税理士の資格を取得するために受験する税理士試験は、いずれの科目も合格率が10~15%であるため難しいと考えられています。そのため、資格スクールに通ったり通信講座を受講したりしながら合格を目指すのが一般的です。

 とはいえ、社会人や主婦等の時間が限られている方や経済的に厳しい方等は、合格を目指すために、独学を余儀なくされるでしょう。
 実は、税理士試験は独学でも合格は可能です。実際に、独学で税理士試験に合格した体験記をインターネット上で見受けられます。

 そこで今回は、税理士試験を独学で合格するための心得やコツについてお伝えいたします。

 

税理士試験の受験科目

 まずは税理士試験の受験科目についてお伝えいたします。税理士試験は以下のように、必須科目と選択必須科目、選択科目の3種類に分かれています。

種別 科目名
必須科目 簿記論
財務諸表論
選択必須科目 所得税
法人税
選択科目 相続税
消費税
酒税法
国税徴収法
住民税
事業税
固定資産税

 以上の中から5科目に合格することで税理士資格を取得することが出来ます。
 5科目の内訳は、必須科目から2科目、選択必須科目から1科目、選択科目から2科目です。

 税理士試験の大きな特徴として挙げられるのが、幾度となく受験を重ねトータルで5科目に合格すれば税理士資格を取得出来るという点です。つまり、1回の受験で5科目に合格する必要はないのです。

 例えば、1年に1科目ずつ合格し、5年で通算5科目に合格すれば、税理士資格の取得が可能になります。さらに合格した科目は一生涯有効です。

 

必要な勉強時間

 冒頭でお伝えしたように各科目の合格率は低いです。平成28年度の科目別の合格率を見ても以下のようになっています。

科目 合格率
簿記論 12.6%
財務諸法論 15.3%
所得税法 13.4%
法人税法 11.6%
相続税法 12.5%
消費税法 13.0%
酒税法 12.6%
国税徴収法 11.5%
住民税 11.7%
事業税 12.9%
固定資産税 14.6%

引用元:https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/shikenkekka2016/01.htm

 そのため、それぞれの科目で多くの勉強時間を要します。各科目の勉強時間の目安は以下のようになります。

種別 科目 勉強時間の目安
必須科目 簿記論 450時間
財務諸表論 450時間
選択必須科目 所得税 600時間
法人税 600時間
選択科目 相続税 400時間
消費税 250時間
酒税法 150時間
国税徴収法 150時間
住民税 200時間
事業税 200時間
固定資産税 250時間

引用元:http://zaihyou.com/gakushuujikan.html

 例えば「簿記論」「財務諸表論」「所得税法」「相続税」「消費税」の5科目で合格を目指すとします。すると、合計2100時間もの勉強時間が必要になります。

 では、2100時間とはどの程度の勉強期間を要するのでしょうか。仕事をしながら独学で合格を目指すAさんがいるとします。平日は2時間、休日は6時間の勉強をすると仮定した場合、

平日2時間×5日=10時間
休日6時間×2日=12時間

 1週間に22時間の勉強時間を確保出来ます。これを2100時間になるように掛けていくと

22時間×96週間=2112時間

 約1年10ヶ月(96週)もの時間を費やさなければ2100時間の勉強時間の到達しないことが分かります。

 この例から、一般的に高校・大学受験の勉強期間よりは長いと言えるでしょう。

 

独学をするに当たっての心得

 長い勉強期間を費やすため、黙々と取り組む独学には次のような心得が必要になります。

【心得①】じっくり時間をかけて勉強をする

 前述では勉強期間は1年10ヶ月でしたが、これは毎日欠かさず勉強をした場合の最短期間です。

 ですので、最短で合格を目指すより、1科目ずつじっくり時間をかけていき1年に1科目合格するペースでやる、といった長いスパンで勉強することを前提に取り組む姿勢も大切です。1科目ずつ確実に知識を蓄えていけば合格も難しくありません。

 一般的には、1年に1科目の合格を目指して学習し、5年程度をかけて税理士になるという方が多いと考えられています。なかには、10年弱かけて税理士になる方も少なくありません。

【心得②】自身で税法改正の情報を掴む

 税法は頻繁に改正されます。資格スクールに通ったり通信講座を受講したりするのであれば、税法改正の情報は共有されます。ですが、独学の場合は税法改正の情報を自身で掴みにいかなければなりません。そのため資格スクールに通う等の方より勉強時間が増えることを心得ておきましょう。

 税法改正の情報は官報厚生労働省経済産業省のホームぺージ等で確認することが出来ます。

【心得③】モチベーションを保つ

 長期間費やす税理士試験の勉強には、モチベーションを保つことが合格する秘訣になります。モチベーションを保つ方法としていちばんに挙げられるのが、なるべく毎日欠かさず勉強を継続して続けることです。

 また、同じ志を持つ仲間の話を聞くのも一案です。もし、周りにいない場合は、ツイッター等のSNSで同志を見つけ情報交換するのがよいしょう。

 さらに、「税理士 独学 ブログ」と検索をかければ、独学で税理士試験に合格した方の体験記を目にすることができます。そこで得た情報が勉強する意欲に繋がることがあります。

 

独学はテキスト選びがカギ

 独学で合格を目指すためには、テキスト選びが重要です。

【テキスト①】必須科目のテキスト選び

 まず、会計学2科目は必須科目であるため、市販のテキストが多く販売されています。そのため独学には向いている科目と言えるでしょう。

 しかし、基礎知識がないまま税理士試験のテキストに取り組むとつまずく可能性があります。ですので、まずは日商簿記のテキストで基礎固めをすることをおすすめします。日商簿記2級までの内容を理解してから、簿記論、財務諸表論の勉強をするのがベターでしょう。

【テキスト②】選択必須科目と選択科目のテキスト選び

 選択必須科目と選択科目の税法科目に関しては、市販の教材が少ないのが難点です。オークションや古本屋等では過去のテキストが多く販売されています。しかし、前述の通り、税法は頻繁に改正されるため、過去のテキストでは誤った知識が身についてしまいます。

 オススメは予備校で販売されているテキストを購入することです。テキストを購入した人の質問にも対応してくれるので、独学で分からない内容があれば質問も可能です。

【テキスト③】問題集とテキストは出版社を揃える

 テキストを選ぶ際は、問題集とセットで買いましょう。その際、テキストと問題集を同じ出版社にしてください。というのも、出版社は問題集とテキストを組み合わせて勉強出来るようにつくっています。そのため、同じ出版社で揃えれば、間違えた問いを確認する際、「テキストの何ページの内容の問題」なのかが記載しており、復習に便利なのです。

 

おすすめの独学勉強法

 テキスト選びに続いて、おすすめの勉強法をお伝えします。おすすめは、インプットとアウトプットをセットで行う勉強法です。

 はじめにテキストを熟読して頭にインプットします。そして、問題集を解きながらアウトプットしていきます。間違えた問題は、テキストで確認し再びインプットします。そして間違えた問いを再び解きます。

 また、独学の方は試験直前には資格スクールが実施している模擬試験を受けることをおすすめします。独学では疎かになりがちな最新の法改正や、予想問題を取り入れて試験問題に触れることも勉強する上で大事なポイントです。

 

まとめ

 合格率が低いことから、税理士試験は独学で合格を目指すのが無理と考えられています。しかし、インターネットで調べると独学での合格体験記があるように実際に合格しているのも事実です。つまり、勉強の方法次第で独学で合格を目指せるのです。

 本記事では、独学で税理士試験の勉強に取り組むにあたっての心得からテキスト選び、勉強法についてお伝えいたしました。

 これから独学で合格を目指す受験生にとって助力になっていただけたら幸いです。

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