税理士になるためには、税理士試験に5科目合格しなければなりません。他方で1~4科目に合格している人のことを「科目合格者」と呼びます。
現在、科目合格者は、就職・転職市場で価値が上がっているため、一般企業で活躍出来る機会が増えています。
では、会計業務に含まれる経理への就職・転職に有利に働くのでしょうか?
税理士試験の科目合格制度
はじめに、税理士試験の科目合格制度について、おさらいします。
税理士試験は、「簿記論」「財務諸表論」の必修2科目と、「法人税法」「所得税法」のいずれか1科目、「相続税法」「消費税法」「酒税法」「国税徴収法」「住民税」「事業税」「固定資産税」の中から2科目、合計5科目を選択して受けます。
5科目を合格すれば、税理士として従事することが出来ます。
但し、税理士試験は、1回の試験で5科目を合格する必要はありません。複数回、税理士試験を受けて、通算で5科目を合格すれば、税理士のなれるのです。
一般企業の経理への就職・転職に有利?
科目合格は、一般企業の経理への就職・転職に有利に働くのでしょうか。
近年、企業内税理士のニーズが高まっています。企業内税理士がいると企業としての経理業務がブラッシュアップされ、決算期等に外注負担を減らすことが出来るためです。
科目合格者は、合格している科目に限定して言えば、税理士資格を保有している人と同等の知識を持っています。つまり、科目合格者は、一般企業の経理への就職・転職に有利に働くと言えるでしょう。
合格しておくべき科目
では経理への就職・転職するには、どの科目に合格をしていると、より有利に働くのでしょうか。 それは、アピールしたいポイントによって異なります。アピール別にみていきましょう。
即戦力をアピール
簿記論と財務諸表論で学んだ知識は、経理で幅広く活かすことが出来ます。また、消費税法、相続税法は実務に直結する知識を保有していることをアピール出来ます。
即戦力をアピールしたい方は、簿記論や財務諸表論、消費税、相続税法の合格を目指すとよいでしょう。
法人税・会社法・税制の知識保有をアピール
一般企業の経理では、毎年、法人税の申告書を作成する業務が発生します。そのため、法人税法の合格は、法人税の知識保有をアピール出来ます。
また、事業継承や組織再編等の業務が発生する大きい企業では、会社法関連の業務が発生します。法人税法では、会社法や税制に関する知識も身につきます。
一般企業が科目合格者に求めるスキル
とはいえ、合格している科目だけが採用を左右しているとは限りません。一般企業の経理職では以下の要素が求められるケースが多いです。
就職・転職を志望する方は以下の要素が自分にあるかどうかを、今一度確認をしておきましょう。
【要素①】実務経験
実務経験があると採用に有利に働きます。それは、「社会の現実や流れを知っている」からです。経理はその傾向が強いです。
【要素②】企業で活躍出来るかどうか
多くの知識を持っていたとしても、企業の社風にマッチしていなければ、科目合格までに培った知識が活かせない可能性があります。 ですので、採用担当者は、志望者が企業で活躍出来るかどうかを見ています。
【要素③】コミュニケーション力
一般企業では、コミュニケーション力が求められます。とりわけ、規模が大きい企業では、関わる人が多い分、その傾向は強いです。
一般企業から見る科目合格者の印象
科目合格者は税理士志望を断念された人と思われるかどうか、気にする方もいるのではないでしょうか。 上場企業の経理部門では、自己研鑽の一環で、税理士試験の簿記論・財務諸表論の学習を行うケースがあります。 ですので、科目合格者は、「税理士試験を断念した人」等と、マイナスな印象は持たれないと考えられます。
科目合格者が面接を受ける際に注意すべき点
科目合格者が、一般企業の経理に就職・転職の面接を受ける際に注意すべき点をお伝えします。
科目合格者は、面接の際、採用担当者から「なぜ会計事務所ではなく一般企業を志望するのか」を質問されるケースが多いです。
その際、「税理士になることを諦めた」「会計事務所より給料がよいと思った」等と、マイナスな印象に繋がるような解答は避けてください。 プラスな印象になるように、「会計事務に関われる仕事がしたい」「会計事務所を通して会社に貢献したい」等、前向きな回答をするように心がけましょう。
科目合格と日商簿記1級の価値
科目合格と日商簿記1級は、同じ会計資格であることから、比較される場面が少なくありません。
一般企業の経理への就職・転職の場合、科目合格と日商簿記1級では、価値が高いのはどちらなのでしょうか。
一般企業では、日商簿記1級と税理士試験の財務諸表論が同等の価値があることで知られています。
ですので、財務諸表論に合格している科目合格者であれば、日商簿記1級と同等の価値があると言えるかもしれません。