経験者でないと転職が不可能と思われがちな会計事務所。実のところはどうなのでしょうか。本記事では「未経験から会計事務所に転職」をテーマにお伝えしたいと思います。

 

未経験でも会計事務所に転職出来る

 会計事務所は、資格業界だからつい「未経験では無理なのではないか」と考える方は多いようです。しかし、意外にも未経験から会計事務所での勤務をスタートする方は多いのです。
 とりわけ、成長している会計事務所では未経験者が積極的に採用されています。

 実際に某会計事務所では直近三年間に採用した人数10人のうち未経験者は7人なのです。この事務所では未経験者にも先輩社員からの手厚いサポートをしています。

 

会計事務所が未経験者の採用について考えていること

 会計事務所は未経験者の採用についてどのように考えているのでしょうか。

必要資格「日商簿記3級程度の知識」について

 未経験者の求人にしばしば見受けられるのが、「経験不問」「未経験者歓迎」という文言です。ですが、よく見てみると「日商簿記3級以上の知識」を条件にしているケースが少なくありません。

 それには、採用後少しでも早く研修期間を終えて得意先の担当者を受け持って欲しいという会計事務所側の本音が隠れています。ですので、「日商簿記3級以上の知識を持っていないと応募不可能」という意味ではありません。「なるべく日商簿記3級以上の知識を持っている応募者がいい」と捉えるとよいでしょう。

 某会計事務所では、入所する社員の50%は簿記の資格を保有していないそうです。簿記の資格を保有しているかどうか、については強く意識する必要はないようです。
 但し、日商簿記3級以上の知識を有している人が優遇される傾向にあるため、知識を有していない方は応募前に勉強をしておいた方がベターでしょう。

ポテンシャルが重視される

 未経験者は、ポテンシャルが重視される傾向にあります。
 会計事務所が未経験者に望むポテンシャルとはどのようなものなのでしょうか。それは下記の3つが考えられます。

■社風に合うかどうか
■自発的に知識を吸収出来るかどうか
■担当者として経営者と話が出来るかどうか。

 会計業界は、「いかに知識を持っているか」に偏りがちです。しかし、意外にも未経験者に期待するポテンシャルは、知識以外の部分だったりするのです。

 

未経験者で採用される履歴書の書き方

 簿記検定3級を取得済みであることを前提として、2級の勉強中である旨を履歴書に記載しておくことで採用の可能性は高くなります。

 

こんな知識や資格を持っていると採用されやすい

 では、どのような知識や資格を持っていれば未経験者は採用されやすくなるのでしょうか。次の5つが考えられます。

①コミュニケーション力

 会計事務所の仕事は事務作業だけではありません。クライアントの経営者からお金の相談をされます。家族や従業員等に話さる内容ではないだけに、クライアントの話に親身になって耳を傾けれなればなりません。
 ですので、コミュニケーション力が必要になります。会計に関する知識や経験を持っていなくても、学生時代に培ったものだったり異業種で学んだことだったりがコミュニケーション力に活かされていることはあるでしょう。それらの経験は十分なアピールポイントになります。

②税理士試験科目を2科目程度取得しておく

 税理士試験は全部11科目あり、そのうち5科目に合格をすれば資格を取得出来る科目合格制を採用しています。
 ただ、資格は取得していなくても、数科目に合格している、いわゆる税理士試験科目合格者も、資格保有者次いで知識を保有している証拠になります。

 税理士試験科目合格者を目指す場合、特に税務を遂行する上で必要不可欠な簿記(企業の活動を帳簿に記録し分かりやすく残しておく技術)について学べる「簿記論」と、株主や債権者等の利害関係者に、企業の財政状態や成長力を明らかにするための財務諸表について学べる「財務諸表論」の取得をオススメします。この2科目を取得すると採用者から即戦力になると見なされ、転職活動の際にアドバンテージになるのです。

 但し、税理士試験科目合格者は往々にして「簿記論」と「財務諸表論」を取得しています。そこで、差別化を図るために「法人税法」「所得税法」「相続税法」「消費税法」を取得しておくとさらに大きなアドバンテージが期待出来ます。

③会計分野の資格を取得する

 税務を遂行する上で欠かせない簿記の知識が身につく簿記検定の取得をすると、未経験者でも転職に有利になります。簿記検定は1級から3級まであり、2級の取得が大きなアドバンテージになるでしょう。簿記2級は、実務で頻繁に行う工業簿記や原価計算が試験範囲に含まれています。そのため、実務に繋がりやすい2級の取得がオススメです。

④アルバイトで経験を積んでおく

 正社員としての転職をする前に、会計事務所にアルバイトで経験を積んでおくと採用に有利に働きます。
 アルバイトで経験を積んでおくと、言わば「未験者と経験者の間」の評価になるのです。

⑤個人事務所への応募

 会計事務所の規模は、大小様々です。大規模の大手会計事務所は求人倍率が高く、即戦力が求められます。未経験者が採用される可能性は低いと言えるでしょう。
 対して、小規模の個人会計事務所であれば、求人倍率は低く、即戦力になるかどうかは問わない傾向にあります。
 未経験者の方は、採用されやすい個人事務所に応募するのも一案です。

 

会計事務所に勤務した経験で期待出来るキャリア形成

 会計事務所に勤めるとどのようなキャリア形成が期待出来るのでしょうか。
 事務所によっては、税理士、行政書士、社会保険労務士、宅建、ファイナンシャルプランナー等の資格取得を支援しています。具体的には、資格スクールの学費の半額負担や合格祝金制度もあります。

 

年齢によって採用は左右されてしまうのか

 未経験者を採用する場合、どの会計事務所においても年齢が若い方が採用に有利になります。なぜ若い方が採用されやすいのでしょうか。
 それには次の2つの理由が考えられます。

若いと成長が早い

 若いと成長が早い傾向があります。会計事務所は未経験者に早く1人前になってもらうことを望んでいます。そのため、若い人を採用したがる傾向にあるのです。

教育担当者をつけやすい

 未経験者には早く仕事を覚えてもらうために教育担当者をつけます。その際、教育担当者が年上の方が上手くいきます。ですが、未経験者が年上になると、教育担当者が指導しにくくなります。全てのケースがそれに該当するとは限りませんが、教育担当者に配慮して、若い未経験者を採用する傾向にあるのです。

 25歳以下だと若い方になります。それ以降になると採用されにくくなります、但し、年齢が高い方は平均年齢が高い会計事務所であれば採用される可能性はやや高まります。

 

高卒でも問題ない

 会計事務所への就職は、学歴は関係あるのでしょうか。強いて言えば、関係あります。
 現在、会計事務所の所長は大卒以上が多いです。そのため、所長と同じ大卒者の方がひいき目にされて採用される傾向にあるのです。
 とはいえ、高卒者であっても採用される可能性は十分あります。

 

40代未経験で会計事務所に転職するには

 40代になると実務経験が要求されるケースが多いです。そのため、40代で未経験の場合、会計事務所に転職をするのは厳しいと言えるでしょう。
 但し、社員数が20名を超えるような大規模な会計事務所であれば、ある程度人件費を支払う余裕があります。そのため、40代であってもじっくり時間をかけて教育をする余裕があります。

 40代で未経験の方は大規模の会計事務所に応募するとよいかもしれません。