みなさんは司法書士の年収についてどのようなイメージを抱いているでしょうか?

「資格を取得しないと就けない仕事だから年収は高い」と思う方も少なくないのではないでしょうか。

 たしかに司法書士になるためには、合格率が3.9%(平成27年、法務省発表)と極めて低い司法書士試験をくぐらなければならない程、狭き門です。

 とはいえ、実際のところはどうなのでしょうか。今回は司法書士の年収の実態に迫っていきます。

 

司法書士としての仕事は減少傾向

 司法書士は、個人や企業等に依頼される、法律に関する書類作成や法的手続を代行する仕事をしています。また、起業時や土地購入の際の登記の手続き等も行うのです。

 一方、近年ではインターネットの普及により、法律の条文や判例等が容易に閲覧出来るようになっています。そのため、専門家でない方でも法律に関する知識を身に付けることが出来るようになっているのです。
 この影響により、司法書士の仕事は減少している傾向にあります。では、仕事が減少している中、司法書士はどのように収入をあげているのでしょうか。それについては後述していますので、「兼業する司法書士」をご覧ください。

 

司法書士の平均年収

 司法書士の平均年収は、あらゆる職業の年収を算出している「平均年収.JP」によると『<span class="fw-bold">630万円</span>』(『https://heikinnenshu.jp/shi/shihou.html#chapter1』です。

 2017年の一般企業で働くビジネスマンの平均年収が『432万円』(『https://career-picks.com/average-salary/sihousyosi-nennsyuu/#630』)なので、司法書士の年収は比較的高いと言えるでしょう。

 とはいえ、司法書士試験の難易度の観点から見ると、この年収は低いかもしれません。

 

働き方によって年収は大きく異なる

 但し、司法書士の年収は働き方によって大きく異なります。司法書士の働き方は、主に司法書士事務所に勤める「勤務司法書士」と、自身で独立して事務所を開業する「開業司法書士」の2通りに分かれます。

①勤務司法書士の年収

 司法書士事務所に勤める勤務司法書士の年収は240~360万程度です。狭き門の司法書士試験をくぐったにも関わらずこの年収というのは、決して高いとは言えないかもしれません。というのも、司法書士事務所等で働く勤務司法書士は、いずれは独立するための修業期間として捉えられているケースが多いためです。

 但し、大手企業の法務部や大手司法書士事務所等に勤める司法書士の平均年収は730万円になります。
 また、自ら顧客を獲得することが出来たり、事務所の存続に欠かせない人材と認められたりする場合は、勤務司法書士であっても年収1,000万円を超える可能性もあるのです。

 そのため、勤務司法書士の場合は、就職先によって大きく変わると言えるでしょう。

②開業司法書士の年収

 独立開業をした司法書士の年収は、500万円未満の割合が多く占めます。そのため、独立したからとはいえ、決して勤務司法書士より多く稼げるようになるとは限りません。

 一方で、1,000万円以上を稼いでいる司法書士も1割程度います。中には年収2,000万円を超える司法書士もいます。一握りではあるものの、司法書士として高収入を稼げる方もいるのです。このような司法書士は、多くの仕事をこなしています。というのも、どれだけ仕事をこなすかで収入が変わってくるためです。独立開業の司法書士にとっては、いかに安定的に顧客を獲得し、関係を維持するかが重要になります。

 上記①②から分かる通り、勤務司法書士も開業司法書士も前出の平均年収432万円を下回る司法書士が多いです。そのため、平均年収の中央値は630万円を大きく下回ると考えられます。

 

年代別の年収推移

続いて、司法書士の平均年収を年代別に見ていきましょう。「平均年収.jp」によると以下のような結果が出ています。

 司法書士の年収は年齢が上がるにつれ増えていきます。最高平均年収は50~54歳の756万円です。ただ、これはあくまでも平均であり、司法書士なら誰もがこの年収というわけではありません。

 また、勤務司法書士なのか、あるいは開業司法書士なのかによっても年収は大きく異なります。

 

司法書士の年収に対する本音

 以上のような年収の事情について、司法書士はどのような本音を持っているのでしょうか。それぞれ異なった本音があるようです。

勤務司法書士の本音

 勤務司法書士は、一般企業で働くビジネスマンのように月給制ではありません。「1つの案件につきいくら」という形で給与が支払われるため、固定給ではないのです。
 勤務司法書士の本音で多く挙げられるのが案件の単価が安いということです。給与を上げるためには多くの案件数を遂行しなければなりません。
 すると、労働の長時間化が避けられません。

 勤務司法書士界隈では労働時間に関する不満が嘆かれているようです。

開業司法書士の本音

 開業司法書士の年収は600万でもよい方と考えられています。
 というのも、開業をすると事務所の賃料、光熱費、人件費等の経費が掛かります。売上から経費を差し引くと年収600万程になってしまうようです。

 独立しても多くは稼げない、というのが開業司法書士の本音のようです。

 

司法書士と兼業

 年収を上げるために、兼業をする司法書士もいます。別名“ダブルライセンス”と呼ばれています。
 前出でもある通り、司法書士は以前よりは稼げなくなっています。そこで、他資格とのダブルライセンスにより、収入を上げる司法書士も増えているのです。

 主に、以下の資格とのダブルライセンスがあります。

➀土地家屋調査士とのダブルライセンス

 司法書士が土地家屋調査士と兼業する場合は、「登記業務の幅を広げられる」というメリットがあるのです。
 司法書士が行える登記業務は“権利部の登記”に限られます。“権利部の登記”とは、「不動産の所有者は誰なのか」「銀行の抵当権はついているのか」等の登記を指します。

・抵当権とは

 金融機関が住宅ローンを貸すとき、万が一お金が回収出来ない場合に備えて対象の不動産を確保しておくことをいいます。

 一方で、土地家屋調査士が行える登記業務は“表題部登記”に限られます。“表題部登記”とは、「土地の広さは何平方メートルか「木造と鉄骨どちらなのか」等、不動産の現状の登記を指します。

 よって、司法書士と土地家屋調査士をあわせ持つことで“権利部の登記”と“表題部登記”の両業務をこなすことが出来るのです。それにより幅が広がり仕事量も増え年収アップにつながります。

②行政書士とのダブルライセンス

 行政書士は、個人や企業から依頼された官公署(各省庁・都道府県庁・市区役所・町村役場・警察署等)に提出する書類の作成・申請を代行する仕事をメインとしています。

 官公署に提出する書類には様々な種類があります。その中でも、農地の売買の許可申請書類では、司法書士の業務である不動産登記と関係しています。また、会社関係の書類作成では、司法書士の業務と関連のある商業登記と関係しているのです。

③税理士とのダブルライセンス

 税理士は、法人や個人事業主から依頼を受け、税務申告や会計帳簿の記帳等の代行をします。
 相続税と相続登記、税務顧問契約と会社設立等、税理士業務は司法書士業務との関連性が強いため、双方の資格を取得し、双方の視点から業務を行えば、大きく業務範囲が広がります。

 

司法書士と税理士と行政書士と弁護士の平均年収を比較

 ここで、他の士業と比較してみましょう。平均年収630万円の司法書士に対し、税理士と弁護士、行政書士はどの程度の年収なのでしょうか。

税理士

 税理士は、個人や企業の税金に関するサポート事務が主な仕事です。「平均年収.JP」によると税理士の平均年収は『717万円』(『http://heikinnenshu.jp/shi/zeirishi.html』)です。

 このデータによると、司法書士より税理士の方が平均年収は高いと言えるでしょう。

弁護士

 弁護士は法律の専門家です。様々なトラブルに対して予防方法やアドバイス、法的手続きを行い問題解決に向けたサポート等を行います。
 「平均年収.JP」によると、弁護士の平均年収は『1,106万円』(『http://heikinnenshu.jp/shi/bengoshi.html』)です。

 司法書士は、弁護士より年収が低いということが、このデータから言えるでしょう。

行政書士

 行政書士の主な仕事は、個人や企業から依頼された官公署(各省庁・都道府県・市役所・町村役場・警察官等)に提出する書類の作成・申請です。
 「平均年収.JP」によると、行政書士の平均年収は『600万円を少し上回る程度』(『https://heikinnenshu.jp/shi/gyosei.html』)です。
 このデータから言えることは、司法書士と行政書士の年収は同じくらいということです。

 

女性の方が司法書士に向いている?

 男性のイメージが強い司法書士ですが、約5人に1人は女性です。実は、女性の方が司法書士に向いていると考えられています。
 その理由は次の2つが挙げられます。

細やかな心配り

 女性特有の、相手の立場に配慮して接する等の細やかな心配りが、司法書士として営業をしていく上でプラスに働きます。
 数をこなすことで収入をアップさせる司法書士にとって、案件を取ってくる営業力は必須です。

 女性は、依頼者の要望を聞き出す力や相手の悩みに対する共感力に長けている傾向があります。ですので、女性は新規の案件を獲得しやすい傾向にあるのです。

相談しやすいから

 相談者の中には、女性の司法書士の方が相談しやすいという方が一定数います。その要望に応えるために、「女性専用窓口」を設置している事務所があるほどです。
 借金や離婚等、法律に関する問題は決して相談しやすいものではありません。そのようなデリケートな相談者の心情を、女性特有の雰囲気で温かく包み込んでくれるのです。

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まとめ

 司法書士の年収は、勤務司法書士と独立開業の司法書士によって異なります。それだけでなく、働き方によって年収が変わるのが司法書士という職業なのです。
 司法書士として転職を考えている方は本記事を参考にしてみてください。

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