経理と一口にいっても、その仕事内容は企業によって異なります。経理への転職を検討している方は、この点について把握しておいた方がよいでしょう。
そこで今回は、経理の仕事内容を、企業規模や業種によって異なることにも触れながらお伝えさせていただきます。
経理の仕事内容
経理の主な仕事内容は、日々の活動取引を記録した「伝票」や「帳簿」等の書類を集計することです。
会社で行われた様々な取引は、各部署の担当者によって売上伝票等の「伝票」に記録されます。経理担当者は、各部署の「伝票」を集めて「帳簿」にまとめます。
帳簿への記録は、仕訳といわれる簿記(帳簿に分かりやすく記録する技術)のルールに沿って行います。
その他にも経理には幅広い業務があります。その一部をご紹介します。
◆入出金の管理
◆収支バランスの管理
◆事業部と収支に関する交渉
◆決算書の作成
◆有価証券報告書(企業内容が開示された外部向けの資料)等の作成
◆税理士・公認会計士との折衝(税理士・公認会計士に作成した決算書等をチェックしてもらうこと)
◆原価計算(商品をつくるために、いくらお金がかかったのかを計算すること)
◆経理ルールの作成・改善
◆連結決算(子会社や関連会社の会計を加算して決算すること)
これらの業務をそれぞれ1日、1ヶ月、1年のサイクルで行っていきます。
1日、1ヶ月、1年サイクルで行われる経理の仕事
では、どのようなサイクルで経理業務を行っているのかを「1日」「1ヶ月」「1年」ごとにみていきましょう。
1日単位
日々の活動取引を記録していきます。備品購入費や出張費等の経費精算、小口現金の管理、出納帳(通帳)の記入等を行います。
1ヶ月単位
企業の1ヶ月間の動きをまとめ、日々の仕訳に入力ミスがないかの確認をします。また、前月と比べて売上はどうか、無駄な経費を使っていないか等のチェックも行います。
給与の計算や社会保険料の計算をするのも毎月の仕事です。
1年単位
1年間の活動を取りまとめた決算書の作成をします。(3ヶ月や半年ごとに決算書の作成をする企業もあります)
決算をすることで、会社の利益や財務状況等を把握することが出来るのです。他にも税務申告、株主総会のための報告書作成等、年単位の業務は多くあります。
企業の規模によって異なる経理業務
主な仕事内容や仕事のサイクルはどの企業も大きな違いはありません。
さて、ここからは会社の規模・業種による違いをご紹介します。
会社の規模による違い
大企業と中小企業では任せられる仕事の幅に違いがあります。
①大企業
上場企業等のような大企業では、例えば「経理部」のような経理専門の部署が配置され、多くの人が業務に従事します。
その部署内で行われる仕事量は膨大になるため、一人ひとりが決められた範囲の経理業務を行う、といったように任される仕事の幅が特定されているが特徴です。
②中小企業
対して、中小企業では経理専門の部署がない場合が多いです。その代わり、総務部の中の数人が担当したり、時には総務・人事・経理を1人で兼任したり等のケースもあります。
とりわけ、従業員が30人以下の会社では、日々の経理業務に加え経営者からアドバイスを要望されることも少なくありません。
つまり、中小企業の経理担当者には、幅広い知識を持っていたり柔軟な対応が出来たり等のオールラウンドタイプが求められます。
③外資系企業
海外の親会社に報告するための決算と日本国内での税務申告用の決算の2つの目的に合わせた仕事が、外資系企業の経理には求められます。このことから、外国語力が必要とされます。
業種による違い
経理は、業種の違いによっても違いが見受けられます。以下に列挙した業種を個別にみていきましょう。
⑴小売業
小売業では、売掛金と買掛金が頻繁に行われます。そのため、請求書発行等の支払い業務が煩雑になることが珍しくありません。
・売掛金と買掛金
売掛金は商品やサービスを提供したけれども回収出来ていない金額のことをいいます。つまり、“ツケ払い”の状態を指します。
反対に、買掛金は支払っていない金額のことをいいます。
⑵製造業・メーカー
製造業やメーカーは製造にかかるコスト管理をするために、原価計算等の業務が多く発生します。原価計算と予算との差を分析し原価管理を行わなければなりません。
⑶不動産業
扱う案件が大きい不動産業は、プロジェクトが完了するまで長期に渡り時間を要することが多くあります。よって、会計年度をまたいで原価計算処理が行われるという特性があります。
⑷金融業
「お金が商品」とも言える金融業は、他業種との大きな違いとして、管理項目等を非常に厳しくチェックされることが挙げられます。例えば、銀行ではお金がたった1円でも合わなければ、その1円を探し当てるまで帰宅出来ない、という話もあるほどです。
⑸商社
商社の経理は、帳簿への記録業務が他業種より比較的多く行われる傾向にあります。商社では第一線の営業マンとして数字に慣れた人が数年後に、経理に配属されるケースが少なくありません。
⑹証券会社
証券会社では経理業務の他に財務(※本記事後半に財務についての説明があります)も求められる傾向にあります。そのため、幅広い知識が求められでしょう。
⑺運送会社
運送会社の場合は、営業所や支店であればデータ入力及び伝票処理がメインです。小さい営業所等では、受付や運行管理(運転手の運行状況の把握)も兼任することがあります。
⑻病院
病院の規模により仕事内容は異なります。経理課がある病院では経理業務に専念出来ます。一方、専門部署がないような小さな診療所等は、総合事務として、総務や経理、窓口業務、医療事務等を兼任で行います。
⑼社会福祉法人
病院と同様、社会福祉法人でも総合事務として様々な業務をこなさなければならないケースもあれば、経理専任の場合もあります。
⑽税理士事務所
税理士事務所では、「税理士補佐」というかたちで経理事務員を募集している傾向があります。書類の作成やチェック、会計ソフトを使った資料作り等、税理士の補佐業務を行うのが主な仕事です。
やりがい
ここで、経理のやりがいをご紹介します。
経理は一見地味な職種に見られがちです。しかし、帳簿にまとめた情報は、経営を健全な方向に進めていく判断材料になるため、経理はとても重要な役割を担っているのです。
表舞台に立つことは少ないですが、会社を支えるべき大事な存在としてやりがいを実感するでしょう。
また、経理は「数字のミスがなくて当然」といったような期待を会社から寄せられます。そんな中で、期待に応えミスなく業務を遂行出来た時には、大きな達成感を味わえます。
経理に有利な資格・スキル・知識
では、どうしたら経理職に就けるのでしょうか。
実は経理には必要な資格はありません。実務経験者が優遇される傾向にありますが、未経験者からの応募を受け付けている求人も多いのです。
とはいえ、以下に挙げる資格やスキル、知識を持っていると転職に有利でしょう。
簿記検定2級
経理に活かせる資格を持っていると有利です。特に「簿記検定2級以上の資格保有」を必須条件にしている企業も少なくありません。
応募したい企業が、必須条件に資格を指定しているようであれば、取得を視野に入れた転職活動に臨みましょう。
パソコンスキル
経理はパソコンでの作業が中心となるためWordやExcelは使用出来るのに越したことはありません。パソコンスキルに自信のない方は磨いておくことをおすすめします。
英語力
海外進出をする会社も増えていることから、英語力を求めている企業も少なくありません。企業によって基準に差はありますが、TOEIC700点以上の英語力が理想でしょう。
税の知識
経理業務では税に触れることがあります。税については幅広い知識が必要不可欠です。そのため、税に関する知識を持っていると転職活動の際のアピールポイントになり得るでしょう。
未経験の方でも経理職に就ける
未経験だったり資格等を持っていなかったりする方は、前職から経理に活かせる経験を洗い出ししてみましょう。例えば、
・事務処理能力が正確で早い
・経営管理を行っていた
・接客業をやっていたためコミュニケーション能力には自信がある
等が挙げられるでしょう。この洗い出す作業を「スキルの棚卸し」といいます。
→「スキルの棚卸し」についてはこちらで詳しく説明をしているので併せてご覧ください。
そして「スキルの棚卸し」で洗い出したスキルを、ぜひ履歴書や職務経歴書に記入してみてください。きっと、自身のアピールにつながる手助けになってくれるしょう。
経理に向いている性格
また、経理に向いている性格も併せてご紹介します。
集中力と忍耐力がある
経理職は基本的に1年の流れが決まっているため、ルーティーンワークが続きます。集中力がないとミスにつながる可能性があります。このミスは、数値を扱う性質上、大きなトラブルに発展しかねません。
そのため、経理には長時間デスクワークをすることが出来る忍耐力や集中力を持っている性格が向いていると言えるでしょう。
コミュニケーション能力がある
経理は、デスクワークが中心ではあるものの、コミュニケ―ション能力が欠かせません。これは、情報をまとめる際、様々な部署とやりとりをする機会が発生するためです。
財務や会計との違い
経理は財務と会計と混同される傾向があります。しかし、経理と財務、会計は明確に違いがあります。
財務とは
経理がこれまでの動いたお金について管理するのに対し、財務はこれから動くお金の管理をします。具体的には、資金計画の立案や資金調達等を財務が手がけます。
会計とは
会計とは、お金の出入りを帳簿等に記録する業務のことを指します。つまり、経理業務の一部として会計があります。
→さらに財務や会計との違いについて知りたい方はこちらで詳しく説明をしています。
まとめ
経理の仕事内容が企業規模や業種によって違いがあることがお分かりいただけたでしょうか。誰しも転職は成功させたいものです。
経理への転職を検討している方は「入社してみたらイメージと違った」というようなことがないよう、自身が思い描いたワークライフを実現させましょう。
本記事がその助力になれたら幸いです。