とある「公認会計士紹介サービス」を行っている会社では利用者から、しばしばこのような質問があるそうです。
「公認会計士と税理士の違いは何ですか?」
確かに公認会計士と税理士は、どちらも税務や会計等を中心とした業務を生業としているため、混同されやすいでしょう。
本記事では、そんな公認会計士と税理士の違いについてご説明させていただきます。
公認会計士業務と税理士業務の違い
公認会計士と税理士の業務は似ているように見えますが、実は異なります。それぞれが独占業務(特定の資格や免許を保有している方だけが行える業務)を持ち、請け負う案件が大きく違うのです。
公認会計士の独占業務
公認会計士の独占業務は監査です。
監査とは、企業が作成した財務諸表が適正であるかどうかを第三者の立場から評価する業務を指します。
・財務諸表とは
株主や債権者といった利害関係者に企業の財政状態や成長力を明らかにするための書類です。一般的には「決算書」と呼ばれています。
監査を受ける義務があるのは、資本金が5億円以上、もしくは負債の合計金額が200億円以上の株式会社が対象です。そのため、クライアントの多くは大企業等に限られます。
税理士の独占業務
税理士の独占業務は、税務に関する以下の3つです。
(1)税務代理
税務代理とは、納税者の代わりに税務署等への申告・申請を行うことをいいます。また、納税者の代理として税務調査に立ち会うことも税務代理に当たります。
(2)税務書類の作成
納税者に代わって税務署に提出する届出書を作成・提出することも、税理士の独占業務です。
(3)税務相談
税務相談は例えば、税金の計算や納税するための手続に関する相談等が挙げられます。
税理士の独占業務のクライアント先は、主に個人事業主や中小企業、ベンチャー企業が対象です。
公認会計士と税理士の資格取得
以上でお伝えしたように公認会計士と税理士では、独占業務や対象とするクライアント先が異なることをご理解いただけたでしょうか。
それに伴い資格の取得方法も異なりますので、併せてご紹介させていただきます。
公認会計士と税理士の資格を取得するためには、いくつかの条件や試験をくぐり抜けなければなりません。では具体的に、どのような条件や試験を乗り超えなければならないのでしょうか。
それぞれについてご説明させていただきます。
公認会計士資格の取得
公認会計士の資格を取得するためには、下記の3段階を踏む必要があります。
[1]公認会計士試験に合格
↓
[2]監査法人、または会計を専門的に行っている企業で2年以上の実務経験
↓
[3]修了考査(筆記試験)に合格
この3段階をクリアした後、日本公認会計士協会で登録手続を行うと公認会計士になることが出来ます。
なお、公認会計士試験の概要は次の通りです。
■公認会計士試験の受験資格
年齢・学歴問わず誰でも受験が可能です。
■公認会計士試験の受験科目
公認会計士試験は、短答式(マークシート方式)試験と、論文式試験の2ステップに分かれています。
各試験の受験科目は下記になります。
・短答式試験
必須:「財務会計論」「管理会計論」「監査論」「企業論」
・論文式試験
必須:「会計学(財務会計論・管理会計論)」「監査論」「企業論」「租税法」
選択:「経営学」「経済学」「民法」「経営学」から1科目
短答式試験は全科目の合格を、論文式試験も原則は一括合格をしなければならないことから、広範囲を一度に勉強しなければなりません。
→公認会計士資格の取得についてはこちらでも詳しく説明をしています。
税理士資格の取得
税理士になるためには、税理士試験に合格することと、2年以上の税務経験が必要です。
これら2つを満たしたのち、日本税理士連合会に登録することで、税理士として仕事に従事することが出来ます。
なお、税理士試験の概要は以下の通りです。
■税理士試験の主な受験資格
・大学・短大・高等専門学校の卒業者で、法律学または経済学を1科目以上履修した者
・大学3年次以上で、法律学または経済学を1科目以上含めた、トータル62単位以上を取得した者
・司法試験合格者
・日本商工会議所主催簿記検定試験1級合格者
・公認会計士試験短答式試験合格者(平成18年以降の合格者に限る)
■税理士試験の受験科目
以下の全11科目の中から5科目を選択し合格する必要があります。
・必須科目:「簿記論」「財務諸表論」
・選択必須科目:「所得税法」「法人税法」から1科目以上を選択
・選択科目:「相続税法」「消費税法」「事業税」「国税徴収法」「酒税法」「住民税」「固定資産税」から1科目以上を選択
公認会計士試験とは違い、税理士試験は一括合格する必要はありません。何度か受験する中で、通算5科目以上を合格すればOKとされています。
→税理士資格の取得についてはこちらでも詳しく説明をしています。
公認会計士は税理士にもなれる
公認会計士として勤務している方の中には、名刺に「公認会計士・税理士」と2つの肩書を記載したり、「〇〇公認会計士・税理士事務所」という看板を掲げていたりする方もいます。
実は、公認会計士の資格取得者は、税理士連合会に登録さえすれば税理士として働くことも可能なのです。これは試験の受験科目から、公認会計士の資格取得者が、税理士の独占業務に従事するために必要な知識を十分もっていると見なされているためです。
税理士は公認会計士にはなれない
対して、税理士は公認会計士の独占業務を行うことが出来ません。
というのも、税理士資格はあくまでも税務に関する知識をもっていることを証明するものであり、公認会計士の代表的な仕事である監査についての知識をもっていることを証明するものではないためです。
このことから、税理士を目指す人の中には、税理士試験を受験せず、公認会計士試験の合格に向けて勉強に励む方も少なくありません。
まとめ
公認会計士と税理士が混同されやすいのは、どちらも税務や会計等を中心とした業務に従事しているだけでなく、公認会計士が税理士の業務を行えることも理由に挙げられるでしょう。
ですが、公認会計士と税理士は、「独占業務」と「資格取得方法」に明確な違いがあります。今回、あなたの頭の中で混同している公認会計士と税理士の違いが明白になっていただけたら幸いです。