社労士試験は合格率が例年5~10%で推移しているため難しい試験と言われています。試験科目は10科目あり、点数を取るのが難しい科目もあれば、比較的点数を稼げやすい科目もあります。
合格するためには、それぞれどんな科目なのかを理解した上で、効率のよい順番で勉強していく必要性があります。
本記事では、社労士試験の科目別難易度のランキングを提示した上で、効率のよい勉強の順番の提案をさせていただきます。
合格率が低い理由
社労士試験は冒頭で触れた通り、合格率が低いです。
合格率が低い理由は「試験範囲が広い」ことがいの一番に挙げられます。というのも社労士試験は、内容の異なる以下10科目も用意されているのです。
・労働基準法及び労働安全衛生法
・労働者災害補償保険法
・雇用保険法
・労働管理その他の労働に関する一般常識
・健康保険法
・厚生年金保険法
・国民年金法
・社会保険に関する一般常識
試験は、選択式と択一式に分かれており以下のような問題数・配点が設けられています。。また、それぞれの科目で合格ラインが設けられています。
試験科目 | 選択式 | 択一式 |
労働基準法 | 1問(5点) | 7問(7点) |
労働安全衛生法 | 3問(3点) | |
労働者災害補償保険法 | 1問(5点) | 7問(7点) |
雇用保険法 | 1問(5点) | 7問(7点) |
労働保健の保険料の徴収等に関する法律 | 出題無し | 6問(7点) |
労務管理その他の労働に関する一般常識 | 1問(5点) | 5問(5点) |
社会保険に関する一般常識 | 1問(5点) | 5問(5点) |
健康保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
厚生年金保険法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
国民年金法 | 1問(5点) | 10問(10点) |
合計 | 8問(40点) | 70問(70点) |
合格するためには、この10科目をバランスよく勉強する必要があるのです。
社労士試験の科目別難易度ランキング
では以上10科目を難易度が高いものから順を追って説明させていただきます。
【1位】労務管理その他の労働に関する一般常識
「労務管理その他の労働に関する一般常識」では、労働に関連した法律についての問題が出題されます。育児・介護休業法や男女雇用均等法、労働者派遣法等、労働に関する法律は約30本あります。他の科目はある法律1つについて問われるのに対して、同科目では様々な法律について問われるため、試験範囲が広いのです。
何をどこまで学習すればよいのかの分別に惑うのが最も難しいと考えられる科目の所以なのです。そして、試験範囲もさることさがら、問題が非常に細かい部分から出題されるため、ことさら正解するのが難しいです。
ですので、科目別合格ラインの最低基準を堅守することを目標にするのがベターでしょう。
■勉強する際のポイント
合格ラインを満たすための試験対策に挙げられるのが、過去問を見て頻繁に出題される問題に的を絞った勉強をするのが得策です。
同科目が社労士試験において最たる難関科目になるので、ここをクリア出来れば資格取得にグッと近づくでしょう。
【2位】労働安全衛生法
労働安全衛生法とは、労働者を労働中の災害から守り、健康の確保や快適な職場環境の保障を目的とした法律のことを言います。会社で健康診断が行われるのは労働安全衛生法で規定されているためです。
【1位】の「労務管理その他の労働に関する一般常識」と同様、試験範囲が広い上に細かい部分から出題されるため、合格ラインに至らない受験者は多いです。
■勉強する際のポイント
試験範囲が広いため全てを網羅して勉強することが得策ではありません。過去問から、よく出題される問題の傾向を読み解き、焦点を絞った勉強をするように心掛けましょう。高得点を狙うのではなく、合格ラインに達することを目標に勉強をしましょう。
【3位】国民年金法
年金制度には国民年金と厚生年金保険の2つがあります。「国民年金法」という科目では、読んで字の如く国民年金に関する問題が出題されます。国民年金は、自営業者の方や会社員、公務員の方が加入しています。
国民年金は年金制度の基礎になるため、後に紹介する「厚生年金保険法」を理解するためにもこの勉強は欠かせません。
「国民年金法」は試験範囲は広くないものの、出題される問いが細部にわたっているため難易度は高いです。足切りの犠牲者になる受験者も少なくありません。
■勉強する際のポイント
出題される内容は事例が多いです。そのため、知識量より「知識を駆使してどう解くか」が問われます。
多くの問題を解いて”解答力”を身に付けることを意識しましょう。
【4位】厚生年金保険法
「国民年金法」と同様、「厚生年金保険法」も年金制度について問われる科目になります。厚生年金保険は会社員や公務員の方が加入しています。厚生年金保険は国民年金の応用になるため、「厚生年金保険法」は仕組みが複雑です。但し、出題されるのはひねりのない問題が多いため、「国民年金法」の比べ難易度は低いでしょう。
■勉強する際のポイント
しっかりと勉強をし知識を定着出来れば高得点も狙えます。量をこなすより、ひとつひとつの項目をしっかり理解しながらインプットしていきましょう。
【5位】健康保険法
健康保険法とは、仕事以外の理由で怪我や病気になった際に国が医療費を援助すること等が定められた法律のことをいいます。みなさんが普段お使いの健康保険証は、この健康保険法という法律に基づいて発行されています。
近年は細かい組織名や数字が出題される傾向にあるため、難易度は上がってきています。
■勉強する際のポイント
後に紹介する「労働者災害補償保険法」を先に勉強しておくと「健康保険法」は攻略しやすいと言えるでしょう。
【6位】労働基準法
「労働基準法」とは、労働者が人間らしい生活を送りながら働けるような労働条件が定められた法律です。約10年前までは難易度が高い科目の1つに挙げられていましたが、近年は難易度が下がってきています。
■勉強する際のポイント
例年、判例や条文、内部文書等の通達から問題が出題される傾向にあります。法律を暗記するだけでなく、判例等を読み解ける理解力を養いましょう。
【7位】労働者災害補償保険法
労働者災害補償保険法(労災保険法)では、労働者の病気や怪我の補償について定められています。よって、補償内容について問題が多く出題されます。
出題内容は難しいですが、労働者にとって労災保険は身近なため、正解率は低くありません。
■勉強する際のポイント
選択式では非常に難易度の高い問題が出題される場合があるため、どんな問題が出題されても解けるよう、基礎知識をしっかり身に付けておく必要があります。
択一式では、基礎知識を問う問題と、難易度の高い問題の二分されています。基礎知識で合格を狙えるかどうかがカギになるでしょう。
各種給付の要件や内容をしっかり押さえた上で、それ以外の部分を幅広く理解することが大切です。
【8位】雇用保険法
雇用保険法とは、労働者が失業している場合に手当を支給したり、育児や介護をしながら仕事が継続出来るよう給付金を支給したり等の規定がある法律のことを指します。
基本知識についての問題が多い上に、範囲が絞られた中から出題されるため難易度は低いでしょう。特に択一式問題は満点を狙うことも可能です。
■勉強する際のポイント
選択式も択一式も条文通りの基礎知識を問う問題が中心であるため、難易度は高くありません。しかし、覚えなければならない用語や数値等が多く、苦手意識を持つ受験生が少なくありません。勉強スタート初期から地道に暗記し、得点源になるように学習を進めていくのがオススメです。
基本的な知識がしっかりしていれば自信を持って回答出来る問題が多いです。
また、選択式問題では数字を問われる問題が多いためえしっかり押さえましょう。
【9位】社会保険に関する一般常識
社会保険に関する一般常識は、同じ一般常識系の科目でもある「労務管理に関する一般常識」とは違い比較的点数が取りやすい科目です。
出題範囲が広くなく、かつ他の科目で勉強してきた内容も出題されるため得点を稼ぎやすい科目と言えるでしょう。
■勉強する際のポイント
これまでの社会保険科目以外に関する法律が出題対象になります。とはいえ、これまでの社会保険科目の中から重ねて出題されるケースも少なくありません。
「労務管理その他労働に関する一般常識」よりは出題範囲は広くありませんが、出題対象となる範囲が非常に広いため、広く浅く学習することをオススメします。択一式では「労務管理その他労働に関する一般常識」が得点し難い分こちらの科目で得点を稼ぐのが理想かもしれません。
【10位】労働保険の保険料の徴収等に関する法律
最も簡単な科目が「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」です。労働保険徴収法について問われます。労働保険徴収法とは、事業主や被保険者(労働者)から徴収する労働保険について、労働保険の徴収や労働保険の適用について定められた法律を指します。
問題範囲が狭いにも関わらず、6問も出題されるため、同科目は得点を稼ぐチャンスです。
■勉強する際のポイント
一度解き方を覚えれば比較的簡単に問題を解けます。ですので、過去問で解き方をしっかり覚えて満点に近い点数を取れるようにしておきましょう。
勉強方法は”全科目高速回転”がオススメ
社労士試験に合格するためには、全科目の全体構造と相関関係を理解することがコツです。そのコツこそが試験範囲の広さを克服出来る種になります。
1科目にじっくり時間をかけるのではなく、全科目を何度も反復することが大切です。これは”全科目高速回転”と呼ばれています。
1回転目では理解出来なかったものが、2回転目、3回転目と闇雲に反復学習することでやがて霧が晴れたように理解出来るようになるのが社労士試験勉強の特徴です。
ですので、不明点があったとしても立ち止まらず先に進む勉強方法である”全科目高速回転”がオススメです。
勉強する順番も大切
また、どの科目から勉強を始めるのかも大切です。
そこで大切になるのが次の2です。
・関連性のある科目を続けてやる
・重要性の低いもの、暗記の比重が重いものは後回しにする
そのため、以下の順番にやるのがよいでしょう。
【1番目】国民年金法
↓
【2番目】厚生年金保険法
「国民年金法」と「厚生年金保険法」は両方とも年金制度に関する法律のため共通している部分が多いため続けて勉強する
↓
【3番目】労働者災害補償保険法
1番目と2番目、3番目の労働者災害補償保険法」は共通している部分が多いが、違う点もあるため隣り合わせの順番にする
↓
【4番目】健康保険法
「労働者災害補償保険法」と「健康保険法」は共通している部分が多い
↓
【5番目】雇用保険法
「健康保険法」と「雇用保険法」は似ている部分があるが違う部分もあるため、続けて勉強することで比較整理が出来る
↓
【6番目】労働保険の保険料の徴収等に関する法律
「雇用保険法」と「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」は暗記の比重が重いため、5,6番目に続けて勉強をする
↓
【7番目】労働安全衛生法
難易度が高く、得点を望めないため重要性は低い
↓
【8番目】労働基準法
これまでの法律と関係してくるため、それぞれの法律を勉強してから取り掛かった方がよい
↓
【9番目】労働管理その他の労働に関する一般常識
出題範囲が広く、難易度が高いため点数を稼ぐずらい
↓
【10番目】社会保険に関する一般常識
難易度が低く点数を取りやすいため
科目別勉強時間
では、科目別の勉強時間の配分はどの程度が宜しいのでしょうか。様々な試験の勉強時間に関して提供しているサイト「合格超特急」によると、以下のような時間配分になります
科目 | 配分割合 | 事例A | 事例B |
労働基準法 | 9.74% | 33時間 | 43時間 |
労働安全衛生法 | 4.36% | 15時間 | 20時間 |
労働者災害補償保険法 | 10.26% | 35時間 | 45時間 |
雇用保険法 | 10.26% | 35時間 | 45時間 |
労働保険の保険料の徴収等に関する法律 | 7.69% | 26時間 | 34時間 |
健康保険法 | 14.1% | 48時間 | 62時間 |
厚生年金保険法 | 14.1% | 48時間 | 62時間 |
国民年金法 | 14.1% | 48時間 | 62時間 |
労働管理その他の労働に関する一般常識 | 7.69% | 26時間 | 34時間 |
社会保険に関する一般常識 | 7.69% | 26時間 | 34時間 |
計 | 100% | 340時間 | 344時間 |
引用元:https://www.sr59.net/100hensei/07keikakuhyou.html
このデータは例年8月下旬に実施される社労士試験に対して、5月の連休明けを勉強開始時期に設定しています。約3ヶ月の場合のデータになっているため、みなさんが勉強を開始する時期に合わせて、科目別の勉強時間の配分の参考にしてみてください。
まとめ
社労士試験は合格率が低いため、資格取得することが難しいと考えられています。しかし、それぞれの科目を理解し、勉強する順番を工夫することで合格も夢ではありません。
社労士試験に向けて勉強している方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
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