弁護士の年収は一般的には高い職業として知られています。しかし実態は、イメージ通りの年収の弁護士もいれば、それ通りではない方もいるのです。

 本記事では、そんな弁護士の年収についてご説明させていただきます。

 

弁護士の仕事

 弁護士は法律の専門家です。
 社会生活の中では、様々な争いごとや法律上の問題が起こる場合があります。しかし、一般人にとって、法律は難しく対処しにくいものです。そこで、法律の専門家である弁護士が、あらゆるトラブルに対しての予防方法やアドバイス、法律手続を行い問題解決に向けた手助けを遂行します。

 弁護士と一口に言ってもその働き方は様々です。弁護士事務所を経営する「ボス弁」、ボス弁に雇われ指示に従って業務を遂行する「イソ弁」、法律事務所の一角を間借して自営する「軒弁」等が挙げられます。

 

弁護士の平均年収の推移

 弁護士の平均年収は、2014年に日弁連(日本弁護士連合会)が実施した「年度別の弁護士の平均年収の推移」を見ると、以下のように発表されています。

 民間企業の年収を紹介している「給料.com」によれば、2015年の大手企業224社の平均年収は『780万円』(『https://kyuuryou.com/w227-2015.html』)というデータを発表していますので、一般企業に勤めるビジネスマンより収入は高い傾向にあります。これは、弁護士の性質上、専門性が高いためとされています。

 とはいえ、グラフを見る限り平均年収は2006年は3,620万円、2008年は3,389万円、2010年は3,304万円、2014年は2,402万円と、年々減少傾向にあります。

 

弁護士の年収が減少している2つの理由

 なぜ弁護士の年収は減少しているのでしょうか。それには以下の2つの理由が考えられます。

【減少①】司法制度改革のよる合格者増加

 日本のグローバル化の波は弁護士業界にも押し寄せてきています。従来の司法制度では時代に取り残させてしまうという懸念から、1999年から2009年にかけて司法制度改革が行われました。

・司法制度改革とは
 国民に対して、今まで以上のサービスを提供出来るよう、
裁判の効率化を図ったり法曹界(弁護士・裁判官・検察官等、法律に関係する社会)の人員の拡充等をしたりするために、
広範にわたった行われた制度改正のことを指します。

 この司法制度改革により、司法試験の合格率は上がり弁護士が増加しました。法律の専門家に対する国内需要は増えていないため、弁護士一人当たりの仕事量は減り年収の減少の要因になったのです。

【減少②】若手弁護士の年収低下

 多くの弁護士は自営のため、いわゆる定年を過ぎても現役を続行する傾向にあります。長い現役生活で積み上げてきた信頼があるベテラン弁護士には案件が集中します。
 残った数少ない案件が若手弁護士等に回ってくるため、経歴の短い弁護士等は年収が低くなってしまうのです。
 若手弁護士の年収減少が、平均年収の減少にも繋がっていると考えられています。

 

弁護士の平均年収は「勤続年数」によって差が出る

 実際、若手弁護士とベテラン弁護士では平均年収にどの程度の格差があるのでしょうか。下記のデータからそれが分かります。

引用元:http://bengo4.hatenablog.com/entry/2017/12/12/080000

 勤続年数が長くなるにつれ年収が増え、30~34年が最も年収が多いことが分かります。 
 これは独立開業した弁護士であれば、案件を受け顧客から信頼されることに比例して年収が増えていくことが考えられます。
 また、勤務弁護士であれば、弁護士特有の序列があり若手弁護士はアソシエイト、勤続年数を重ねていくとパートナー、さらにはシニアパートナーへと位が上がっていきます。

 この序列も年収に関係していると考えられます。
 また、法務省が算出している勤続年数による平均年収を見ると

1年目:327万円
6年目:765万円
15年目:1,285万円

引用元:https://heikinnenshu.jp/shi/bengoshi.html#chapter14

となっています。とりわけ1年目は年収が低いことがうかがい知れます。

年齢による年収の違い

 勤続年数による年収の違いは、年齢からも垣間見ることが出来ます。「賃金構造基本統計調査」による年代別の年収データも見ていきましょう。

※本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。

 弁護士になるためには大学卒業後、法科大学院(ロースクール)を経て司法試験に合格しなければなりません。それにより、早くても24歳からでないと弁護士になれないことから、データは25歳以降となっています。

 上記の表を見る限りでは、35~44歳の年収が高くなっています。この年代は収入が非常に多い方もいれば低い方もいるという2極化が進んでいるのです。その影響により、平均年収が上がっています。

 また、女性の平均年収767万円に対し、男性は1,161万円と、女性を大幅に上回っています。この差の要因は、女性弁護士の管理職比率が低いためとも言われているのです。

 

弁護士の平均年収は「就職先」によって差が出る

 勤続年収だけでなく、就職先によっても年収は左右します。

・法律事務所の規模
・就職地

 とりわけ、上記の2つが挙げられるでしょう。

【就職先①】法律事務所の規模による平均年収の違い

 勤務弁護士の場合、就職する法律事務所の規模によって年収が変化すると考えられられています。それが分かるデータが、厚生労働省が2015年に発表した「賃金構造基本統計調査」の”企業規模別年収”です。

事務所の規模 平均年収
小規模の法律事務所で勤務する弁護士 962.2万円
中規模の法律事務所で勤務する弁護士 1,061.8万円
大規模の法律事務所で勤務する弁護士 1,283.0万円

 上記の表を見る限り、事務所の規模が大きくなるにつれ平均年収が多くなっています。なぜこのような調査結果となったのでしょうか。これには1案件あたりの報酬が関係しています。
 報酬が大きい案件は複雑で規模が大きくなります。このことから、専門に特化した所属弁護士の多い大手の大規模事務所が依頼を受けやすいという実態があるのです。

 そのため、大規模の法律事務所で働く弁護士の方が高年収になるのです。
 ただ、大規模の法律事務所に所属することは非常に難関となっており、司法試験の上位合格者でないと難しいと言われています。

【就職先②】就職地による年収の違い

 就職地によっても年収は異なります。様々な年収データを算出している「平均年収.JP」によると、都道府県別の年収は以下のようになります。

都道府県 平均年収
北海道 995.4万円
青森県 884.8万円
岩手県 995.4万円
宮城県 1,106.0万円
秋田県 884.8万円
山形県 995.4万円
福島県 995.4万円
茨城県 1,106.0万円
栃木県 1,106.0万円
群馬県 1,106.0万円
埼玉県 995.4万円
千葉県 1,106.0万円
東京都 1,548.4万円
神奈川県 1,216.6万円
新潟県 995.4万円
富山県 995.4万円
石川県 1,106.0万円
福井県 1,106.0万円
山梨県 995.4万円
長野県 1,106.0万円
岐阜県 995.4万円
静岡県 1,106.0万円
愛知県 1,216.6万円
三重県 1,106.0万円
滋賀県 1,106.0万円
京都府 1,106.0万円
大阪府 1,327.2万円
兵庫県 1,106.0万円
奈良県 1,106.0万円
和歌山県 995.4万円
鳥取県 995.4万円
島根県 995.4万円
岡山県 1,106.0万円
広島県 1,106.0万円
山口県 1,106.0万円
徳島県 1,106.0万円
香川県 995.4万円
愛媛県 995.4万円
高知県 995.4万円
福岡県 1,106.0万円
佐賀県 884.8万円
長崎県 995.4万円
熊本県 995.4万円
大分県 995.4万円
宮崎県 884.8万円
鹿児島県 995.4万円
沖縄県 884.8万円

引用元:https://heikinnenshu.jp/shi/bengoshi.html#chapter10

 都市圏の方が、年収が高い傾向にあることがうかがい知れます。

 

独立開業した弁護士の年収

 勤務弁護士ではなく、独立開業したボス弁の場合、年収はいくらになるのでしょうか。独立開業した弁護士の平均年収は1,400万円と言われています。但し、年収100万円台~1億円と格差があります。年収8,000万円以上を稼ぐ弁護士は、弁護士全体の0.7%というアンケート結果も存在します。

 

他の士業との年収比較

 さて、年収が高いとされている他の職業と弁護士の年収を比較してみましょう。「平均年収.JP」が算出しているデータを基に年収を高い順からランキングにしてみました。

順位 士業 年収
1 勤務医師 『1,696万円』

 (『https://heikinnenshu.jp/iryou/kinmu_dr.html#chapter1』)

2 弁護士 『1,106万円』

 (『http://heikinnenshu.jp/shi/bengoshi.html』)

3 裁判官 『928万円』

 (『https://heikinnenshu.jp/shi/judge.html』)

4 公認会計士 『926万円』

 (『https://heikinnenshu.jp/shi/kaikeishi.html』)

5 税理士 『717万円』

 (『http://heikinnenshu.jp/shi/zeirishi.html』)

6 弁理士 『約700万程度』

 (『https://heikinnenshu.jp/shi/benrishi.html』)

7 司法書士 『630万円』

 (『http://heikinnenshu.jp/shi/shihou.html』)

8 検察官 『613万円』

 (『https://heikinnenshu.jp/komuin/kenji.html』)

9 行政書士 『だいたい600万円を少し上回る程度』

(『https://heikinnenshu.jp/shi/gyosei.html』) 

 

弁護士年収の今後

 「弁護士の年収は勤続年数や就職先によって差が出る」ということを本記事で紹介しましたが、今後は「集客力」も年収を左右する要素になると考えられています。

 事実、集客が出来ず仕事を得ることが出来ない弁護士は、年収300万円以下という数字も出ているようです。苦労して司法試験に合格すればその後は安泰という考えは、今では通用しないのかもしれません。

 現実は、弁護士資格を取得しても就職する場所が無かったり、仕事が得られないため年収が低かったり等も珍しくありません。

 今後、弁護士はさらなる2極化が生まれると考えられます。仕事がある人には多くの仕事が舞い込み、そうでない人には全く仕事が入らない。このような差は集客力が大きな要因になってくるでしょう。