社会保険の加入手続や労働保険料の計算等の業務を生業にする社労士(社会保険労務士)。
 社労士になるためには社労士試験(社会保険労務士試験)に合格しなければなりません。
 本記事では社労士試験の難易度を「合格率」と「偏差値」の2つの観点からご説明させていただきます。

 

合格率から見た社労士試験の難易度

 まずは、合格率から見た社労士試験の難易度を見ていきましょう。
 他の国家資格試験と比較して合格率が低い順にランキングにすると、以下のようになります。

順位 試験名 合格率
1 司法書士試験

2016年:3.95%

2017年:4.07%

引用元:https://www.sho4-get.jp/archives/1292

2 社会保険労務士試験

2016年:4.4%

2017年:6.8%

引用元:http://www.robocup2005.jp/8.html

3 土地家屋調査士試験

2016年:8.92%

2017年:8.69%

引用元:http://chosa4.com/nanido-goukakuritu/

4 公認会計士試験

2016年:10.8%

2017年:11.1%

引用元:https://kaikeishi.j-tatsujin.com/nanido-goukakuritsu/

5 弁理士試験

2016年:15.5%

2017年:8.9%

出典:特許庁ウェブサイト(http://www.jpo.go.jp/oshirase/benrishi/kako/kekka/index.html)

6 行政書士試験

2016年:9.95%

2017年:15.72%

引用元:https://www.gyouseishoshi-get.jp/3reason-to-lower-pass-rate-188/

7 税理士

2016年:13.2%

2017年:17.0%

引用元:http://www.hikarujinzai.com/entry/2017/12/14/143158

8 中小企業診断士
(第2次試験)

2016年:19.2%

2017年:19.4%

引用元:https://www.j-smeca.jp/attach/test/suii_moushikomisha.pdf

9 司法試験

2016年:22.9%

2017年:25.9%

引用元:https://reatips.info/bar-examination-2017/

 他の資格試験の合格率と比較する限りでは、司法書士試験に次いで難しいのが社労士試験と言えるでしょう。

 

合格率が低い理由

 ではなぜ、社労士試験の合格率は低いのでしょうか。主に以下の2つが理由に考えられます。

試験範囲が広い

 社労士試験の試験科目は、以下のように8科目用意されています。

・労働基準法及び労働安全衛生法
・労働者災害補償保険法
・雇用保険法
・労働管理その他の労働に関する一般常識
・健康保険法
・厚生年金保険法
・国民年金法
・社会保険に関する一般常識

 それぞれの科目の内容は異なるため、非常に試験範囲が広くなります。それが合格を難しくする理由になっています。

勉強時間の確保が難しい

 試験範囲が広いにも関わらず、受験者の多くが勉強時間の確保が難しいのも合格率を下げている理由に挙げられます。
 というのも、下記にデータの通り受験者の年齢層は30、40代が多くを占め、職業別に見ると会社員が過半数に達しているのです。

【第49回社会保険労務士試験合格者の年齢別・職業別・男女別構成】

(1)年齢別構成

 20歳代以下(10.0%)、30歳代(30.7%)、40歳代(31.2%)、50歳代(19.6%)、60歳代以上(8.5%)

 最年少者17歳、最高齢者74歳

(2)職業別構成

 会社員(59.1%)、無職(13.6%)、公務員(5.9%)、自営業(5.8%)、団体職員(5.3%)、役員(2.4%)、学生(0.4%)、その他(7.5%)

引用元:http://www.sharosi-siken.or.jp/pdf/05/info_01_gyousei_happyou.pdf

 受験者のボリュームゾーンは30、40代の会社員と言えるでしょう。そのような方々は、会社で役職に就いたり家族が増えたりする等で試験勉強に割ける時間が限られていることが予想されます。

 

社労士試験に必要な勉強時間

 さて、社労士試験にはどの程度の勉強時間が必要なのでしょう。か
 独学では1,000時間、通信講座での勉強では500時間以上は必要と考えられています。

 ここでは独学にフォーカスして、専業受験生(学生等)と兼業受験生(社会人等)の場合の勉強期間を算出してみます。

専業受験生

 専業受験生は、1日8時間の勉強時間を確保出来るとします。毎日欠かさず勉強をすると125日(約4ヶ月)で1,000時間に達します。
 ただ、全く休みなしで勉強することは現実的な考え方ではないとも言えます。そこで週に6日勉強すると仮定します。その場合、147日(約5ヶ月)で1000時間の勉強時間をこなすことが可能です。

兼業受験生

 兼業受験生の場合、仕事がある日は3時間、休日には11時間の勉強をするとします。すると、1000時間を超えるには189日(約半年)掛かります。

独学で勉強を始めるタイミング

 社労士試験は例年8月下旬に実施されます。
 ですので、専業受験者で合格を目指す方は遅くとも3月下旬までには勉強を開始した方がよいでしょう。また、兼業受験生は2月下旬までには勉強をスタートさせましょう。

 

偏差値から見た社労士試験の難易度

 次は、偏差値から見た社労士試験の難易度を見ていきましょう。
 有名掲示板サイト「2ちゃんねる」では、「資格難易度・偏差値ランキング」というものが存在しました。そもそも資格には偏差値は存在しませんが、少なからず共感出来る面もあるため、以下に紹介させていただきます。

70:裁判官 

68:検察官 

67:弁護士(予備試験) 

66:弁護士(ロー卒) 

65:公認会計士(全科目一括合格) 医師(国公立卒)

  国家1種 

64:弁理士(免除なし)

  アクチュアリー 公認会計士(科目分割合格)

  司法書士 税理士(5科目受験免除なし)

  技術士(総合監理) 

63:医師(私立卒)

  TOEIC990 電験1種(受験取得 認定除外) 

62:弁理士(選択免除) 1級建築士

  技術士(上位部門)不動産鑑定士 

61:1総通 税理士(3科目受験2科目免除)

  通訳案内士 

60:社会保険労務士 土地家屋調査士

  技術士(下位部門)

  中小企業診断士  税理士(2科目受験3科目免除)

     ITストラテジスト 

59:国家2種 システム監査技術者 獣医師 行政書士

  国税専門官 1陸技

  環境計量士 TOEIC900 英検1級 

58:歯科医師 米国公認会計士

  電験2種(受験取得 認定除外)

  その他高度情報処理6種類 

57:証券アナリスト 政令指定都市市役所上級

  日商簿記1級 労働安全・衛生コンサルタント

  気象予報士 薬剤師(国公立卒) 

56:測量士(受験取得)マンション管理士 1級

  FP技能士(学科+金財面接実技) 

55:電験3種(受験取得 認定除外)

  応用情報 英検準1級 TOEIC800

  電気通信主任技術者 エネルギー管理士 

54:技術士補 2級建築士 通関士 年金アド2級

  その他市役所上級 火薬類製造保安責任者甲種 

53:2総通 1種冷凍 公害防止管理者 特級ボイラー

  税理士(Wマスター5科目全部免除) 

  1級FP技能士(CFP+協会筆記実技) 

52:CFP 管理栄養士 TOEIC700 社会福祉士

  一般計量士宅建 管理業務主任者 

  海事代理士 基本情報 

51:工事担任者AIDD総合種 薬剤師(私立卒)

  1陸特 ケアマネージャー 

50:TOEIC600 日商簿記2級 危険物甲種 販売士1級 

48:2級FP技能士 AFP 1級ボイラー 2種冷凍 1種電工

  測量士補(試験取得) 

  1アマ無線 1海特 浄化槽設備士 

46:精神保健福祉士 保健師 助産師 看護師

  理学療法士  作業療法士 貸金業務取扱主任者 

44:介護福祉士 2種電工 3種冷凍 保育士

       年金アド3級  浄化槽管理士

       電験3種(無試験認定) 毒物劇物 2アマ無線 

43:ITパス 日商簿記3級 第1種衛生管理者

  エックス線 英検2級 

40:登録販売者 2級ボイラー 第2種衛生管理者

  2陸特 2海特 危険物乙種 

  測量士(無試験認定) 3級FP技能士 潜水士 

39:普通自動車 販売士2級 危険物丙種 

38:原付

引用元:http://career-information.com/1182

 社労士試験の偏差値は、土地家屋調査士や中小企業診断士等と同じ60とされています。比較的上位にランクインされていることから、難易度は高いと言えるでしょう。

 但し、繰り返しますが資格には偏差値がありません。ですので、上記の偏差値ランキングは参考程度に捉えてください。

 

社労士になるために有利な大学

 最後に社労士になるために有利な大学を見ていきましょう。社労士試験の合格を目指すには法学部と経営学部、経済学部が有利と考えられています。
 そこで、2018年の偏差値を基に偏差値の高い学部をそれぞれランキングにしてみました。

■法学部(学科)

順位 大学(学部・学科名) 偏差値
1 東京大学(文化I類/法学部) 76
2 京都大学(法学部) 75
2 慶応義塾大学(法学部/法律学科) 75
4 一橋大学(法学部) 72
4 早稲田大学(法学部) 72
6 大阪大学(法学部) 71
7 上智大学(法学部) 70
8 名古屋大学(法学部) 68
8 神戸大学(法学部) 68
8 九州大学(法学部) 68

■経営学部(学科)

順位 大学(学部・学科名) 偏差値
1 一橋大学(商業学部/経営学科) 71
2 上智大学(経済学部/経営学科) 68
3 名古屋大学(経営学部/経営学科) 67
3 神戸大学(経営学部) 67
3 立教大学(経営学部) 67
6 東北大学(経済学部/経営学科) 65
6 横浜国立大学(経営学部) 65
8 千葉大学(法政経学部/法政経学科) 64
8 青山学院大学部(経営学部) 64
8 明治大学(経営学部) 64

■経済学部(学科)

順位 大学(学部・学科名) 偏差値
1 東京大学(経済学部) 75
2 早稲田大学(経済学部) 74
3 京都大学(経済学部) 73
4 一橋大学(経済学部) 72
5 大阪大学(経済学部) 70
5 慶応義塾大学(経済学部) 70
7 上智大学(経済学部) 68
8 名古屋大学(経済学部) 67
8 神戸大学(経済学部) 67
10 九州大学(経済学部) 66

 これから進学をしようと検討している方は、上記にランキングを1つの指標にしてみてください。

 

まとめ

 「合格率」や「偏差値」から見ると社労士試験の難易度は高いことがお分かりいただけましたでしょうか。
 本記事では、「合格に必要な勉強時間」や「社労士になるために有利な大学」も併せてご紹介させていただきました。

 社労士を目指す方は、ぜひ本記事を試験合格に向けた1つの参考にしてみてください。