(2015年)

1次:26%

2次:19%

主な勉強法

・テキストと過去問題集を利用した独学

・資格予備校に通学

 →「中小企業診断士」資格の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

総務資格⑤秘書技能検定

 秘書技能検定(秘書検)では、ビジネスマナーや接遇、事務用品の管理、ファイリング等、総務に活かせる様々な知識を学ぶことが可能です。

 これらの知識が身に付くことで、仕事をよりスムーズにこなすことが期待出来ます。

 秘書技能検定は、3級、2級、準1級、1級があります。転職活動の際にアピール出来ることも考えて、2級以上の取得がおすすめです。

受験料

1級:6,100

準1級:4,900円

2級:3,800円

3級:2,600円

試験頻度 年3回
合格率(2013)

1級:40.1%

準1級:27.8%

2級:54.6%

3級:78.5%

主な勉強法

・テキストと過去問題集の活用

・通信講座

→秘書技能検定試験の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

 総務資格⑥マイクロソフトスペシャリスト(MOS)

 マイクロソフトスペシャリスト(MOS)は、ワードやエクセル、パワーポイント等のパソコンソフトの基本的な操作スキルを証明出来る資格です。総務の仕事に、マイクロソフト製品を導入している職場は多いため、この資格を保有することは転職の際のアピールポイントになります。

 マイクロソフトスペシャリストには、「スペシャリスト(一般))と「エキスパート(上級)」の2つのレベルがあります。まずは、総務の仕事をするうえで使用する機能の大部分を学べる「スペシャリスト」を受験することをおすすめします。

 →マイクロソフトスペシャリストの日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

 人事におすすめの資格 

 

次は人事におすすめの資格を見ていきましょう。

 

人事資格➀メンタルヘルス・マネジメント検定

 2015年から常時50以上の事業所で「ストレスチェック制度」が義務付けられたこともあり、近年、社員のメンタルヘルス管理の必要性が叫ばれています。

・ストレスチェック制度とは

 会社が労働者のストレスの程度を把握し、メンタルの不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。

 メンタルヘルスは繊細な問題なため、適切に対応をしなければなりません。メンタルヘルス・マネジメント検定では、そんな繊細な問題に対した適切な対処法を学ぶことが可能です。

 具体的には、メンタルヘルスに関する基礎知識や部下からの話の聞き方、助言の方法等を習得出来ます。

受験料

Ⅰ種(マスターコース):10,800円

 Ⅱ種(ラインケアコース):6,480円

Ⅲ種(セルフケアコース):4,320円

試験頻度  年2回
合格率(2014年11月)

Ⅰ種(マスターコース):18.8%

 Ⅱ種(ラインケアコース):55.7%

Ⅲ種(セルフケアコース):83.2%

主な勉強法 テキストを利用して勉強 

 →メンタルヘルス・マネジメント検定の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

 人事資格②人事総務検定

 人事労務検定は3級と2級があり、人事、労務管理、年金等に関連することを学べます。認定講座を修了することで資格の取得が可能なため、本腰を入れての資格勉強をする余裕がないながらも、キャリアアップを望んでいる方にはおすすめしたい資格です。

受講料

2級:7,500円

3級:5,000円

試験頻度 不定期

→人事総務検定の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

 人事資格③キャリアコンサルタント

 社員として長年1つの会社で仕事をし続けていると、自分に合ったキャリアプランの立て方が分からずに悩む従業員もいます。そのような従業員に対し人事担当者は、課題や悩みに合ったアドバイスをし、将来のビジョンを明確にする手助けをしなければならない場面があります。

 その手助けをするために「キャリアコンサルタント」の資格は役に立ちます。2016年に国家資格になったこともあり、信頼度がある資格です。

受験料

学科:8,900円

実技:29,900円 

試験頻度 年4回 
合格率

 学科:77.8%

実技:60.0%

主な勉強法

・テキストを利用して勉強

・  通信講座

→キャリアコンサルタント試験の日程確認や、申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

人事資格④社会保険労務士

 「社会保険労務士」の資格は、人事総務検定と同様、人事、労務管理、年金等にまつわる知識を習得出来ます。その他にも、年金・医療・雇用保険等の知識も身に付くため様々な業務に対応できるようになる資格です。

受験料 9,000円
試験頻度 年1回
合格率(2015年) 2.6%
主な勉強法

・通信講座の受講

・テキストや社労士試験問題集を使った自主勉強

 →「社会保険労務士」資格の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

その他のおすすめの資格

 これまでで紹介した資格以外でも、以下の資格を取得しておくと業務の幅が広がります。

 

その他資格➀日商簿記検定

 中小企業等では、総務・人事が経理業務を担うことがあります。給与計算や経費の精算等、経理が日常的に行う業務で簿記(企業の活動を帳簿に記録し分かりやすく残しておく技術)の知識が必要になるのです。日商簿記検定では、その簿記について詳しく学ぶことが出来ます。

 そのため、経理業務を兼任する中小企業等へ転職する際は、日商簿記検定資格を保有していることが役に立つでしょう。日商簿記検定は初級、3級、2級、1級があり、企業の現場で使えるレベルの簿記が身に付くのは2級以上です。

受験料

1級:7,710円

2級:4,630円

3級:2,800円

初級:2,160円

試験頻度 年3回
合格率(2017年6月)

1級:8.8%

2級:47.5%

3級:50.9%

初級:25.6%

主な勉強法 テキストや過去問題集を使って自主勉強

 →日商簿記検定の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

その他資格②ファイナンシャル・プランナー技能士

 「ファイナンシャル・プランナー技能士」は、3級から1級まであり、主に金融関係の仕事をしている方が取得する資格です。収支や負債をはじめとした、資産の運用・計画について学ぶことが出来ます。

 「ファイナンシャル・プランナー技能士」の資格を保有することは、年金や税務に関する知識が身に付いている証明にもなります。そのため、経理や財務の業務を兼任する場合に役立つ資格です。

 2級では、「法人税」や「決算書と法人税申告書」といった税務のことや、企業の資金計画等を学ぶことが出来ます。これらは、会社の経理・財務業務に大いに活かすことが出来るため、2級を取得がおすすめします。

受験料

2級:6,000円

3級:8,700円

試験頻度 年3回
合格率

2級:36.07%

3級:72.04%

主な勉強法 テキストや参考書、過去問題集を使用した独学

→「ファイナンシャル・プランナー技能士」の資格の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

その他資格③宅地建物取引主任者(宅建)

 宅地建物取引主任者は通称、宅建と言われており不動産取引の専門家として活躍が出来る国家資格です。

 オフィス移転をする際に発生する業務の知識について学ぶことが出来ます。

受験料 7,000円
試験頻度 年1回
合格率(2014年) 17.5%
主な勉強法

・テキストや過去問を使った自主勉強

・資格予備校への通学

・通信講座の受講

→「宅地建物取引主任者」の資格の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

その他資格④情報処理技術者

 「情報処理技術者」の資格は、情報処理の知識や技能が一定以上の水準であることを証明出来る、IT系で唯一の国家資格です。

 企業によっては、総務がデータベース(一定の形式で整理されたデータの集まり)の管理やホームページの運用、情報セキュリティの整備等を担当することがあります。

 そのような時に、「情報処理技術者」の資格を持っていると活躍が期待出来るのです。

受験料 5,700円
試験頻度 年2回
合格率(2016年春期) 31.4%
主な勉強法 テキストと過去問題集を使った自主勉強

 →「情報処理技術者」の資格の日程確認や、試験の申し込み等に関してはこちらをご覧ください。

 

資格を持っていると年収が上がる

 総務・人事関連の資格は、以上で紹介したように様々なものがあります。これらの資格を取得することで年収が上がることも期待出来ます。

 というのも、資格を取得するために勉強はスキルアップに直結するためです。また、転職をする際、資格を保有していれば、企業から優遇され高収入での転職も期待出来るでしょう。

 

資格では取得出来ないスキル

 総務・人事で必要なスキルは、資格で全て網羅出来るというわけではありません。

 例えば、総務・人事の仕事は、様々な部署の社員と関わりながらサポートをする業務がメインであることから、観察力を高め、「細やかな気遣い」が求められます。

 また、複数のタスクを同時進行でこなすことが往々にしてあります。それに加え、緊急を要した突発業務もこなさなければなりません。

 そのため、優先度の高い業務を的確に判断し、「臨機応変」に対応できるスキルが必要になってくるのです。

 「細やかな気遣い」「臨機応変」の2つは資格の勉強をすることで学べることではありません。実務経験を積む中で身に付くスキルです。

 そのため、これらのスキルを身に付けたいという方は、「細やかな気遣い」「臨機応変」を意識しながら仕事の取り組んでみましょう。

 

まとめ

 資格を取得することは、自身の可能性を広げるうえでとても有効な手段と言えるでしょう。

 新たに知識やスキルを身に付けたい方や、未経験者ながらも総務人事への転職を考えられている方は、本記事を参考に新たな可能性に向けて扉を叩いてみてはいかがでしょうか。