法律に詳しい職業であることから、なることが難しいと考えられている弁護士。
 しかし実は、弁護士は誰もがなれる職業なのです、本記事でご説明させていただく「弁護士になるための4つの関門」を理解することで、その謎が解けるでしょう。

 それでは見ていきましょう。

 

弁護士になるための4つの関門

 弁護士になるためには、以下の4つの関門を突破しなければなりません。

【第1関門】司法試験受検資格の取得
【第2関門】司法試験合格
【第3関門】司法修習所で研修
【第4関門】司法修習生考試(二回試験)合格

表にすると以下のようになります。

 それぞれの関門を深掘りしていきます。

 

【第1関門】司法試験受検資格の取得

 弁護士になるための司法試験には受験資格があります。それが第1関門の「司法試験受検資格の取得」です。
 受検資格を得るためには、次の2通りがあります。

①法科大学院(ロースクール)を修了する
②司法試験予備試験に合格する

①法科大学院(ロースクール)を修了する

 司法試験の受験資格を取得するのに一般的な方法として挙げられるのが「①法科大学院を修了する」です。2017年の司法試験の出願者数は6,716人に対して、法科大学院修了者は6,170人』(『http://www.moj.go.jp/content/001222542.pdf』)と約92%にも上ります。

 法科大学院とは、法曹(ほうそう)と呼ばれる弁護士・検察官・裁判官の養成に特化した教育を行うスクールです。別称ロースクールとも呼ばれています。
 法科大学院は、”大学院”であるため原則として大学卒業資格が必要です。学部は法学部でなくても問題ありません。

 そして、進学するためには法科大学院統一適性検査を受検した上で、それぞれの法科大学院が実施する入試を受験する必要があります。 法科大学院に入学をしたら、法学既修者が通う2年コースと、法学未修者が通う3年コースに分かれています。よって、法学部ではない大卒者は3年コースに通うことになります。但し、法律知識を問う入試に合格すれ2年コールに進学することも可能です。

②司法試験予備試験に合格する

 対して、経済的に厳しい等が理由で法科大学院に通うことが難しい方は、司法試験予備試験の合格を目指します。

 司法試験予備試験には受験資格がないので、年齢や学歴等に関係なく門戸が開かれているのです。中学生や高校生でも合格するチャンスはあります。但し、2023年度の合格率を見ると『3.6%』(参考:予備試験の合格率は?|アガルート法律会計事務所)と狭き門のため、決して容易に突破出来る試験ではないと言えるでしょう。

 同試験は短答式試験と論文式試験、口述試験を順に受けていきます。短答式試験に合格した方のみが次の論文式試験に臨める、といったように全ての試験に合格すると司法試験の受験資格を獲得出来ます。
 いずれも年に1回実施され、例年以下のような長いスパンのスケジュールで試験が実施されます。

◇短答式試験…例年5月中旬頃
◇論文式試験…例年7月中旬頃
◇口述試験…例年10月下旬頃

 以上、①②のいずれかで司法試験の受験資格を取得しても安泰ではありません。というのも同資格には期限があるのです。取得してはじめの4月1日から5年後に資格が失効します。また受験回数も3回までという制限が設けられているのです。

【第2関門】司法試験合格

 司法試験の受検資格を得ることで、ようやくスタートラインに立てると言っていいでしょう。2017年の司法試験の合格率は22.97%と司法試験予備試験と比較すると高いですが、受験回数・期限に制限がある中なので、侮ってはなりません。

 司法試験は例年5月中旬頃に実施されます。

【第3関門】司法修習所で研修

 司法試験を潜り抜けると約半年後に次の関門が待っています。司法試験に合格をした年の12月から約1年間に及ぶ司法修習期間を司法修習所で過ごさなければなりません。ここでは、弁護士の実習生として、実際に現場で実務を経験します。

【第4関門】司法修習生考試(二回試験)合格

 司法修習所での研修を終えると、ついに最終関門です。
 最終試験とも言える司法修習生考試を受験します。通称「二回試験」とも呼ばれています。司法修習生考試は例年11月に行われ、合格率は毎年90%を超えています。修習に真面目に取り組めば問題ない合格率と言えるでしょう。

 

最短で何年かかる?

 では、ここまでご説明させていただいた第1関門から第4関門までを突破するには最短で何年かかるのでしょうか。

 法科大学院の2年コースに通うAさん、法科大学院の3年コースに通うBさん、司法試験予備試験を受けるCさんを例にして、第1関門に入った時点から弁護士になるまでの最短の期間を次の表にまとめました。

※クリックすると拡大して表示できます。

 すると、AさんとBさん、Cさんは下記のような期間で弁護士になれるのが分かります。

Aさん…3年8ヶ月
Bさん…4年8ヶ月
Cさん…2年7ヶ月

 司法試験予備試験を通過して弁護士になったCさんが一番早く弁護士になれます。

 

最短で弁護士になれる年齢

 続いて、最短で何歳で弁護士になれるのかを見ていきましょう。再び、AさんとBさん、Cさんを例にして算出します。

◎Aさん
18歳で大学(法学部)入学→22歳で法科大学院の2年コースに進学→24歳で司法試験を受験→24歳で司法修習生考試を受験→25歳で弁護士

◎Bさん
18歳で大学(法学部)入学→22歳で法科大学院の3年コースに進学→25歳で司法試験を受験→25歳で司法修習生考試を受験→26歳で弁護士

◎Cさん(中学を卒業したタイミングで司法試験予備試験を受けた場合)
15歳で司法試験予備試験に合格→16歳で司法試験を受験→16歳で司法修習生考試を受験→17歳で弁護士

 上記の例からもあるように10代後半から弁護士になれるということが言えるでしょう。

 

弁護士になるのに掛かる費用

 次いで、弁護士になるのに掛かるそれぞれに費用を下記にまとめました。

・大学の学費…300~500万円程度
・法科大学院の学費…1年あたり100~300万円
・司法試験予備試験の受験料…17,500円
・司法試験の受験料…28,000円
・司法研修所…研修費にお金は掛かりませんが生活費は実費
・司法修習生考試の受験料…なし

 司法試験予備試験の合格を目指した方が費用が掛からないことがお分かりいただけるでしょう。

 

弁護士に強い大学ランキング

 さて、既述の通り弁護士になるためには大学の法学部に進学し法科大学院に進む方が多いです。そこで、ここからは弁護士に強い大学・法科大学院ランキングを見ていきましょう。
 文部科学省では、「司法試験予備試験の大学別合格者ランキング」と「司法試験の合格率が高い法科大学院ランキング」を発表しています。それによると以下のようなランキングになります。

◆司法試験予備試験の大学別合格者数ランキング

1位 東京大学 86名

2位 慶応義塾大学 40名

3位 中央大学 29名

4位 京都大学 19名

5位 一橋大学 18名

6位 早稲田大学 14名

7位 大阪大学 13名

引用元:平成29年司法試験予備試験受験状況(大学別・全体)

◆司法試験の合格率が高い法科大学院ランキング

1位 京都大学 合格者111名 合格率50%

2位 一橋大学 合格者60名 合格率49.59%

3位 東京大学 合格者134名 合格率49.45%

4位 慶応義塾大学 合格者144名 合格率45.43%

5位 大阪大学 合格者66名 合格率40.74%

6位 神戸大学 合格者55名 合格率38.73%

7位 愛知大学 合格者4名 合格率30.77%

8位 早稲田大学 合格者102名 合格率29.39%

9位 首都大学東京 合格者31名 合格率26.96%

10位 中央大学 合格者119名 合格率26.15%

引用元:http://www.moj.go.jp/content/001236006.pdf

 大学・法科大学院への進学を検討している方は、ぜひ上記をご参考ください。

 

弁護士を目指すそれぞれの方

 既述の第1関門で受検資格を問わない司法試験予備試験があることから、誰もが弁護士になれる可能性があります。そのため、様々な方が弁護士を目指すことが出来ます。
 ここでは、下記の方にスポットを当てて、それぞれの弁護士のなり方をお伝えいたします。

①中卒・高卒の方
②大卒の方
③短大卒の方
④社会人・主婦の方
⑤中学生・高校生

①中卒・高卒の方

 最終学歴が中卒・高卒でも弁護士になることは可能です。大学卒業資格が必要な法科大学院に進学することは出来ませんが、受験資格が不問な司法試験予備試験に合格することで弁護士としての道は十分に開かれます。
 ただ、司法試験予備試験は狭き門であるため、大学に進学してから法科大学院に進むというのも一手でしょう。

②大卒の方

 大卒者は法科大学院がオススメです。但し、働きながら弁護士を目指す社会人の方は法科大学院に通うのは厳しいかもしれません。そのような場合は司法試験予備試験に合格して司法試験の受験資格を取得するとよいでしょう。

③短大卒の方

 短大卒の方は大学卒業資格を持っていません。よって、 4年制大学に編入学して3年生もしくは2年生から通い大学資格を取得したのち法科大学院に臨むのがよいでしょう。

④社会人・主婦の方

 社会人や主婦の方は、仕事や家事をこなしながら法科大学院に通うのは難しいことが予想されます。そのため、司法試験予備試験の合格を目指すのが無理のない方法かもしれません。

⑤中学生・高校生の方

 中学生や高校生のうちから弁護士を目指している方は、司法試験予備試験の合格を目指して、塾等で試験対策をしている方は少なくありません。
 2017年の司法試験予備試験に合格最年少者は18歳という記録が残っています。この方は、高校生のうちから塾等に通い対策をしていたことが予想されています。

 ですので、学校での勉強とは別に弁護士になるための勉強を並行して行い、司法試験予備試験の合格を目指すのがベターでしょう。

 

就職について

 司法修習生考試に合格後、各地の弁護士会に登録することで弁護士としてスタートを切れます。弁護士の主な就職先は、法律事務所と一般企業の二手に分かれます。
 法律事務所への就職が一般的ではありますが、近年は企業で法務を行う企業内弁護士(インハウスロイヤー)が増加傾向にあります。

 

終わりに

 本記事ではふれませんでしたが、実例は少ないものの検察事務官から弁護士を目指すという方法もあります。検察事務官とは検察官をサポートし、検察業務を行う国家公務員のことを指します。
 検察事務官になるには、公務員試験に合格したのち、検察事務官を希望し採用されなければなりません。

 しかし、多くの方は本記事でご紹介させていただいた4つの関門を突破して弁護士になります。弁護士になるための対策にぜひ本記事を参考にしてみてください。