税理士になるために避けて通れない税理士試験。
 税理士試験は、他の国家試験とは異なり科目合格制度を採用しています。

 本記事では、科目合格制度をメインに、税理士試験の概要についてお伝えします。

 

税理士試験の科目数

 税理士試験は、全11科目あります。その中から5科目に合格すると、税理士試験に合格になります。

 

税理士試験の科目合格率

 2020年度の税理士試験の科目合格率は下記の通りです。

    科目合格者数 受験者数 合格率
必須科目 簿記論 2,429 10,757 22.6%
財務諸表論 1,630 8,568 19.0%
選択必須科目 所得税法 173 1,437 12.0%
法人税法 588 3,658 16.1%
選択科目 相続税法 264 2,499 10.6%
消費税法 782 6,261 12.5%
酒税法 62 446 13.9%
国税徴収法 198 1,629 12.2%
住民税 69 381 18.1%
事業税 44 335 13.1%
固定資産税 118 874 13.5%

 

科目合格制度

 冒頭で触れた通り、税理士試験は科目合格制度を採用しています。ここでは科目合格制度についてお伝えします。

①通算5科目で合格

 税理士試験は、1度の受験で5科目に合格する必要はありません。複数回の受験で通算5 科目に合格すれば、税理士試験の合格になります。
 1度合格した科目は生涯に渡って有効です。期限がないので、数年かけて5科目合格を目指す社会人の受験者は多いです。

②全11科目は3種類に分けられる

 税理士試験の全11科目は、必須科目2科目、選択必須科目2科目、選択科目7科目から構成されています。必須科目から2科目、選択必須科目から1科目、選択科目から2科目に合格することで、税理士試験の合格になります。

 必須科目とは、必ず合格しなければならない科目のことを指します。簿記論と財務諸表論が必須科目に該当します。

 選択必須科目とは、2科目のうち1科目に必ず合格しなければならない科目のことをいいます。法人税法と所得税法が選択必須科目に該当します。

 選択科目とは、7科目から2科目まで選択出来る科目のことを指します。相続税法と消費税法、酒税法、国税徴収法、住民税法、事業税法、固定資産税が選択必須科目に当たります。
 選択科目には条件があります。それは、消費税と酒税法は、いずれか1科目しか選択出来ません。同様に、住民税と事業税も、いずれか1科目しか選択出来ません。

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受験資格

 税理士試験には受験資格があります。受験資格は、学識、資格、職歴、認定の4種類に分けられています。いずれか1つに該当すれば税理士試験の受験が可能です。
 それぞれの主な受験資格は以下の通りです。

■学識 
・大学や短大、高等専門学校、専修学校で、法律学あるいは経済学に関する科目を1科目以上履修した者
・司法試験に合格した者
・公認会計士試験短答式試験合格者

■資格
・日商簿記検定1級合格者
・全経簿記能力検定上級合格者
・会計士補

■職歴
・法人または個人の会計事務に2年以上従事した者
・税理士、弁護士、公認会計士などの補助業務に2年以上従事した者
・税務官公署での事務、またはその他の官公署での国税あるいは地方税に関する事務に従事
・銀行や信託会社、保険会社等で、資金の貸付、運用事務に2年以上従事した者

■認定
・国税審議会から受験資格に関して個別認定を受けた者

 なお、以上を証明する成績証明書や合格証明書等の各種証明書が必要になります。

 

税理士試験の概要

 ここからは、税理士試験の概要についてお伝えします。

【概要①】試験日の告示

 税理士試験の実施日程は、例年4月に官報に掲載されます。
 官報とは、政府が国民に知らせる目的で毎日刊行する文書のことをいいます。

【概要②】受験地

 税理士試験は、全国各地で行われます。平成30年度の税理士試験は、北海道、宮城県、埼玉県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、京都府、広島県、香川県、福岡県、熊本県、沖縄県の13ヶ所で実施されました。

【概要③】受験申込用紙の交付

 受験申込用紙は、例年4月下旬から5月下旬に各国税局あるいは沖縄国税事務所で交付されます。郵送で受験申込用紙の請求を行うことも可能です。

【概要④】受験申込期間

 受験申込期間は、例年5月中旬から下旬です。希望する受験地を管轄する各国税局あるいは沖縄国税事務所で受験の申し込みが出来ます。

【概要⑤】試験日

 税理士試験は、例年8月上旬の平日に3日間実施されます。試験の実施要項は、官報で告示されます。

【概要⑥】受験料

 受験料は、受験する科目数に応じて変動します。

1科目…4,000円
2科目…5,500円
3科目…7,000円
4科目…8,500円
5科目…10,000円

受験する科目数が多ければ多いほど、費用を抑えられます。

【概要⑥】合格発表

 合格発表は、例年12月中旬に実施されます。

 5科目合格を達成した方は、合格発表日の官報に受験地・受験番号・氏名が掲載されます。加えて、合格証書が郵送されます。

 5科目未満に合格、あるいは免除決定された方には、税理士試験等結果通知書が郵送されます。

 合格科目がない方には、税理士試験結果通知書が郵送されます。

 

税理士会への登録

 税理士試験に合格後、税理士会(日本税理士会連合会)に登録すると、晴れて税理士になることが出来ます。
 但し、税理士会に登録するためには、通算2年以上の実務経験が必要になります。その実務経験は、試験の前後を問いません。ですので、税理士試験の合格後、すぐに税理士になりたい方は、税理士試験合格前から実務経験を積むとよいでしょう。

 

科目合格でも就職・転職市場では価値がある

 科目合格者は一見すると税理士試験に合格していない半端者のように見えます。しかし、就職・転職市場では価値が高いとされています。
 会計業界では、会計事務や税務に関する知識を持つ即戦力が求められます。しかし、経験者でない限り、そのような知識を持つ者は稀です。会計業界は、慢性的な人手不足に陥っています。それだけに、1科目でも合格している科目合格者の就職・転職市場の価値は高いのです。

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