税理士事務所等の求人を見ると、募集条件に「科目合格者」「1科目以上合格」と記載されているケースが少なくありません。これは、税理士試験科目合格者のことを指します。
税理士試験科目合格者は、就職・転職市場でどのように見られているのでしょうか。
本記事では、税理士試験科目合格者の就職・転職市場の価値について解説していきたいと思います。
税理士試験科目合格者とは
税理士試験科目合格者(以下「科目合格者」という)とは、税理士試験の全科目に合格していないものの、1科目以上に合格している者のことを指します。
一般的な資格試験は、一回の試験で全科目の合計点が、基準を満たしていないと合格出来ません。しかし、税理士試験は、科目ごとに合格基準を設ける科目合格制が採用されています。一度合格した科目は生涯その履歴が残ります。
そのため、1回の受験で5科目に合格する必要はありません。複数回の受験で5科目以上をクリアすれば税理士試験合格になります。
科目合格制により、2~10年かけて税理士試験の合格を目指すのが一般的になっています。
科目合格者の就職・転職の市場価値
科目合格者は一見すると税理士試験に合格していない半端者のように見えます。しかし、就職・転職市場では価値が高いと見なされています。
市場価値は高い
科目合格者は、会計事務や税務に必要な知識が身についていると評価されています。
合格している科目によって評価は分かれるものの、合格している科目数は1~2科目で必要な知識が身についていると見なされるケースが多いです。
会計業界では、会計事務や税務に関する知識を持つ即戦力が求められます。しかし、経験者でない限り、そのような知識を持つ者は稀です。会計業界は、慢性的な人手不足に陥っています。それだけに、1科目でも合格している科目合格者の就職・転職市場の価値は高いのです。
現在、科目合格者は売り手市場なのです。
科目合格者の年収
売り手市場は年収にも反映されています。
1科目合格者の年収は、直近の何年かで『300万円程度から370万円程度』(『https://zeirishi.mynavi-agent.jp/helpful_mt/2021/02/608.html#Cont1』)に上がっています。
2~4科目の合格者の年収は、『370~450万円程度』(『https://zeirishi.mynavi-agent.jp/helpful_mt/2021/02/608.html#ContInner1-3』)で、年々下限が上がっています。これは、給与水準を上げないと、人材の確保が困難になっているという売り手市場の表れと言えるでしょう。
科目合格者を高く評価する職場
では、科目合格者はどのような職場から評価が高いのでしょうか。具体的に、以下からの評価が高いです。
会計事務所・税理士法人
会計事務所や税理士法人では、20、30代の科目合格者を税理士補助として積極的に採用する傾向があります。
若年層を積極採用する背景には、即戦力よりポテンシャルを評価する会計事務所・税理士法人の思惑があるのです。
そのため、科目合格者のうちに会計事務所や税理士法人に就職・転職すると、税理士試験の合格後に、税理士として働けるチャンスがあります。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームでは、M&A等、高度な税務知識を持つ人材が必要とされています。未経験者より経験者の方が優遇される傾向があります。
コンサル経験のある科目合格者は、コンサルティングファームからの評価は高いです。
一般企業の経理部
科目合格者は、会計業界だけでなく一般企業の経理部からも評価が高いです。
一般企業の経理部への就職・転職は、日商簿記の資格を持っていると有利です。科目合格者は、日商簿記の資格保有者と同等の知識を有すると見なされています。
そのため、一般企業の経理部からの評価が高いのです。
但し、社内体制によって求人のニーズが異なります。ですので、応募する際は、会計と税務、どちらがメインの仕事内容なのかを確認する必要があります。
どの科目に合格していると就職・転職に有利?
ではどの科目に合格をしていると就職・転職に有利になるのでしょうか。
必修科目で会計科目の簿記論と財務指標論に合格していると、会計事務所や一般企業の経理部で即戦力と見なされ就職・転職に有利になります。
また、所得税法、法人税、消費税、相続税法は合格難易度が高いが、実務で活かせるため、就職・転職に有利に働きやすいです。
特に、確定申告の代行業務を多く引き受けている会計事務所では、所得税法、法人税法、消費税法、不動産や株式等の資産管理や成年後見を行う会計事務所では、相続税法に合格していると就職・転職に有利です。
【関連記事】税理士試験の勉強する科目の順番:重視するもの別に紹介
未経験から税理士事務所に転職した成功事例
ここで未経験から税理士事務所への転職に成功した事例を紹介します。
■一般事業会社経理→税理士事務所への転職
大学卒業後に一般事業会社に就職し、経理部門に配属されたTさん。業務に役立つからと簿記の勉強をしていく中で、さらに一歩踏み込んで税理士試験を目指すことを決断しました。そして、簿記論と財務諸表論の2科目合格時点で30歳を超えていたこともあり、すぐに税理士事務所への転職を決断しました。
Tさんは、一般事業会社で経理部門にいたものの、決済業務にはほとんど関わっていませんでした。さらに、年齢のこともあり、転職活動への不安から転職エージェントのサービスに登録しました。キャリアアドバイザーからは、なるべく多くの求人紹介を受けながら、数多く応募することをすすめられました。さらに、書類選考を通過した場合は、応募先企業がどんな点を評価し、どんな点を懸念しているかという情報をキャリアアドバイザーと共有。そして、面接時にその点を払拭できる話ができるようにというアドバイスを受けました。一方、第1希望の事務所へは、キャリアアドバイザーが面接前の段階からTさんの意欲と志望度を伝えており、採用を前向きに検討してもらい、見事に内定を勝ち取りました。
引用元:https://zeirishi.mynavi-agent.jp/helpful_mt/2018/11/269.html#Cont3
Tさんが転職に成功したポイントは、キャリアアドバイザーと面接対策を徹底したことや、転職エージェントから応募先の税理士法人への積極的なアプローチが挙げられるでしょう。
科目合格者の求人
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