みなさんは「労務」と聞いてどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?

「給与計算や色々なことを担当している」
「人事部や総務部の中にある部署」
「会社の内部のことをやっている」

 このように、「労務」と聞いても具体的にどのような業務を行っているのか分からない方が少なくないのではないでしょか。
 そこで今回は、労務の仕事内容とそれに必要なスキルや経験も併せてご説明させていただきます。

労務とは

 労務とは、労働に関する事務処理を指します。労務担当者が、労働管理を行うことで企業活動の円滑化を図ることが出来ます。例えば、給与計算や福利厚生業務等を労務担当者が行うことにより、従業員の労働効率は上がり、企業の労働生産性の向上に貢献しています。

 つまり、労務担当者は「従業員が安心して働くための組織づくり」を担っているのです。

労務の仕事内容について

 労務の仕事を具体的に挙げると多岐に渡ります。その仕事内容は次の通りです。

労務➀勤怠管理

 勤怠管理では、従業員の遅刻や早退、欠勤等の勤務状況の把握をします。勤怠の情報は給与計算や有給休暇の管理と連動しており、人事評価に大きく反映されるのです。そのため、正確に管理されていることや、適した運用の方法に整備されていることが重要になります。

労務②給与計算

 給与計算は、通常業務とのバランスを考えて、給料の支給日に合わせたスケジュールで行われます。給与計算をするうえでは、住民税や社会保険料、諸手当等の把握が必要です。そのため、これらの情報管理も労務の仕事になります。

 また、給与は従業員の生活を支えるものであるため、金額の間違いや振り込みの遅延等に対してはとてもシビアです。そのため、給与計算は正確性と時間管理が求められます。

労務③安全衛生管理

 企業は従業員の安全と健康を確保する義務があります。その義務を担い、安全衛生管理を行うのが労務の役目です。主に、労働安全衛生法に基づいて健康診断を実施し、以下についての管理を行います。

・健康診断の結果の記録
・結果についての医師からの意見聴取
・実施後の措置
・結果の従業員への通知
・健康保持のための保険指導
・管轄の労働基準監督署長への報告

 また、2015年12月からは一部の企業でメンタルヘルス対策の一環として、ストレスチェック制度が新たに導入されました。これにより、従業員の健康で安全な環境作りや気軽に産業医と面談が出来る整備等も、労務担当者の役目になっています。

・ストレスチェック制度とは

 従業員のストレスの度合いを把握するための検査を行い、その結果に基づいて、面接指導の実施等を制度にしたものです。常時50人以上の労働者を雇用する企業には、実施義務が課せられ、常時50人未満の企業は努力義務とされています。

労務④ライフイベントの変化による変更手続き

 従業員に結婚や出産等の生活に変化があった場合、手当や給付金の見直し等の変更手続きが生じます。手続き内容は、従業員の背景によって異なり、法律が関わるため、専門的な知識が必要になるのです。

労務⑤社会保険手続

 労務での社会保険に関する仕事は、従業員が入社した時や退社した時の資格取得や資格喪失の手続が挙げられます。また、年度ごとの保険料の算出と納付も労務の仕事です。

労務⑥福利厚生業務

 労務は、働きやすい環境を作るだけでなく、従業員のやる気を引き出すための福利厚生業務もあります。例えば、休憩スペースの設置や保養施設の利用促進、勤続年数による特別休暇の設定等挙げられます。

労務⑦就業規則の作成・運用

 就業規則とは、労働基準法の範囲内で規定した会社のルールを書面にまとめたものです。経営陣からの意見を書面に反映させ、就業規則の作成・運用をすることも労務の仕事になります。

労務に求められるスキル・姿勢

 以上のように労務は多岐に渡ります。では、このような労務にはどのようなスキルや姿勢が求められるのでしょうか。以下の3つが挙げられます。

能力・資質➀専門知識

 労務では、専門知識が必要になります。たとえば、給与計算や保険加入手続きであれば、法令や制度の遵守を求められるため、法的な専門知識が必要となります。

能力・資質②コミュニケーション能力

 労務担当者は、従業員の勤怠管理をしていることから時折、自身が優位な立場にあるように錯覚することがあります。高圧的な態度をとることは相手に嫌悪感を抱かせる可能性があり、そのことによりモチベーションの低下、会社の生産性の低下につながりかねません。

 労務担当者は、あくまでも会社のルールを従業員に伝える立場であり、誠意を持って従業員に応対するコミュニケーション能力が求められます。

能力・資質③秘密保持の姿勢

 労務担当者は、従業員のプライバシーに触れ合う機会が多いです。そのため、情報の<span class=”fw-bold”>秘密保持の姿勢</span>がとても大切になります。

労務に活かせるスキルや経験

 また、労務では以下のようなスキルや経験を活かすことが出来ます。

➀パソコンスキル

 労務では、勤怠管理の集計や給与計算等が全てパソコンで行われます。そのためパソコンスキルをもっている方は労務に大いに生かせるでしょう。

②給与ソフトの使用経験

 企業の多くは給与計算をする際、給与ソフト等を利用して業務効率化を図っている傾向にあります。そのため、給与ソフトの使用経験があることは労務に活かせる可能性があるのです。たとえ、使用している給与ソフトが違ったとしても、これまでの経験を応用することが出来ます。

③勤怠管理システムの導入経験

 勤怠管理システムの導入は、それぞれの企業に適した運用方法にすることが大切です。そこで、勤怠管理システムの導入をした経験があると、システムの検討に活きてくるでしょう。

人事と労務の違い

 以上にご説明させていただいた通り、労務には“これ”といった仕事内容があるものの、人事と一緒にされる傾向にあります。

 人事の役割は、「人材によって組織を活性化させる」ことです。
 具体的な仕事内容としては、採用活動、教育・研修、評価制度等が挙げられます。
→人事の仕事内容はこちらの記事で詳しく説明をしています。

 それに対し、労務の役割は以上でご説明させていただいた通り「従業員が安心して働くための組織づくり」です。
 このようにはっきりとした違いがあるとはいえ、なぜ労務と人事は一緒にされる傾向にあるのでしょうか。

 これは、中小企業等では人事と労務が1つの部署となっていたり、1人で両業務を担っていたりすることが理由に考えられます。

 また、一緒にされがちな業務として、社内の備品管理や環境整備、イベントの企画等を行う「総務」も挙げられます。企業によっては総務・人事・労務の3職種を兼業することもあるのです。

まとめ

 労務は多岐に渡るため、専門知識やコミュニケーション能力等、様々なスキルが求められます。スキルがあることに越したことはありませんが、決してスキルがないとしても労務職に就くことは可能です。未経験ながら、労務の仕事に就きたいという方は、「未経験OK」の求人から挑戦してみてください。